予告編その2 浅草仲見世記念日


 ~ 十二月二十七日(日) 浅草仲見世記念日 ~

 ※お年玉:お正月、何が楽しみかと聞かれて

  おじいちゃんおばあちゃんに会えることと

  答えるヤツの多いことと言ったら。




「ごほごほ。……ずずっ」


「おにい。おかゆと鼻をすすりながら汚名をすすってっとこわりいけど」


「すすぐんだよ。あと、俺の名は汚れてねえ」


「凜々花、ネンマツネンシーなもん作ってみたからチェックぷりーず!」


「ドラマの一挙放送おもしれえとこなのに……、ごほっ。ATM、できたのか」


「なにそれ?」


「……お前は、責任って言葉知ってる?」


「せーじかになったら誰もが逃れるのに必死になるヤツ?」


「誰もが逃れようとしてどうする。終わってるわそんな国」


「ATM? なんかの略?」


「いやそうなんだけどそういう話じゃなくてなぜ覚えてない……」


「危ないトミーとマツ?」


「…………どうして親父とお袋は爆笑してんだ?」


「これ、どんなもんじゃろ?」


「ごほっ。どれどれ…………? すげえよくできてんな布袋様」


「それ、ただのほてやんじゃねえんだぜ?」


「なんか動くけど……。まさか、寄木細工のからくり?」


「そ。順繰りに動かしたら外れんの」


「すげえ。……ああ、あそこでピースしてるやつらとの共同開発か」


「アイデアは凜々花なんだけどね! すげえ派手な居酒屋で売ってたやつ!」


「……やっぱ、まだ熱があんのかな」


「ん?」


「お前の事、大抵は理解してやってるつもりでいるんだが」


「うん」


「すげえ居酒屋って、なに?」


「夜んなるとさ! 酔っ払いがふらっふら歩いてる赤ちょうちん!」


「行ったことあるの!?」


「おにいが連れてってくれたんじゃん」


「ウソつけ! ……ああ、お袋は般若の面被るな。ぜってえウソだから」


「ウソじゃねえって! 赤ちょうちんくぐってさ! 両側にお店一杯並んでて!」


「なぜ店の中に店がある」


「そのお店で売ってたんだよ、木のパズル」


「ごほっ。……さっぱり分からん。東京の話か?」


「うん」


「近所にそんな店あったかな……」


「『そんな店』じゃなくて、『なか店』」


「お前の頭の中に誤字発見だバカ野郎! ごほっ! ごっほごほ!」


 そうか、仲見世ね。

 浅草に連れてってやったことあったっけ。


 そこで寄木細工の箱見て感動してたよな、お前。



 ……だが。



「雷門は、へいらっしゃいの門じゃねえ! ……ごほっ!」


「あ、そうか! のれん出てねえから……」


「店じまいしてるわけでもねえ!」


「怒りながら、良く分解できるな、おにい」


「立体パズルは得意だからな……」


「これ、ネンマツネンシーな感じ?」


「ああ、かなりいい。でもお前、春姫ちゃんにお年玉上げるって話は?」


「へ?」


「それも忘れてたとかそういう……、お?」


 ようやくパーツが全部開くと。


 下腹部あたりの空洞からコロンと転げ落ちたもの。


 どこで手に入れてきたのやら。


 ぴっかっぴかの。

 金メッキの玉。


「なるほど。さすが、凜々花は天才だな」


「だろ!?」


「パズルが解けたら出てくるお年玉、か」


「ううん? それ、きんた〇!」



 ……やっぱり。

 まだ、俺は熱があるようだ。

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