履き物に籠城する意思

ああ、ほんとにうるさい!

この! 靴のなかの小石風情ふぜいの分際で!


それはそれとしてですね

いますぐ靴ひもをほどいて、私をここから出してくださいませんか?


事務的な、催促さいそく口調にイラついて、地団太じたんだドコドコ踏みまくる

いらえた、いらえた、足の裏の、その頑丈なこと!


私のおつむは小石の言葉わかりかねます

で、あるならば、おいわさんを寄越してください通訳に


水をかけられた焼け石の、その怒りの柔軟性には定評ありてさもありなん

軍隊崩れのなし崩し、ただ怒りっぽいだけというのは、ここだけの秘密

ひとつふたつ、そしてみっつ、秘密みっつでみつの味


赤ちゃんに、ハチミツ一樽ひとたる持ちぐさ

ハチミツがくさらないというのは、いいとしした大人だけの秘密ですが。それがなにか?

「永遠ですよ」と「死んでしまいますよ」を混ぜると、琥珀色こはくいろになるというのは公然こうぜん摂理せつりですが。なにか?


ダダダと駄々だだをこねるのは、明らかにやりすぎていて、なんというかもう、やれやれという感じで……

やや!? 「後悔は先に立たず」というややありがた迷惑な言霊ことだまが、一本道に立ちふさがって、仁王立ちで通せんぼ


……目に映る人みなに、そこはかとなく、「そこどけよ」って思う、底知れぬその心、素知らぬふりで済ます、澄まし顔で、それとなく、……だけど速攻で……


口をひらけばペチャクチャ言って、口をつぐめばおめめぱちくり

お喋り屋のさが寡黙屋かもくやには分からない

黙れよ! 喋れよ! うるせえよ! なんか言えよ!


屋号を叫ぶの鬼は外、屋号を叫ぶの福は内

屋号を叫ぶの蚊帳かやの外、屋号を叫ぶの胸の内


預言めいた預言口調のその預言、いっそ世迷言よまいごとというカテゴリー?


――あなたね、このまま永遠に歩き続けたら、足の裏の皮膚がぜんぶがれ落ちますからね?――


その前に足腰が粉砕ふんさいするというツッコミは逃げ腰でしょうか、もしそうならがた

自責じせき自責じせきと自身を叱責しっせき、それではまだまだ足りぬと

自身の悪いところを公募で集める流れ

どしどし? どしどしってなに? どしどしってなんだ?

改めて考えますと、その言語感覚の正気を疑うレベルの段違い


構ってちゃんにちゃんと構ってあげるのが

かまめしをおいしく食べる秘訣ひけつ

いえ否決です、それはない

おそらくそれは、ハニートーストとごはんをミキサーで混ぜ、それをそえて、くされたニャンコの死体をしょくすのと同義どうぎ


……オゥ、ベリーベリー、タイヤード……いい加減わかっておくれよ……


いいですか~、『人』という字はですね~、猫の口元に似ていますね~


パン! 今わたくし、何の脈絡みゃくらくもなしに、唐突とうとつに、猫だまし致しました。

はい、それは間違いのないことですが、わたくしはそれについて、一切説明するつもりはありません。パン! パン! パン!!


ああ、ちはやふる、……わんだふる……。おお、積載量せきさいりょうガン無視の、10トントラック迫り来る。パン、パン、パン! パン、パン!! 絶え間ないスパン!!


パン派とご飯派の不毛なあらそいに、点滴てんてき派が割って入ってき乱す

オラア! 手首出せや! 手首をさらせや、アホンダラア!! このクソがあ!


隣人愛りんじんあいのつまった飯盒はんごうとはいえ

それをがっちりと両手でホールドし

お隣さんの脳天に叩き付けるのは犯罪です

マゴウカタナキ犯罪行為ですオママゴト

マゴウコトナキ犯罪行為ですネコマンマ

……カタコト抜かしてんじゃねぇ……母国人ぼこくじんくせしやがってよ……


……つまり上記すべてを一言でいうならね……

――ネコマンマでおぼんだニャンコには、愛嬌あいきょう哀愁あいしゅう混在こんざいしている、それは、まぜごはんなんてあやふやな話じゃなくて、確固かっこたる事実としての、つまり、我々がお世辞せじをカスタムするようになる以前の、純然じゅんぜんたる祈りとしての言葉、そう、精米せいまい以前のまっこと自然由来の言霊ことだまは最高ってことなんだ、それがたとえジェスチャーだろうと黙祷もくとうだろうと、なにひとつ変わることはないってこと……、これって全然一言じゃないよ……、でも大丈夫、もうまんたい、もうたまんない、……やつれ死にかけたニャンコだろうと、まるまると太ったニャンコだろうと、……積載量せきさいりょうガン無視の10トントラックに馬乗りになられちゃあ、みんな同じようなもので、……そりゃあもうね……血みどろのネコマンマ以外の、何物でもないだろうさ……、パン! ……はっ!? 私は私? ここはここ? ……なんだ……ありふれた可もなく不可もなくごくごく平凡な通用運転の日常の世界じゃないの……、というか、小石がうるせんだわ、さっきからずっと……そもそも、どうやって靴のなかに入り込んだってんだよ……それがいちばんせないのさ……道端に転がる……小石風情ふぜいの……分際で……――

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