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「人が‥多すぎる‥未来、離れるなよ‥」


「うん‥」



中央都市前駅から5つ離れた【第5番地駅】。

ここは比較的、怪人の被害が少なく、

若者が同じ制服を着て学を学ぶ、【学園の町】だと、糸が言っていた。


その名の通り、大きな建物や、グランドが所々に並んでいて、

登校途中なのだろう、笑い合う生徒の姿や、

部活に励む若者達に俺はそっと息を潜めた。


中央都市は今頃、サツや、政府で溢れかえっているはずだ。なら、中央都市線の範囲内にある他の駅から乗車するのみ。


そこから、向かうのは、中央都市の外れ。

今年建設されたばかりの【口ノ島駅】。



怪人すら出没しない人口が極端に少ない地域。そこに何故か建設された無人駅。


違和感だ。

俺の予想に過ぎないが、そこにヒューマンアンドセンターが存在する。


だが、もし‥違っていたら?

不安が胸を襲った。


「おにいちゃん‥お腹すいた‥」


「っ!さっき食っただろ!?」


未来の予期せぬ言葉に、俺の心臓は悲鳴をあげる。


まさか‥また



「‥でも、お腹空いたんだもん‥」


「ッ、そんな」


こんな時に何故ッ。

早く、早く食べられるものを探さないとっ。


近くに墓は‥

ここらの地形が分からない。

なら、ホームレスから‥、ダメだ‥きっと新鮮なものでないと満たされない‥。

くそ、どうすれば。


「もう‥ほんとに蓮って最低ッ」


「まあまあ‥蓮にもきっと事情があるんだよ。」



若い女と男が通りかかって、俺はふと足を止めた。

新鮮な‥【肉】。これなら‥。まて、

でも、糸はダメだって‥。生きた人間を襲えば、本当に人間をやめることになっちまうって‥。


ッでも、


「お兄ちゃん‥」

もう、これしかないーー


未来を薄暗い路地裏へと連れて行き、その奥の捨てられて重なった段ボールの上に座らせる。


「少し待ってろ‥」


未来が何か言おうと口を開いたが、俺はそれを無視して先程の通りへ戻る。

人通りが少なくなったその瞬間、

俺はゆっくりとその姿を変え、奴らの元へと歩き出した。



女か、男か‥いや、どちらもだーー


未来の腹が満たされればそれでいい。



筋肉が軋み、血が騒ぐ。耳や爪は変形し、刃物の様に鋭く、

尾骨から禍々しい長い尾が生え、

口は大きく醜い牙が俺の顎を貫いた。


「おいーーー」


振り返る2人の男女が、キョトンと声の主を探す。人が良いのだろう。影に隠れていた俺は、油断したその瞬間を逃さず即座に【能力】を使用する。


‥ハンティング グラウンドーーー


怪人特有の能力、狩に特化したこの能力は

まるで妹を守れと、そう告げるかのように、

彼等と俺の周りを、赤黒い膜が包み込む。


「へ?っ、正樹っ」


「まずいっ、雪奈、逃げッーー」


血のようなドロドロした膜は、人間の体内の血管みたいで。グロ映画が苦手だった昔の俺なら発狂ものだ。ただ、気づけば使い方を知っていたし、不思議と気持ち悪いとも思わなくなっていて、まるでそれが当たり前かのような‥本当に‥おかしな話だ。

制服の男女が庇い合い、焦った表情で逃げ道を探す。

ああ、昔、友人にドッキリを仕掛けた時も、あんな顔してたな。懐かしい‥記憶だ。



ある日、突然

怪人が出現し、全国を襲撃したーー

ニュースではいつもそう放送されているし、きっと歴史の教科書にもそんな風に刻まれているのだろう。


だけど、それは間違いだ。

ある日、突然


【人間】だった俺達は、


「アイツのために‥


死んでくれーー」




怪人化してしまったのだ。

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