空耳地獄

「ねぇ、それって悪鬼羅刹あっきらせつよね?」

「あ、分かる? それにほら、もれなく百目鬼どめきなんだなーこれが。

百目ひゃくめって普段持ちにいいからさ」

うなず地獄じごく。……ああ、旦那だんなへのひたい烏帽子えぼしね?」

「YES」


「おかえりなさい、この化け物。

まずはしょくパンを食べなよ。

落ち着いて食パンを丸のみにして、

かわいた口で、早口言葉をくといいわ」


生麦なまむぎ生米なまごめこめこめこめ

身の毛もよだつ米、米、米

両手にしなびた稲穂束いなほたば

背にはほろびた米俵こめだわら

頭の中ではうじおど


怖ろしいね、お米

怖ろしいよ、お米

どこもかしこも米つぶだらけ

米お米、米お米、米お米


米糠こめぬかにまみれた魑魅ちみ魍魎もうりょうが、

調子を取ってうたうのは、

年貢ねんぐおさどきのドキドキ感

働かざる者はみずからがかてになるべし

米搗こめつ米搗こめつき、おぼろ月夜づきよ正拳せいけんきなの~

整形せいけい外科げかクリニック

ああ、整形外科クリニック

迫り来る整形外科クリニック


米、米、米のそのひび

米、米、米の鳴る方へ

米、米、米の常軌じょうきいっしたそのねばり

米の説話せつわはしつこかろう

米の神話は近親相姦きんしんそうかんアイラブユー

米印こめじるししゃに構え、同族嫌悪どうぞくけんお精米演舞せいまいえんぶ

おどり、踊りいは怖かろう

賞味期限といっさい無縁むえん無縁むえん墓地ぼち

騒動そうどう最中さなかめし不味まず地獄のそのなげ

てんにまします米の神々よ、

我らの藁人形わらにんぎょうに声を与えたま


遠足えんそくは、遠足気分が抜けるまでが遠足だよ

パンは言わずもがなに含まれるさ

パンは人生そのもの、人生はパン祭り


前触まえぶれなくおとずれる、マッチばこごろしの夜

浮気とか、絶対に許せないんだけど

化けの皮は着たままでいてよ

逃げどくは、なんか許せないニャン

とりあえず逃げとけばお得ということがあるしな

闘争心とうそうしん皆無かいむ、我先に逃走し、夜逃げでわりうなかれ

食うならパンを食え、パンだ、パンだ、かわいいパンだ

おにぎりなどフランスパンで端微塵ぱみじんにせよ

殺せ米を、お米を殺せ、生かしておけばお前の子孫しそんはやばいぞ

おい待て、追いかけっこだけが大正解だと思ったら大間違いかもな

しなを作って微笑びしょうをうかべ、ビーナスぞうに化けるのも一つの手


の火をあなどるなかれ

すぐさま消したまえ火の用心

火のないところにお米は立たぬゆえに

「米一粒ひとつぶ一粒が輝いておるわい」をめっせよ

返りちは怖いって、背筋せすじがヒヤッとするとそれにじょうじてドキッとして、何事なにごともなければホッとするけれども

「まだ怒ってるの? あなたのジャムパンを食べちゃったこと」

「……よくもやってくれたな……! ……俺のかわいいジャムパンを殺しやがって!!」

罪滅つみほろぼしはバランス感覚やじろべえ、だから、したりがおで食パンをし上がれ

即刻そっこく心なしか窒息ちっそくし、お水(牛乳)飲み人心地ひとごこち

パン、パンを食う、つかえ流しの水(牛乳)飲みたさにパンを食う


米、米、米

楽しかろうな踊り炊き

嬉しかろうな踊り炊き

米、米、米の踊り炊き


米、米、米が踊りだす

米、米、米の踊り

米、米、米の食感しょっかん地獄


……うう……かろんじるのを仕損しそんじると、……物事ものごとを重く受け止めなきゃいけなくなる……(泣)

甘えるな、甘味料かんみりょうなんて言うなよ、言い方ってもんがあるだろ? おしおとかパンとかさ(怒)


「あなた食人しょくじん

「君の神経しんけいはいかれてる」

「あなた最近、なんだか地縛じばくれいね」

「……ああ、百鬼ひゃっき夜行やこうが足りてないのかもしらんね」

ユニゾンの横目づかいのエロティック

「いってらっしゃい、この人でなし」

「いってきます、……ああそうだ、今日はおにひとくちして帰るから、すこし遅くなる」

「YES。今日もなのね……」

「ごめんな。このひゃく物語ものがたりはもうしばらく続くらしいんだ。上役うわやく悪霊あくりょうどもが潤滑じゅんかつほっしているのさ。でも丑三うしみどきまでには化けて出るよ。やっぱり君の霊魂れいこんが一番だから」

れ笑いのタガ外れ。だけどね、そんな甘言かんげんに殺される私じゃない」

「……分かったよ……、お土産みやげに、君の好きな生首なまくびって帰るから、それでなんとか事切こときれてくれよ、成仏じょうぶつな。それで何味がいい? チーズ? チョコ? それとも抜舌ばつぜつ地獄?」

「ほざけ、この鬼畜きちくが。私をくびり殺す気? とにかく森羅しんら万象ばんしょうすべてにおいて、神頼かみだのみが一番よね。あなたの殺人さつじん教唆きょうさ後追あとお心中しんじゅうまっしぐら」

場当ばあたり地獄。すべては神のこころのままに。……それじゃあ、今度こそいってくるよ」

失念しつねん地獄。いってらっしゃいの顔面崩壊ほうかい忘れてる」

もち? おもち……。ギ、ギギギ。……ああ……持ちつ持たれつモチモチしてる。……みんな大好きもちき大会を、もちが次々とぶっこわしてゆく……。ギギ、ギギギ、ギギギギギギ――」

ほおずりずりずり、幽鬼ゆうきはじけて外連けれんだだもれゴスロリ地獄


走れ、走れ、われを置き去りに。食パンをヨダレ、いわんや唾液だえきまみれにしながらも

今はっきりと思いいたる、パン食い競争きょうそうは狂ってる

ただパンだけを寄越よこせ、きゃくせパンダは御免ごめんこうむる、こむらがえるのはお父さん菩薩ぼさつ


社会という荒波あらなみになんやかんやで夕暮れどきかねが鳴るなり逃げ帰る

……ぁ、……ぅぁ、……ぅあぁ、……ただいま……麻薬まやくのテスト中……本質ほんしつ聖典せいてんなり……、……マイ、テキスト……マイテキスト……、……マイテキスト……? ……チック、タック、……はぁ、……はぁ、……かん……つう……しゅく……ほう……

帰国きこく亡国ぼうこく刻一刻こくいっこく怨嗟えんさ恍惚こうこつエアコンに吹かれて遮二しゃに無二むにシャリ切り

「それでは米が死ぬぞ(凝視)」

「うるさいだまれ、さもなくばしゃべたまえ(二度見)」

「ならば傾聴けいちょう傾倒けいとうし、耳なし芳一ほういちごとくにメモになれよ。

心して聞け、地獄の大釜おおがま大飯おおめしらいというれ込みじゃ。

そしてもし可能ならば刮目かつもくして見よ。でなければ、その目いらぬか南無なむ阿弥陀仏あみだぶつ。片目えぐりて丸一つ、両目抉りて二重丸にじゅうまる、えらい、えらいぞ、どえらいこっちゃ花丸はなまる地獄は花畑はなばたけ

物言わぬ花だとて、手折たおられれば、『はなかんむり』がかんむり

花踏み外道げどう、息のまにまほのかなかおりに『ほの字』になりて、花諸共もろとも枯尾花かれおばな

枯死こし追憶ついおくのそのすべては、すべからく見ておくんなはれのれの

他方たほう、見ておくんなましのその生々しさは、やれ華々はなばなしくも、じっと凝視ぎょうしするのははばかれり

ほこ目蓋まぶた百花繚乱ひゃっかりょうらん十部じゅうぶきのなるままに

「でね? どうせ見るのであれば、頭の奥底にインサートした方がいいわ。その方がお得だし、頭がひらけるんじゃないかなぁなんて思うのね。ま、あんたの好きにするんだなあ、人権じんけんだもの。

というわけでございまして、

はい、デデン。それで駄目だめなら、はい、ジャジャン。最近の地獄事情じじょうをしかと見よ。

そして見るべきポイントは以下の通りです。

――『地獄』のふた文字には、一切いっさいの『門構もんがまえ』も含まれぬ――」


ここでいきなり警句けいくですよ。

1.悪筆あくひつしてまどわされることのなきように

2.幽霊ゆうれい文字はフィーリングでさばくべし

3.末番まつばんは夏休み中のため欠番けつばんです


天啓てんけい降臨こうりんてんてんてれつく、すってんてれつくすってんてん


うちめたる玄米げんまいおち武者むしゃは思いのほかにグロテスク、頭蓋ずがいの中は田園でんえん風景米所こめどころ古参こさんの米から順次じゅんじ熟成じゅくせい果実かじつでなくともましらざけにまっしぐら、赤面せきめん自家じか醸造じょうぞう古酒こしゅなりけり


……おお、神よ……これは余談よだんだか……『てんてん』というそのひびきの、なんとかわいらしいことか……(恥)


じるな、この恥知はじしらずめが。それよりも、言いたいことがあるのなら、はっきりと言えい。みなまで言わすな。死人しにんに口なしを否認ひにんせよ。

 もろみをすべてき出し、一切いっさいのゲロをゲロして楽になりて、極楽ごくらく浄土じょうどに遊びに来て早々そうそうに、火事場かじば馬鹿ばかぢから炊事場すいじばに押しり、顕現けんげんまえのウェルカムドリンクを腕尽うでづうばい取り、そしてすぐさまみずからで手酌てじゃくし、ホストの面子めんつ完膚かんぷなきまでにぶっつぶすのだ。ぶっつけ本番ほんばん編集へんしゅうなしのドキドキなま放送ほうそうでな』


……おお、米よ……おお、お米よ……おお、我らの得米とくまいよ……


……かしこみかしこみ感度良好りょうこう……おそれ多くも、大事なことなので二回言いましたぁ……


――地獄にあられる神々よ、ねがわくば、お米の一切いっさいほろぼしたまえ――


一粒も残さぬほどに

その一片いっぺんも残さぬほどに

そのぬめりさえ残さぬほどに

米のこびりついたお茶碗ちゃわん洗うの、……マジ嫌なんだわ……(NO)

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