雪と星心のクリスマス

なおき

特別編

12/25 今日はクリスマス。

愛穣家は朝から、私とお母さんの二人で大騒ぎ。

我が家ではクリスマスの料理は手作り、チキンにサラダにケーキ等など。

そして、夜は桜庭家と一緒にパーティーをするのが毎年のお決まりになっています。


「お母さん!牛乳のストックまだある!?」

「冷蔵庫の下の段にまだない~?そこに無かったらもうないかも~」

「え~もう夕方だからあまり時間ないよ!?」

「でもないと料理できないから・・・お母さんこのまま足りてる材料で作ってるから、星心は足りなさそうなの調べて買ってきて」。

「も~だからもっと買っておこうよって言ったのに~!」


昨日の夕方、食材の買い出しは尚人も連れて行って多めに買ったはずだったけど、どうも足りなかったみたい。

今日は尚人も夜まで友達と用事があるって言ってたから居ないだろうし、仕方ない一人でスーパーに買いに行こう。


~~~♪~~~♪



商店街のアーケードから聞こえてくるのはお決まりのクリスマスの曲。

一年の中でほんの少しだけ、この期間にだけ聞こえてくる曲のおかげか、なんとなくワクワクしてくるのは私だけじゃないよね?


スーパーの中に入るとさらにクリスマス気分が盛り上がる。

いたる所からクリスマスのBGMや歌、そしてご馳走の香りがしてくるのでこの時期にスーパーへいくの大好き。

っと、いけないいけない!今日は買い出しに来てる人も多いし、買う物も意外と多かったから急がないと!


「よいしょ!っと・・・ちょっと買いすぎちゃって重いかも・・・」


足りない物が意外とあったのと、食材見てるうちに追加で作りたいものができたりしてつい買いすぎちゃった。

それに、ちょっと時間かけてみてた物もあったし。

家までは遠くはないけど、少し坂道もあったりとちょっと持って帰るの大変かも。

なんとか持ち上げ少しずつ歩き始めると、顔になにか触れるような感覚がした。


「あ・・・雪だ~!」


今年はホワイトクリスマスになるのかな。

でも確か予報だと降り始めると今日は止まないかもって言ってたっけ。

できればもう少し家に帰るまでは頑張って欲しかったな、太陽も沈んできて寒くなってきたし早く帰らないと。

雪の降り始める中、重い荷物2つを両手に持って足早に帰・・・れるわけもなくゆっくりと歩き出した。

日も落ち、街灯が辺りを照らし始めるのと同時に降ってくる雪の量も増えてきた。

早く帰らないとお母さんも困っちゃうし頑張らないと!

そんな私の気合も虚しく、重い荷物と雪と坂道なんて最悪の条件では体力が持つわけなかった。

坂道の途中にある自販機とベンチのある公園には、休憩所を兼ねた屋根のある小屋があってそこで休んでいくことにした。


「結構降ってきちゃったなぁ。荷物重いし滑るし・・・どうしよう」。


脇に置いた大きな荷物を見ながらため息をついた。

急いで出てきたのもあって、携帯と傘を持ってくるの忘れちゃったのが最悪だった。

このままだと荷物を持っていくことは難しいし、かと言って荷物置いていくこともできない。

雪が止むことないから状況も悪くなる一方だし困ったな。

こんな時に尚人はどこに行ったの!?尚人が居ればこうはならなかったはずなんだけどなぁ。

なんて言っても誰も来てくれるわけじゃないし、助けてくれるわけでもない。


それからまた少し時間が経った。

小屋は人気のない公園の奥にある。さっき雪だと少しはしゃいでいたのに、今では寒く心細いのもあって泣き出してしまいそうだった。


「・・・尚人のバカ・・・なんで肝心な時に居てくれないのよ・・・」


自分でも涙ぐんでいるのがわかる。

寒さを少しでも防ぐために抱えた両脚の間に、泣きたくなるのを必死に防ぐため顔をうずめた。

それでも涙は止まる訳が無く、泣き出してしまった。

こんな時でも最初に顔を思い出すのは尚人だった。尚人と一緒だったら、尚人が迎えに来てくれたらいいのにな・・・と。

そんな都合のいいことなんて起きるはず無いのに。


「誰がバカだって?・・・まったくこんな時に何やってんだよ」


・・・どうして?・・・どうしてここに居るの?


声が聞こえた瞬間、私の動きが止まった。

聞き間違えなのではないかと思ってしまった。

今顔を上げたら泣き顔を見られてしまう・・・それだけは嫌なのでそのまま返事を返した、今私が一番聞きたかった声に。


「・・・来るのが遅いよ・・・バカ!」

「お前がいつになっても帰ってこない。っておばさんから連絡あったから急いで探しに来てやったのにバカってんなんだよ。」

「うるさい・・・ばか」

「まったく。・・・ほら荷物もってやるからさっさと帰るぞ」


そう言って私の脇に折り畳み傘を置くと入れ替えに、2つを荷物を持ちあげ私に背を向けた。


「荷物重くて顔見てる余裕ないし、両手塞がって傘使えないから後ろから歩いて来いよ」


そう言って尚人は歩き出した。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


急いで立ち上がり、私も慌てて傘を開いて歩き出した。

そこからは二人で話すことはなかった。

言った通り私のほうを見ることなく、特に何か聞いてくることもなかった。

折り畳み傘は袋に入っていて、ここまで使われた様子もなかった。

もしかして傘ささないで探してくれてたのかな・・・。


冷静になれる時間があったおかげもあって、家へ着いた頃には涙も止まっていた。

お母さんには少し怒られちゃったけど、その後はお風呂にも入って体を温めてから、またパーティーの準備に戻った。

準備も終わったちょうどその時、一度帰宅していた尚人も両親を連れてやってきた。


「「メリークリスマス!!!」」


なかなか会うことができない尚人の両親の揃ってのパーティーは毎年盛り上がって、私の両親と遅くまで呑んだりしているみたい。

そのまま参加していてもよかったのだけど、なんとなく私は自分の部屋まで戻ってきていた。


(あ~あ・・・尚人に迷惑かけちゃったな・・・)


夕方まで用事があるって言っていたのに、私のせいできっと切り上げてきてしまったんだと思う。

それにあの時も、多分あそこで私が立ち往生してるの予想して来てくれたんだよね・・・傘も私に分しか用意してなかったみたいだし。

わざと私の顔を見ないように歩ってくれたし。


尚人は昔からそうだ。

私が困ってたり泣いてたりすると、どこからともなく迎えに来てくれる。

はぁ~・・・ちょっと今夜はやめとこうかな・・・また今度の別な時に・・・。


コンコン


その時、扉をノックする音が聞こえた。

ナックした人は誰なのか考える必要もない。

どうぞ。と返すと尚人が入ってきた。


「親父達も終わったみたいだし、今日はそろそろ帰るわ。」

「あ、うん。わかった。お休み尚人」

「また明日な。」


そう言って扉を閉めかけた尚人だったけど、途中で動きが止まった。


「?どうしたの?」

「あ、・・・いや・・・え~と・・・」

「?」


普段とは違った感じの尚人だったけど、私もよくわからないのでとりあえず待ってみることにした。

ちょっとだけ間があった後、背中から赤いリボンの付いた箱が差し出された。


「えっとな・・・これ、星心にさ・・・その、プレゼント」

「え?・・・これ私に?・・・開けてもいい?」


そう言って差し出された箱を開けてみた。

そこには小さいけれど、黄色く光るスターネックレスだった。


「・・・綺麗・・・これどうしたの?」

「今日買ってきたんだよ・・・この前買い物行った時に欲しがってたろ?だから・・・」

「もしかして今日出かけてたのって・・・これのため?」

「別にそうゆうわけじゃなかったけど・・・たまたまで出かけたからだよ・・・」


ふふっ。嘘つくの相変わらず下手だなぁ。

嘘くつくときはいつも目を逸らすんだから。

嬉しい!・・・けどここはあえて平常心で・・・。


「ふ~ん。そっかぁたまたまだったのかぁ~。それじゃ私からのプレゼントは必要ないかぁ~尚人が欲しがってたゲームソフトの限定版かってきたのになぁ~?」

「なに!?マジか!? あれ数量限定で抽選販売だったのに!」

「ふふ~ん!偶然当たったのでした~。」

「星心さま~!どうか、どうかお恵みを!!!」

「あはは。なにそれ~・・・はい、ちゃんとあげるね。」

「サンキュー星心!これで冬休みを謳歌することができるぞ!!!」

「喜んでもらえてよかった。私にもやらせてね。・・・それとね・・・」

「うん?」

「今日はありがとう。色々・・・私ね・・・そんな尚人の事!」


尚人~早く帰るぞ~


「わかったよ!今行く!・・・っと悪い聞いてなかった俺がどうかしたか?」

「あ・・・うぅぅん何でもない!助けに来てくれてありがとうってだけ!」

「あぁ~今度からは携帯忘れんなよ。」

「ごめんごめん!次からは気を付けるね。」

「それじゃ、お休み星心」

「うん!またね尚人」


パタン


扉は閉まり、尚人が階段を下りる音が聞こえた。

やがて玄関の閉まる音が聞こえると私はその場に崩れ落ちた。


「~~~~!」


顔が一気に熱くなるのを感じた。

結果的にプレゼントを渡すこともできたし、今日のお礼も言えた。

なのに私いったい尚人に何を言おうとしたの!!?


顔が真っ赤になった星心の手の中で、スターネックレスが雪明りの光で輝くのだった。



【Merry Christmas】

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雪と星心のクリスマス なおき @naoki_stera

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