春風のプリンシピオ3

長い夢を見た気がする。

要舞はゆっくりと目を覚ました。

なんの夢を見ていたのかは思い出せない。

思い出そうとすると、何故か霧がかったようにモヤモヤ、と脳内を薄い雲がまとわりついているような気がした。

ぼんやりとした視界。

視界に広がるは白い天井。

首を捻って横を向けば日が落ちた窓の外を眺める。

「夜だなぁ……」

そう、小さな声で呟いた。

「要舞くん……?」

反対側から言葉が飛び出した。聞き覚えのある声の方へと首を捻って向く。

眼鏡をかけた高身長の少年が心配そうに、そして安堵をしたようにこちらを見つめていた。

「葵……」

弱々しく彼へと手を伸ばした。

その手を葵が掴む。

「おかえり、要舞くん」

今にも泣きそうな顔で葵が微笑んだ。

カチ、カチ、と時計の針の音だけが空間にこだまする。

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