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ーー九郎!いい知らせだ!!

身寄りのない怪人達を集めて、保護してくれる施設が創設されたらしい!!助かった!やっと、やっと、安心して暮らせる!!


ヒーロー政府にはまだ公認されていないから、秘密裏に動いている組織で、相手側の都合上、日程は10日後になるそうだ。

俺は顔がバレてるから、お前らとは別行動するけど、心配はいらない。

10日後の午後3時ーー中央広場の交差点で待ち合わせ、いいな?はは、そんな、怖い顔するなよ?俺が迎えに行くからさ!わかったな?午後3時だぞ!!


約束だ兄弟ーー必ずそこで、また会おうーーー







ああ‥約束だーーー兄貴ーー










ーー‥九郎





にげろーーー











「はっ!?、糸っ!!っ、‥‥」



埃臭いダンボールの下で眼が覚める。

心臓が煩くて堪らない。

昨日からずっと走って‥遠くへと遠くへと逃げて‥


まだ糸の叫び声が頭の奥底に鳴り響いていて、俺は前髪をくしゃりと握りしめた。



「‥スー‥」



「っ、未来‥」



寝息‥

俺の腕を枕にして眠る未来。

昨日泣きじゃくったその目は真っ赤に腫れていて、どうしようもない喪失感に襲われる。


聞き分けの良い未来があんなに泣くなんて‥。


そう‥それだけ‥大切な存在を俺達は無くしたのだ。




「俺は‥どうすれば、いい‥?俺はッどうすれば‥糸‥教えてくれよっ、兄貴ッーー」



泣いたらダメだ。

泣いたって何も解決できない。


糸の口癖だった。

悲しい時も苦しい時もいつもそばで笑って元気付けてくれる。

血が繋がっていない俺達の面倒を見てくれた、頼れるたった1人の兄貴。



考えろーー



糸の言葉を思い出す。


そうだ、糸の言葉を‥



ーー正式名署は、怪人保護施設。だけど、まだ公に出来ないから、名を隠して活動してる。

その施設の名前は、ーーー





「アンド‥ヒューマンアンドセンター‥」









「未来‥ほら、飯」



起きた未来に飯を渡す。少しの希望。

糸が残してくれた希望



「‥これ、まずいから、好きじゃない‥」


「贅沢言うな‥我慢しろ。」


「はーい‥。」



大人しく食べ始めた未来を横目に、俺はヒューマンアンドセンターへの行き道を考える。

確か、糸は中央都市の外れにあるのだと、そう言っていた。

だから、待ち合わせの場所も、交通の便が良い中央広場にしたのだろう。


中央広場前駅から、都市の外れまで

乗り継がなくても行ける、駅名‥


確か‥




『昨日午後3時頃、【血だるまの蛾】を何者かが討伐したとの情報がSNS内に投稿されましたーー』


ふと、

ホームレスの所有物であろうラジオから馴染みのある名が流れ、俺はそちらに耳を傾ける。



『ヒーロー政府が調査したところ、死体のみを残し消えたその討伐者は、無名の非登録者であり、政府はその人物との関係性を否定しています。ーーまた、黒いヒーロースーツを着ていたことや、名を名乗らずに立ち去った事から、無名のダークヒーロー、真のヒーロー等、市民の間で彼を称賛する声がーーー』



「ッ、無名、だと‥」



糸を殺した黒スーツ‥

ヒーロー政府の登録者じゃなかったのか‥?

だが、あのスーツはヒーロー政府の機密情報‥。

研究者、また、ヒーロースーツを着る資格を持つ選ばれた登録者以外は所有できないはず‥。


なら、一体アイツは‥




「糸、おにい、ちゃん‥ふえ、グスッ」


ポタリと地面に落ちた雫に、ハッと未来を見つめる。俺はすぐにラジオを消し、未来の頭に手を置いた。



「‥おい。食うか泣くかどっちかにしろ馬鹿。」



「‥ふ、ゔう‥」



ほんとに、こいつは‥



「‥未来‥お前は必ず俺が守ってやるから‥だから、もう泣くな。ほら、冷たくなる前に食っちまえ。」


「ふえ‥ヒック‥う、ん。」


「良い子だ‥」



必ず、お前を守ってみせるーー

目的は決まった。

目指すはヒューマンアンドセンター。



俺達の幸せが、きっとそこにはあるよな、糸ーー

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