ア・フォース・コア・ディヴゥラート 4

ずっと謝りたかった人がいる。

ごめんなさいと真正面から頭を下げて謝りたくて。

でも、それは自分の行いが悪かったせいで謝れなかった。

そんな大切な人がいる。

でも、もしかしたら、もしかしたら、真正面から謝れるかもしれない。

そう、思うと之彦はとても緊張していた。

葵に連れられて三年生の教室へと向かう。

三年生の教室は自分達の一年の教室とは変わらないはずなのに、どこか大人っぽく感じた。

自分が三年生の教室にいるというアンバランスさに少し恥ずかしさを覚える。

己をこの場へと連れてきた葵の服の裾を握りつつ、空いた方の手でオルゴールを大切に抱きしめた。

葵がこちらへと振り向く。

「大丈夫、之彦くん?」

心配そうに之彦を見下げる葵に大丈夫だと首を縦に振った。

「はい、大丈夫です。ちょっと緊張しちゃって……」

へへ、と之彦が笑った。その言葉に葵も瞳を細める。

「そうだね、自分の願いが叶うと思うと緊張しちゃうよね」

僕も願いが叶う時が来たら緊張しちゃうかも、と笑った。

「そうですね、本当に直ったら……おばあちゃんも許してくれるかな……」

小さく呟く之彦の頭をぽんぽん、と葵が撫でる。

「大丈夫、きっと赦してくれるよ」

そう、穏やかに葵が微笑んだ。

窓の外から差し込む光が葵を照らす。

之彦は今にも泣きそうな顔で嬉しそうに微笑んだ。

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