毒林檎を食べた姫は棺の中へ2
御影と出会って一年が経つ。
確か、ここの桜並で出会ったんだったなぁ。
そう、心の中で要舞は呟いた。
一年なんてあっという間だった。
寮から学校へと向かう道。
あの日の彼との出会いが昨日の事のように思い出される。
風に靡き、ひらひらと舞う桜の花弁。
頭の上へと降り注ぐそれを手を伸ばして掴み取った。
「いっちゃん、なーにしてんの?」
ぽん、と御影が後ろから要舞の肩を叩く。
「あー、ね。桜の花弁が舞っていたからつい…手で掴んで遊んでた」
ほら、と掌に握りしめた桜の花びらを御影へと見せる。
「まじで!?猫じゃらしに反応する猫みたいじゃん!」
すご!と大袈裟に驚く御影をシラケた目で見つめる。
「どういう表現なの……」
呆れた様に溜息を吐く。
いつまでも変わらないなと首を横に振った。
ふと、御影の後ろを見ると黒縁眼鏡をかけた少年がいる。
「御影、隣の彼は……?」
気付かれたと御影の後ろにいた少年はびく、と身体を跳ねさせた。
そんな事を御影が気にするはずも無い。
黒縁眼鏡の少年の肩をぽんぽんと叩けば得意げに要舞を見た。
「あ、ね、ね、こいつ俺の幼なじみ!とーか、
そう言いつつ透夏と呼ばれた少年の肩を組んでこちらへと引き寄せる。わ、と驚いた声を透夏は上げた。
「は、はじめまして……海彩 透夏です……」
よろしくお願いします先輩と要舞を見上げた。
「うん、よろしく。透夏、でいいのかな?僕は要舞。紡要舞。よろしくね」
怖がらせたら悪い。
そう思って笑顔を作り手を差し伸べる。
「は、はい、よろしくお願いします」
緊張しているのか、透夏はこくこく、と頷いた。
要舞の方に手を伸ばせばぽん、と優しく手を置く。
「とーか、堅苦しいぞ~いつも通りでいいんだよ!いっちゃん相手に気ぃ使うなって」
ほらほら、ちゃんと手繋いでと透夏の手の上からその手を握込む。
「ねぇ、どういう意味」
その言葉に要舞は不服そうに顔を顰める。
そんな反応に透夏はふるふると首を横に振った。
そして御影の方を向けは眉間に皺を寄せる。
「えぇ、流石にみっくんならとにかく、先輩に対して無礼な態度取れるわけねぇだろ」
おっと、思ったよりも口が悪いな。
大人しそうな見た目の割に図太そうだ。
流石は御影の友人だなぁと安心して頷いた。
ふと、御影の方に身を寄せてはこそ、と耳打ちする。
「御影。君の友人ってことはさ、彼もそのあーいうのなのかな……?」
その言葉に御影がなんのことかときょとんとする。
「あーいうの?……嗚呼、そそ、合ってるあってる!」
理解したのか高速で御影が頷いた。よくわかったね!と御影が要舞を抱き締める。
そして透夏の方を向くとキラキラと目を輝かせた。
「あんね、あんね、紹介しなきゃだったわ。な、な!とーか、とーか!いっちゃんも俺たちと一緒の魔法少女なんだぜ☆」
今日から三人で魔法少女だな!
仲間が増えて嬉しいと笑った。
思い切り二人を御影が抱き締める。
何故から分からないけど、三人で、という言葉に少し寂しさを要舞は覚えた。
風が強く吹き、桜がぶわ、と宙を舞う。
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