2D
ーーダーク sideーー
「ゔ、‥くそっ、いってぇ‥」
朝、目が覚めて、身体中の痛みに目を潜める。
洗面所へ向かい、鏡の前で傷を確認すると、
何かで縛られたような痣が所々広がっていて、見ているだけで痛々しい‥。
今日の体育は休むか‥いや、あの熱血女が休ませてくれるはずがない‥。せめて、着替えには気をつけてと‥
ピンポーンと、鳴り響くインターホン。
俺は急いで制服に着替え、
玄関の扉を開ける。
「おはよう!蓮!」
サラサラとした茶髪に、程よく切れ長の瞳。
そこらのアイドル様よか、いけてるよ‥。朝から眩しい笑顔‥。
よくそんなんで毎日疲れないよな。
「‥はよ‥」
眩しすぎるそれから目を逸らして軽く挨拶を交わす。
すると、ひょこっと何かが、俺の前に立ちふさがった。
「もー!蓮ったら!朝から陰気くさい顔しちゃって!!シャキッとしなさい!シャキッと!!あ!また朝ごはん抜き!!ちゃんと食べないとダメってあれほどっ!」
ズカズカと人の家に入ってきては、説教をかます熱血女。
「うるせぇ‥」
お前は俺の親か何かか‥。
「なっ!!アンタ人が心配してんのに何よその態度!!」
幼馴染だからと、毎日律儀に俺の家まで迎えに来るこいつらは、正輝(まさき)と雪奈(ゆきな)だ。
物心つく頃から親同士仲が良くて、俺と姉ちゃんも合わせて4人で、いつも一緒だった。
「うるさいものに、うるせえって言って悪いか。」
そう、姉ちゃんが死ぬまではーー
「ッ~!!」
「はは、2人ともほんと仲良いね!」
正輝がヘラヘラと笑う。
冗談じゃない。
「「どこがっ!あ‥」」
「ぷっ、やっぱり仲良いよ!」
なんでも素直に言葉にできる正輝の周りは、いつも人で溢れている。
正輝とは正反対な俺は、幼馴染という肩書きさえ無ければ、きっと関わる事すらなかっただろう。
光と陰。俺らを表すなら、その言葉がぴったりだと姉ちゃんは言っていた。
「はあ‥お前も見る目ねえな。こんな奴がサポーターで心配だよ」
正樹はヒーローだ。
政府から選ばれた希望の星。
登録者であるヒーローには、戦闘や情報面でのサポーターが付けられる。
ヒーローサポーターの父を持つ雪奈は、
父から受け継いだ頭脳と才能で、16歳でありながら、正樹のサポーターへと推薦された。
「なにおおお!!アンタ今日こそはギャフンと言わせてやるんだから!!」
「はは、心配はいらないよ。大丈夫。雪奈は天才だから、俺にはもったいないくらいだし。」
世界を守るヒーローの正樹と
「っ、正樹‥」
それをサポートする雪奈
「‥そうかよ。」
気づけば
俺の居場所は、とうの昔に消えていた。
「む!!少しはアンタも正樹を見習いなさい!!そんなんだからあんたはモテないのよ!!馬鹿蓮!!」
そんなの‥わかって‥
「そう?私は蓮の事、好きだけど?それに、蓮は馬鹿じゃないわ。」
「ッ!?」
聞き覚えのある声が、俺の耳元に息を吹きかける。
ぞわりと震える体と、首に回される腕。
柔らかい感触が俺の背中にくっついて、
それが何かわかった途端、俺は顔を赤らめる。
「へ?」
見慣れた制服を着こなした金髪の女。
俺の背中に当たるのはそいつの豊富な‥
「飛鳥!?ーーおまっ!!どうしてここにっ!?つか、どうやって入った?!」
飛鳥ーー
ひと月前、俺は家の前で、ボロボロの女を拾った。
それがこいつ、
飛鳥・ナタリーである。
俺の運命を‥全てを変えた女ーー
「ふふ、実は私、今日から蓮と同じ学校に通う事にしたの‥だから、よろしくね、蓮?そして、正樹さんと、雪奈さん?」
「はあッ!?」
そんなの聞いてないぞ飛鳥!!
こいつ一体何考えてッ
「な、なによ、好きってっ‥てか!あんた!家に誰もいないからって女の子連れ込んでっ、最低っ!!」
連れっ!?
まてまてっ雪奈!!
「ち、ちがっ!誤解だ!!」
「もういい!行こう!正樹!!」
「え?ちょ!雪奈!!」
ズルズルと正樹を引きずるゴリラ女に手を伸ばす。
虚しくもバタンと閉まったドアに、俺は頭を打ち付けた。
ああ、くそっ、変な誤解されたじゃねえか!
どれもこれも全部、
「ふーん‥あれが蓮の好きな女の子?私の方が100倍可愛いのに‥まあ、いいわ。私達も行きましょう?蓮?」
こいつのせい‥って、
「ッー、おまっ!!さっきから胸!!あ〝あああああ!!なんでこうなるんだよ!!」
ダークside endーー
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