第12話 〝G〟討伐作戦
午後五時三十分。僕とエリはあらかじめ決められたポイントへと移動し、作戦決行の合図を待っていた。
降り続ける雨は僕らの視界を
本来なら
しかしいついかなる時に
「準備はいいかい、エリ?」
僕は最終確認のためにエリに
もうまもなく
先の様子から
しかしエリは
「もちろんいつでも大丈夫! なんでも来いって感じ!」
ぐっと両の
むろん彼女は〝G〟を
普通ならここまでの急激な態度の変化に、現実逃避をしているのか、あるいはなにか危ない薬でも飲んだのかと疑うところだけれど、しかし事実もそう遠くはない。
僕も受けたことがあるけれど、アレは本当に凄い。
しかしどんなモノもそうであるように、正しく使えば心強い武器になる。
あくまでも一時的にだが、今のエリの目にはゴキブリの姿がエメラルドのような輝きを放った
未来のエリを
『——あー、こちらラッキー
「こちらラッキー4、了解した。アウト」
通信を切るとすぐにエリが声を掛けてきた。
「いよいよ出番だね、センパイ。どうする? もう強化しとく?」
「ああ、頼むよ」
「おっけー。じゃあ行くね——」
と、エリはさっそく
強力なものになればなるほど詠唱は長くなり、動物型の〝残滓〟を
しかしその間、魔法使いは完全な無防備になってしまう。通常時であればどんなに時間が掛かろうが良いけれど、〝残滓〟との戦いでは致命的な
だからこその僕ら〝
とはいっても、強力な力を持った〝残滓〟の前に出ることは、魔法使いではない僕らにとってまさしく自殺行為でしかない。いくら
ゆえに僕らもまた魔法によって
——魔法使いと騎士。
まるでおとぎ
「……ふぅ、よし!」
詠唱を終えたエリは
「——〝プリバラム〟」
僕の身体が淡い光に包み込まれる。身体に力がみなぎっていくのが感じられた。
「ありがとう」
「うん。だけど無理はしないでね、センパイ」
「大丈夫、わかってるよ」
それから僕は
そして、全ての準備を終えたところで、――〝G〟が視認できる位置にまで現れた。
「うっ……」
「あはは、綺麗!」
実物を目にして多少の嫌悪感を抱く僕に対して、エリは狂信者のように笑っている。どうやらきちんと催眠が効いているらしい。
効きすぎて突撃していったりしないか心配になるが、しかし
詠唱を始めたらしいエリの気配を背中で感じながら、僕は〝G〟と
〝G〟は自分が
僕は気を引き締める。これからは一瞬の油断も許されない。油断した先に待つのは死だけだ。
僕は自分の役目を心に言い聞かせる。
〝G〟を
風が
「——GYAAAAA!!!」
言葉にならない
〝G〟の繰り出す連撃を僕は余裕を持って
だけど油断することなく僕は気を張り続ける。ここは戦場。何が起こるかわからない場所。格闘技の世界でだって、一発のラッキーパンチで勝敗が逆転するなんてことはザラにあるのだから。
背中ではエリが集中を高めていくのを感じていた。
エリの実力であれば、昆虫型の〝残滓〟を倒すための魔法を放つための時間は五分もあれば
十月の冷たい雨が
どれくらい攻撃を
「――離れて、センパイ!」
「ッ!!」
声に反応し、慌てて
「――〝エア・ゾ・ゲイル〟!!」
爆風が広がった。衝撃が
「ぐっ」
痛みに息が漏れた。しかし僕はすぐに身体を起こして立ち上がる。まだ決着がついたわけではない。
だけどそれは
衝撃が収まったあと、地面には、圧縮された〝G〟の
「……やり過ぎだよ、まったく……」
やはり生理的嫌悪感を
文句を言いたくなるが、けれど〝残滓〟を倒した事実に変わりはない。僕は
「お疲れ、エリ。さすがの威力だったよ。もう少しで僕も巻き込まれるかと思ったけどね」
「……」
しかしエリは僕の言葉に反応せずに、魔法を放ち終えた格好のままじっと
「……エリ?」
聞こえなかったのかと思い、もう一度声をかける。
やはりエリからの反応はなかった。
「——おいエリ! どうした!? しっかりしろ!」
「おい! エリ! くそ——」
即座に端末にむかって叫んだ。
「——大変だエリック!! エリが倒れた!」
『落ち着いて。すぐに
僕とは対照的に、エリックは冷静に指示を飛ばしてくる。
僕は
そして彼女の手を取りながら、
「目を開けてくれ、エリ!」
僕は祈る。彼女の無事を。祈るべき神に一度は裏切られながらも、しかし僕にはそれに祈ることしかできなかった。
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