ア・フォース・コア・ディヴゥラート 3

ある日、之彦は屋上で空を見上げていた。

浮かぶ雲はふわふわとしていて、柔らかそうで、乗ってみたいなぁと之彦はぼんやりと考える。

「あれ、之彦くん、だっけ?」

背後から声をかけられた。

振り向いてみれば長身の眼鏡をかけた少年がいる。

「あ、葵さん!こんにちは」

丁寧にお辞儀をすれば嬉しそうに葵は笑った。

「こんにちは、ここの屋上眺めいいよね」

時々来るんだと笑って之彦の横に立つ。

屋上から見える街、遠くにそびえる山、空は青い空。

とても良好な眺めだった。

こくり、と之彦が頷く。

「はい、とてもいいです。安心しますね高いところは」

高いところ好きですと之彦が微笑む。つられて微笑めば葵は何かを思い出したように之彦の方を見た。

「そういえば、之彦くんって魔法少女になった時の願いはなんだったっけ?」

ちょっと気にってと葵が首を傾げる。

その言葉に之彦があー、と頬を掻く。

「ボクですか、ボクはですね『壊してしまったオルゴールを元に戻して祖母に返したい』ですかね」

その言葉にへぇ、と葵が頷く。

「オルゴール直したいんだね」

葵がふと、考えながら之彦へと問いかけた。

「はい、できるなら……」

そっか、と葵が頷いた。

ポケットへと手を入れる。

「誰か直せる人が居ればいいんだけど…」

うーんと葵がぼんやりと空を見上げた。

そして小さな声で、あ、と呟いた。

之彦が首を傾げる。

「どうしたんですか?」

問いかけられれば葵が嬉しそうに之彦の両肩に手を添えた。

「僕の友達に聞いたら直せる人知ってるかもしれない。彼、顔が広いから」

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