二十八章 大志を抱く事が出来なかった少年は

秋は天気が良い事が多い。

でも、台風が来て天気がとても悪くなることもある。

現在台風の真っ只中。

学校は休校になり生徒は皆、寮の部屋でゆっくりとくつろいだり、課題をしたり、と自由にしていた。

栄斗は自室でベットに寝転がりながら、足をゆっくりとばたつかせ本を読んでいる。

本の内容はミステリー。

とある記憶喪失の青年が、病院から退院する。病院から出ると、自分を助けたと言う女性に出会う。

その女性は探偵だそうだ。

そして自分を助けてくれたという探偵に青年は莫大な借金をしていたことを知らされた。

その費用が払えない青年は探偵と相棒になるという条件で借金をチャラにしてもらう。

その後、数々の難事件を解決していくというストーリーだ。

「へぇ、犯人はこの人なのか……」

興味深いなぁと栄斗が思わず声を零しながら次のページを捲る。

読書は好きだ。

その世界に浸れるから。

それに、強く人に左右されないから。

その道筋を辿るだけだから。

だから、好きだった。

栄斗は昔の事を思い出す。

それは、ある一人の守れなかった友人の事だった。

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