流れ星は夢をみるか?2
アンタレス
紅い星
それはさそり座の心臓部。
迫り来るように己を包み込む宇宙。
気がつけば上下左右どこもかしこも世界がまるでプラネタリウムのように星空が広がっていた。
すごいな、宇宙空間みたいだ。
ゆうきは顔を上げる。
重力を感じるのにふわりと浮いている感覚がした。
キラキラと星々が輝く世界。
綺麗だと思わず見とれてしまう。
ずっとここに居るのも悪くないかもしれない。
そう感じさせられた。
ここは一体どこだろう。
ぼんやりとそんなことを考える。
「なんでこんな所に生徒がいるんだ!」
遠くから可愛らしく力強い声が聞こえる。
怒られたのかと思い、思わず身体が跳ねた。
驚いて後ろを振り向けば声の主が居る。
吊り上がった目尻。琥珀色のくりくりとした瞳。黄色の髪は毛先に行くに連れて黄緑色になっていて、アニメの世界の人物かと錯覚させられる。
見た事のない人。
この世界の住人なのだろうか。
思わず彼女に問いかける。
「アナタは……だれ、ですか?」
歯切りの悪い声が零れ落ちた。
じ、と己を見つめる少女。
ゆっくりとこちらへと近づいてくる。
そして、ゆうきの肩を掴んだ。
じ、と彼の顔を見て、真剣な顔つきで問いかける。
「君は……ここが、どこだかわかる……?」
その言葉にゆうきが首を横に振った。
その反応にじ、と考え込んでいるのか口許に手を添える。そして首を傾げてんー、と唸った。
「ここに来たのは初めて?」
少女は再びゆうきに質問をする。
「は、はい……そうです……」
その言葉に答えが導き出せたのか、再び彼女の口がゆっくりと開いた。
「君は何も知らないんだね……ということは、メリルさんの使いじゃないってことだ」
その言葉にゆうきは首を傾げて少女を見つめた。
「メリ、ル……?」
聞きなれない言葉に思わず少女に問いかける。
少女は溜息を吐いてゆうきを見つめた。
「君、魔法少女知らないでしょ」
魔法少女……?よく分からない単語に首を傾げた。
その反応に頭が痛い、と少女が額に手を当てる。
「まあ、いいや。ひとまず話しながら着いてきて。ここにいたら危ないから」
ひとまず移動しよう。少女はゆうきの手を躊躇なく掴んで引っ張った。
ゆうきは男子校に通っている。
女の子とあまり喋る機会のなかったせいか、思わずびくりとしてしまう。
「何……?」
そう言いながらゆうきの方へと振り向く彼女は眉間に皺を寄せていた。
もしかして不機嫌なのかな、そうゆうきは考える。
「あの、手……」
その言葉にああ、と少女が穏やかに微笑んだ。先程までの不機嫌な顔が嘘のようだな、とゆうきが心の中で呟く。
「気にしなくていいよ。どうせ、同性同士なんだから」
再び首を傾げた。わけがわからない。
どうしよう、ここに来てから分からないことだらけだな。
そう思いながら言葉を零す。
「同性同士……?」
その言葉を聞いた少女はゆうきの方を振り向いた。くるり、とその場で回ればゆうきの方を向いて両手を広げる。
「そう、ボクはここの生徒だからね。ボクみたいに魔法少女もここの生徒なんだ」
凄いでしょう。
そう、得意げに彼女は胸を張る。
そんな彼女の姿に感心したのか、へぇ、とゆうきは頷く。
「そうなんですね、知りませんでした」
さらり、とした返答。
そんなゆうきに、反応それだけ!?と魔法少女と名乗る少女は驚いたのか声を上げる。
その後こほん、と一咳着いた。
「い、意外に冷静だね。びっくりしたよ」
少女の反応にふふ、とゆうきが思わず笑みを零す。
「驚いてますよ、これでも」
ゆうきの言葉を聞けば少女は穏やかに微笑んだ。
そしてゆうきに聞こえないくらいに小さな声で呟く。
「そう………キミらしい」
少女は笑う。一息着けばゆうきの頭をぽんぽん、と撫でた。
「?」
その反応にゆうきはよく分からないと首を傾げる。
「まあ、いいや。自己紹介がまだ だったね。ボクはシモン。よろしく」
シモンはゆうきへと手を差し出した。
「はい、よろしくお願いします。降谷ゆうきです」
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