第2話 結婚式の招待状
世間的に一流と呼ばれるような大学を出た後、小さな劇団に入った。
俳優になる夢のためなら、世間体なんてどうだってよかった。
買い物の帰り、薄汚れたポストを覗く。
珍しく入っていた郵便物。
真っ白な封筒をひっくり返す。
差出人は高校の同級生。
何か懐かしい気持ちになって、いつもより軽い足取りで錆びた階段を上る。
油が切れてギギギと音がする重たい扉を開いてすぐ。
靴も脱がずにそいつの封を切る。
中身を出してすぐに、乾いた笑いが響いた。
いつからだろう、他人の幸せを素直に喜べなくなったのは。
自分のやりたいことをすることが。
夢を追うことが幸せだと思っていた。
それなのにどうしてだろう。
いつからか他人の幸せは刃物みたいで。
触れれば切れて、ドロリと生温かいものが伝う。
気持ち悪い生温かさに吐き気がする。
次の瞬間には、ごみ箱の底に転がったそれ。
そうすること以外のこの吐き気を鎮めるすべを、俺は知らないから。
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