真顔

おお、ゆたかなめぐみよ、リンゴやメロンやバナナやら、……ああ、そのすべてをべたい……

……おお、なんと脳内のうない幸福こうふくホルモンでたされることだろう

サンシャインの凝縮ぎょうしゅくされたフレッシュなまたたき、それはハピネス


……なんだか頭のなかが言いあらわせないような感じになってきた

言ってしまえばうまいってこと

もっと言ってしまえば超旨ちょううまいってこと

う前からこのさま、いかがなものか、それだけが問題だ

おう、なんという情景じょうけいだろうか、……地味じみに目に痛いようなカラフルカラー……

(……ああ、おうとも……二度見にもるがぬそのさまはまるで、パイナツプルのつらの皮の千枚張せんまいばり……いやさ「MATE」にあまんじるいぬ畜生ちくしょうのハッピーストレス丸儲まるもうけ、……どちらかといえばまよばし……)

ドギツイ思案しあん最中さなか、ふと子供の頃の憧憬どうけいが広がる、つくえというか食卓しょくたくのうえに


……上田さん小僧こぞうは、いつもいものをっていたっけなぁ……

おなじく小僧こぞうであった俺(……あの頃の俺はすでに吉田であり、いま現在も吉田で、おそらくこれからも吉田であろうな……)といえば、くすんだ色合いながらも充分じゅうぶんうまいミカンがせきの山であった

だがしかし、お菓子かしデザート、高級こうきゅうスイーツあまいもの

母のはっする「お粗末そまつさまでした」はつねにハッスルしていた……思いだすと、なみだが止まらないような気配けはいKANNZURU……、……そこにはいつも、熟練者じゅくれんしゃのテーブルクロス引きのようなさりない幸せがあったのであろうな……ひとつ、心のしこりといえば、その母に、ばしばし叱責しっせきされたことくらいのもの……


おそらく俺は幸せな子供であったのだ、ただ、ぼう高跳たかとびで宇宙うちゅうを目指すような高望たかのぞみが、俺のこましゃくれた足首を両手でつかみながら、ガクガクぶるぶるしていたんだ……

だからあの頃の俺は、……いや、かつての俺たる吉田小僧こぞうは――

『「まずにきこむ牛丼ぎゅうどんがこのでいちばんうまい」とわめらす異常者いじょうしゃれがまち支配しはいするゆめ

――に度々たびたびうなされた、しかもつゆだくで


でも大丈夫、それはもう昔のことだ、お菓子かしじゃなくて昔、だからもう大丈夫なんだ、人生すべてに意味があるという気休きやすめの言葉の最安値さいやすねねらいすます必要すらなく、けがらわしき偽善者ぎぜんしゃたちの「このあとスタッフが美味おいしくいただきました」などという戯言たわごとに耳をすまでもなく(……それがおそらく虚言きょげんであろうことをいたとしても……)、やっぱりなんか大丈夫なんだよストロング


死ぬほどつかれてるときは、イチゴ大福だいふくを死ぬほどいたくなるし、むしゃくしゃしてるときはケーキをお行儀ぎょうぎよくえずに、そこらのどろみたいにぐちゃぐちゃにしてしまうのはざらだし、たまにラーメンを無性むしょうべたくなるのは、いっそ食欲しょくよくとは別のなにかなんじゃないかと考えるのは犯罪はんざいじゃないし、大丈夫、大丈夫なんだよ、大福だいふく、大きな大福だいふく団子だんごまれた電波塔でんぱとう大福だいふくなんだよ、ぜったいに大福だいふくなんだよ


とおきに思う食欲しょくよくが、ひもじくも「バイバイ」と手を振っている

ひどく得心とくしん、昔の俺自身と臓器売買ぞうきばいばいするわけにはいかないさ、ひどくはらが鳴る

……ああ、生唾なまつばを、ごくりごくりと、飲みして、いとおかしくも、くすりともせず

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