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◇
ーー九郎!いい知らせだ!!
身寄りのない怪人達を集めて、保護してくれる施設が創設されたらしい!!助かった!やっと、やっと、安心して暮らせる!!
ヒーロー政府にはまだ公認されていないから、秘密裏に動いている組織で、相手側の都合上、日程は10日後になるそうだ。
俺は顔がバレてるから、お前らとは別行動するけど、心配はいらない。
10日後の午後3時ーー中央広場の交差点で待ち合わせ、いいな?はは、そんな、怖い顔するなよ?俺が迎えに行くからさ!わかったな?午後3時だぞ!!
約束だ兄弟ーー必ずそこで、また会おうーーー
ああ‥約束だーーー兄貴ーー
ーー‥九郎
にげろーーー
◇
「はっ!?、糸っ!!っ、‥‥」
埃臭いダンボールの下で眼が覚める。
心臓が煩くて堪らない。
昨日からずっと走って‥遠くへと遠くへと逃げて‥
まだ糸の叫び声が頭の奥底に鳴り響いていて、俺は前髪をくしゃりと握りしめた。
「‥スー‥」
「っ、未来‥」
寝息‥
俺の腕を枕にして眠る未来。
昨日泣きじゃくったその目は真っ赤に腫れていて、どうしようもない喪失感に襲われる。
聞き分けの良い未来があんなに泣くなんて‥。
そう‥それだけ‥大切な存在を俺達は無くしたのだ。
「俺は‥どうすれば、いい‥?俺はッどうすれば‥糸‥教えてくれよっ、兄貴ッーー」
泣いたらダメだ。
泣いたって何も解決できない。
糸の口癖だった。
悲しい時も苦しい時もいつもそばで笑って元気付けてくれる。
血が繋がっていない俺達の面倒を見てくれた、頼れるたった1人の兄貴。
考えろーー
糸の言葉を思い出す。
そうだ、糸の言葉を‥
ーー正式名署は、怪人保護施設。だけど、まだ公に出来ないから、名を隠して活動してる。
その施設の名前は、ーーー
「アンド‥ヒューマンアンドセンター‥」
◇
「未来‥ほら、飯」
起きた未来に飯を渡す。少しの希望。
糸が残してくれた希望
「‥これ、まずいから、好きじゃない‥」
「贅沢言うな‥我慢しろ。」
「はーい‥。」
大人しく食べ始めた未来を横目に、俺はヒューマンアンドセンターへの行き道を考える。
確か、糸は中央都市の外れにあるのだと、そう言っていた。
だから、待ち合わせの場所も、交通の便が良い中央広場にしたのだろう。
中央広場前駅から、都市の外れまで
乗り継がなくても行ける、駅名‥
確か‥
『昨日午後3時頃、【血だるまの蛾】を何者かが討伐したとの情報がSNS内に投稿されましたーー』
ふと、
ホームレスの所有物であろうラジオから馴染みのある名が流れ、俺はそちらに耳を傾ける。
『ヒーロー政府が調査したところ、死体のみを残し消えたその討伐者は、無名の非登録者であり、政府はその人物との関係性を否定しています。ーーまた、黒いヒーロースーツを着ていたことや、名を名乗らずに立ち去った事から、無名のダークヒーロー、真のヒーロー等、市民の間で彼を称賛する声がーーー』
「ッ、無名、だと‥」
糸を殺した黒スーツ‥
ヒーロー政府の登録者じゃなかったのか‥?
だが、あのスーツはヒーロー政府の機密情報‥。
研究者、また、ヒーロースーツを着る資格を持つ選ばれた登録者以外は所有できないはず‥。
なら、一体アイツは‥
「糸、おにい、ちゃん‥ふえ、グスッ」
ポタリと地面に落ちた雫に、ハッと未来を見つめる。俺はすぐにラジオを消し、未来の頭に手を置いた。
「‥おい。食うか泣くかどっちかにしろ馬鹿。」
「‥ふ、ゔう‥」
ほんとに、こいつは‥
「‥未来‥お前は必ず俺が守ってやるから‥だから、もう泣くな。ほら、冷たくなる前に食っちまえ。」
「ふえ‥ヒック‥う、ん。」
「良い子だ‥」
必ず、お前を守ってみせるーー
目的は決まった。
目指すはヒューマンアンドセンター。
俺達の幸せが、きっとそこにはあるよな、糸ーー
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