第21話 どこにでもいる、普通の女の子 The girl was just …… (第一章 完)
「やっぱり疲れてる時にはさ、甘いものを食べないとね」
イートインスペースでエクレアを
「でもホントにセンパイはよかったの?
「嫌いなんだよ、甘いものは」
「なんで?」
「虫歯になるから」
冗談でしょ? とエリは笑った。もちろんそのつもりだったけれど、僕は
それからコンビニを出た僕らはエリを送って行くために基地へと引き返す道を歩いた。
もしかすると、それはエリもおなじだったのかもしれない。
「……ねえ、センパイ」と、
「なれるって、何に?」
「——
「それはまた、大きく出たね」
「
その言葉通り、
「……無理、だよ」
「どうして?」とエリは言った。「どうして無理だって思うの? そんなの、やってみなくちゃわからないじゃない」
その声に込められた感情に僕は気づけなかった。だから僕は不用意にも言葉を続けてしまった。
「風戸アンリは特別だったんだ。
僕らが必死でオールを漕いで進んでいる
天才。
それは神に選ばれた特別な存在を指す言葉だった。
「……バカみたい」
けれど
「風戸アンリは特別だから無理? 天才だから誰も追いつけない? ……ふん、
いつもの
「——特別だから何だっていうの? あなたたちがそんなふうに彼女を見るからっ! 彼女はすべての責任を背負ってしまったんじゃない!」
止まらない勢いのままにエリは叫び続ける。
「——風戸アンリはぜんぜん特別なんかじゃなかった!
いつのまにか
「……好きな男の子のことで思い悩むような、普通の、どこにでもいる一七歳の女の子だったんだから……」
彼女の静かな叫びは高く、高くこだましていく。しかし
「……だけど」と、彼女は最後に小さな声で呟いた。「だけどセンパイなら……センパイだけは、わかってると思ってた。あの人が一番信頼していたあなたなら……」
「……」
非難の感情がハッキリとした風となって僕の胸に届いた。それでも僕は何も言葉を口にしなかった。
杉屋町エリはそんな僕から顔を
「……ごめん。きょうは先に帰るよ。……訓練、付き合ってくれてありがとう」
「……ああ、気をつけて」
走り去っていく杉屋町エリを見つめながら、僕は不思議に思った。
いったい、どうして彼女はそんなにも風戸アンリのことを理解しているみたいに話すんだろう。彼女にとって風戸アンリという存在は
だけど確かに彼女の言う通りだった。
僕らは風戸アンリに全てを頼り切っていた。
でも、そんなことはエリに言われるまでもなくみんな理解していた。僕が特別だと言ったのは、あくまでも彼女の持つ才能に関してのこと。彼女が普通の女の子だったことを僕らはみんな理解していた。
理解していたからこそ、彼女がいなくなった後の僕の世界からは
風戸アンリを特別にしていたのはこの世界じゃない。ほかでもない、僕たちだ。
〝魔王〟を倒すことがたとえ彼女にしか
いったい僕らは……僕は、どれだけのことを彼女に頼りきっていたのだろう。
彼女がいなくなってからの日々は、まるで三十枚の
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