元日
~ 一月一日(金祝) 元日 ~
※新年明けまして案件
『新年』で明けてるから。繰り返しに
なるから間違い言葉だと言う人もいるが、
そもそもここで言う『明ける』の由来に
ついて俺の調(以下三千字略)。
てん
てけてけてけてん
てん
てけてけてけてん
「…………何だよその頭」
「あのね? ここに来る前、お隣りさんに挨拶に行ったら……、ね?」
「花屋に?」
「お酒を召した奥様に、こんなんされた……」
「……まあ、めでたくていいんじゃね? 折り紙細工みてえな綺麗な花だし」
「でもこれ、コキア・コオケイ……」
「なにそれ?」
「ううん? し、知らない方がいい……」
「…………まあいいや。では改めまして」
「うん」
「上品に、縁起がいい感じに」
「うん」
「新年」
「明けまして」
「「おめでとうございます」」
「……落ちたぞ、花」
「な、なんか縁起悪い……」
「お前の髪、細いからな。飾りとかむいて無いな」
「そ、そういうこと言っちゃダメ……」
「ん? 褒めたつもりだが」
「それは受け取る側がどう感じるか次第」
「確かにそうだが。そんなに嫌だったのか?」
「この花を持たせて警察に出頭させたいほど傷ついた……」
「お前が怒った事はよく分かったが……、その花なんだよ。めっちゃ気になる」
「じゃあ、お詫びが欲しい……、かも」
「そう言いながらおせち見つめて腹鳴らされても」
「あれ、お父様と一緒の時は良く食べた……」
「小さな頃? じゃあ、意味もよく知らずに食べてたんだろうな」
「…………意味?」
「縁起もんなんだよ、全部。ごまめは五万の米って当て字できるから五穀豊穣。伊達巻は形が巻物に似てるから知識を得ることができるように。きんとんは金運。鰤は出世魚だから立身出世を。たたきごぼうは……」
「……うんちく」
「はっ!? き、気を付けてんのにまたやっちまった……」
「新年早々それだと、また、『小手じゃない君』って呼ばれる……」
「なにそれ」
「面。……胴」
「くそう。でも、正月飾りの時も言ったけど。担げよ、縁起」
「美味しく食べたらそれでよし……、よ?」
「意味くらい知って食え。今、お前が摘まもうとしてる黒豆は、まめに勤勉に働けて黒く日焼けできますようにって意味だ」
「や、焼けたら困るから、パス……」
「そして隣の昆布巻きは、子供に生むって当て字できるだろ? 子、生、だから子宝に恵まれますようにって意味だ」
「子供なんてできたら大変。これもパス……。あ、これ、しゃくしゃくしてるから好き」
「数の子も子だくさんを祈願したものだが……? 何を膨れてる」
「い、いじわる……。何も食べれない……」
「偶然だ偶然」
「じゃあ……、それは?」
「ん? ああ、おせちの味見役は俺だから、お袋が作ってる間に食べ飽きちまうんだよ。これは自分用に作った竜田揚げ。砕いたビーナッツの衣がポイントだ」
「そうじゃなくて、縁起のいい意味」
「………………え?」
「意味」
「……まめに」
「うん」
「立っていられますように?」
「正解」
こうして新年早々。
うんちくが面倒だったかも罪により。
俺は玄関先に立たされた。
でもまてよ?
ピーナッツの衣で、まめ。
竜田だから、立つ。
じゃあ、『揚げ』は?
…………新年。
あげましておめでとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます