5D

ダーク sideーー



ギャハハハハハッーーー


黒い膜に包まれた後、その姿を変形させる怪人。醜く崩れた口元から、白い息を吐く化け物。俺はそれを睨みつける。


「嘘ッ、半怪人が、かい、じゅう‥にっ、こんなの聞いたことないッ」


この付近では珍しい怪人反応‥。

ついてるぜ‥。


Sランクの怪人。

【人喰いキャット】ーー


俺の姉ちゃんを殺したクソ野郎ッ。



ギャハハッーーンア?ナンダコレ?



爪に食い込んだ正樹に気づいたのか、不思議そうにそれを見つめる怪人。

まずい喰われるッ。


「くーーうおッ!?」


正樹を救おうと、足を踏み出した途端、俺に向かって投げられる正樹。なんとかキャッチしたものの、その身体は冷たい。


「正樹ッ!?」


俺に駆け寄ってくる雪奈にすぐさま正樹を託す。

おかしい‥。獲物を‥投げ捨てた?

人喰いキャットの情報は飛鳥に調べてもらったが‥その情報は頼りないものばかり。


顔バレのしていない怪人。

人を喰う事を目的にした凶悪な犯罪。

初期目撃から度々目撃情報が寄せられるも、その被害は少ない‥。


だが、

2年前、俺達の前に現れたソイツは、そんな少食の奴じゃなかった。人を食っては屍の山に捨て、すぐに他の生きた人間を食い漁る大食いの化け物。

腹が減っていないのか‥?

いや、まずはこいつらを2人を逃がさないと‥。


「‥お前は、その男を連れて、そこの裂け目から逃げろ。」


雪奈にそう告げて、俺は目の前の怪物を捕らえる。


「っ、でも!?」


「さっさとしろ!?そいつを死なせたいのか!!」


「ッ、分かったわ‥、でも、私、借りは必ず返す派なの‥だからッ、」


「分かったよ‥次会うときにな‥」


真剣な顔をして俺を見つめる雪奈。真面目すぎるとこは変わらないな‥。フッ、雪奈らしいぜ。

おまえ達は‥必ず守るから‥。



ギャハハハハッオモシレエモンミッケ!!


アソビノジカンダッ!!ーー



楽しそうに笑う気味の悪い人喰いキャットにゾクリと背筋が凍る。まずいっ、気づかれたか!


「いけっ!!」


「ッ、うん!」


サポーターに支給されている空中浮遊ブーツで、裂け目を目指す正樹と雪奈を見送りながら、俺は奴を引き止めるため、その間に構え立つ。


ドコイクンダヨ?

イッショニアソボウゼエエエエエ!?


「っ、これでも食ってろ!!ーー」


ッンガ?!


雪奈達に大きな爪を飛ばそうとする人喰いキャットに、俺は勢いよくその顎に蹴りを食らわす。

お前の相手は俺だろうが‥よそ見すんじゃねえよ。


「よう‥こんなに早く出会えるとは思ってなかったぜ‥人喰いキャット‥」


グギャアアアアアアアッッ

イテエエエエエッギャハハハハ!!ーー


顔を押さえながら、悶える人喰いキャット。

それさえも楽しむ奴の異様な姿に、俺は後ずさりそうになる足を押さえつけた。


「ッ、笑ってられるのも今のうちだぜ‥お前にッ地獄を見せてやるッ」


びびってんじゃねえよっ、

必ず‥復讐を果たすッ。



ギャハッ?

オマエガ アソンデクレルノカァ?


「そうだ。さあ、始めようぜ」


さあ、こい。俺はお前をぶっ壊す為にここにいるんだから。

化物が地を這い、こちらへと向かってくる。そのおぞましい姿はまるで地獄からの使者。グロテスクで寒気がする。人間の姿に上手く化けていたものだ。


イイネエエエエエ

グギャアアアッ


「クッー、」


大きな口が迫りくる。動きを読みながらかわそうと動くが、その先から鋭く長い二本の尾が俺を突き刺そうと待ち構えていた。


「モードチェンジッーーシールドッ展開ッーー」


ガキンッと二つがぶつかる音が響き渡る。

ギリギリで展開できたシールドが、二本の尾を弾いたのだ。はは、あっぶねえけど、助かった‥。飛鳥。‥このスーツ、最高だぜッ


「モードチェンジっ、ガンモード!!くらえ、炎弾丸ーーー」


畳み掛けるようにモードを切り替え、切り替わったと同時に右腕に展開された特製の銃で、奴の腹を撃ち抜く。


グギャアアアアアアッ!?!?

アツイイイッアツイイイッ!?!?


燃え盛る炎。奴の左腹が焼きただれ、苦痛の叫びが響く。そうだ、もっと苦しめ。姉ちゃんもそうやってっ苦しみながら死んでったんだッ。思い出せ。お前が食い漁った者達の叫びをっ。今度は、お前が体験する番だ。もう一発。そう思い、のたうちまわる奴に銃口を向ける。



「ゥギ‥




助けてッ‥お願いっ」


「は、」


今、


ギャアアアッ!!

イタイイタイイタイ




ハア‥

‥コロスーー


「っ、ぐあ!?」


素早くグシャリと切り裂かれたスーツ。

即座に距離を取り、体制を整える。く、少しかすったか‥。滲む血は赤黒く、俺は眉を寄せた。


なんだ今のは‥


少年の声が聞こえたんだ。この化物から‥


気のせいか‥?





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