1D
ダークsideーー
『大丈夫っ!?蓮(れん)!!』
無線から、心配そうな飛鳥(あすか)の声が聞こえる。
くそ、‥情けない。
「くっ、なんとか‥」
油断した。
【血だるまの蛾】
ヒーロー政府から恐れられ、その危険度から付けられるランク。その中でもSランクを持つ怪人は少なく、対個人戦での対策が施されている程危険視されている。
だが、
攻撃をしかけてくる訳でもなく、逃げ惑うだけのこいつを甘く見くびっていた。
締め付けられる体。視界が闇で覆われる。
試作段階とはいえ、この対怪人用スーツを着ていながら、握りつぶされるような痛み。
前言撤回だ。流石Sランク‥しぶといな。
とどめを刺し損ねた。
確かに心臓を貫いたはずだったのだが‥
くそっ、どうする?
とにかく、周りの状態を知らなければ、
俺は感覚を研ぎ澄ませる。
人の呼吸。
心臓の音。
奴の気配ーー
みつけた
奴に向かって、攻撃を仕掛けようと手を掲げた時だ。
`にげろっーー
刹那、囚われた繭の中で耳にした奴の言葉に、俺は目を見開いた。
『ねえ、ちゃん‥?』
残酷な記憶が、脳を駆け巡る。
『あ〝、にげ、てーー』
蘇る悪夢。
俺を庇い喰われる姉。生きながら、喰われていく。ぐちゃぐちゃと音がして、俺に手を伸ばす姉は、
にげて、と‥
そう言ったのだ。
◇
俺は拳を握りしめる。
みなぎるパワーは、復讐の力ーー
「お前らが‥っ、
その言葉を使うんじゃねええええ!!」
姉は優しい人だった。お人好しで、騙されやすくて‥いつも笑ってたんだ。悪いことはしていない。正義感の強い姉だった。むしろ感謝されて‥それなのに、そんな姉の人生をお前達、怪人がッ
『す、凄い精神経験値メーターがどんどん上昇していくっ!!これならっ!!蓮!!鍵を外すわ!!これでソイツをぶっ倒しちゃって!!』
「ああ‥もちろん、
そのつもりだッ!!
ーーリミッター解除‥!!」
ぶっ壊してやるよ。お前ら怪人を。
姉を食ったあの怪人をッ
「ヒーローモードチェンジーー逆鱗」
ドクドクと溢れ出すのは復讐の炎。
次は俺が食らう番だ。
喰らえ、全てをーー燃え尽くせ。
「っ!?なに?!俺の繭がっ、燃えてるだと?そんなはずっ、」
怪人の焦った声に、口元を上げる。
苦しんで死ね。
「うおおおおおおおおッ!!!!」
俺の叫びと共に燃え上がる繭。
その先へと黒い炎は何本もの糸を伝い、怪人を襲う。
逃しはしないーー
「うぐあああああ!?!?」
感じろ、生き地獄をーー
滅びろ、生を望みながら。
お前らの苦痛の声が、姉への捧げ物さ。
「討伐、完了ーー」
黒焦げになった怪人を踏みつける。醜いな‥。何もかも‥。
俺は決して、お前達を逃しはしないーー
『お疲れ様、蓮。実験データは取れたわ。Sランクでも通用するわね‥。さすが私のスーツちゃん!ヒーロー共が集まってきちゃうし、そろそろ退散しましょ。』
「ああ‥」
飛鳥から渡された黒いヒーロースーツ。
俺の人生の全てを変えたもの。
待っていてくれ姉ちゃん。
俺が必ず、
姉ちゃんの仇を討つからーー
ダークside end‥
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