第6話 あかろもの
「このゴリラ女!」
「さっさと動物園に帰れ!」
まただ……。
また私は数人の男子にいじめられている。
最初は言葉だけだったものが、今では石が飛んでくるにまでにいじめは発展した。
(私って産まれてくる意味あったのかな)
そう思い始めてからだった。いじめがだんだんと痛くなくなってきて、苦痛に感じなくなった。
そう、私の心は死んでいた。
暗く閉ざされた心は、もう何色にも染まる事なく、ただただ、暗くなる一方だった。
そんなある日だった。
「お前らいい加減やめろよ!」
大きな声がすると思ったら、さっきまで私をいじめていた男子たちは頭にできた大きなたんこぶを押さえながら走って逃げていった。
「大丈夫? ごめんね、今まで助けられなくて」
私に差し伸べてくれた1つの光。
そのひとつの光は、私の心の闇を消してくれた。
私の心に灯る暖かい温もり。暖かい光。
あぁ、この時から、私は、隼人のことが好きだったんだな。
〜あかろもの〜
あれ……ここ……どこ?
「……隼人!!!」
「って、あれ」
長い目覚めから覚めたと思えば、そこは病院の病室だった。
「なんで、ここに? 隼人、隼人は?!」
まだ起き上がれそうにないので、隼人を探そうと目で病室の周囲を見渡す。
ふと、右手から暖かい温もりを感じたので、右手の先を見る。
「……隼人」
そこにいたのは、ベッドを枕にして、椅子にかけたまま寝る隼人がいた。隼人の右手は、しっかりと私の左手を握っていた。
「隼人、ありがとう」
隼人は私の言葉に反応したのか、返事を返すように「…うん」と寝言を囁いた。
抑えきれない思い込め、私は隼人の右手をぎゅっと握り返す。
「ありがとう、隼人」
〜あかろもの〜
今日は、僕と佳奈との結婚式当日だ。
僕達はなんやかんやのなんやかんやあったけれど、出会った頃から結ばれていたかのように、糸は途切れることなく距離を短くし、やがて、2人をぱぱとままにすることができた。
……ん?
「隼人ぉおぉぉぉおぉぉ! 女の子の名前何にするか決めた?!」
「準備完了だからって俺の部屋入ってくるなよな!
お前は大人しくしてろや! 妊婦さんだぞ! 」
「妊婦さんなんて……改めて聞くと照れるわね。うふふふふ」
「分かったから! はよ、帰れぇぇぇ!」
「どこにぃぃぃぃ?!」
「ぎゃーーーーーーー!!!」
「あなたは、この、変な、パッとしない男性のことを、愛で……マチガエタ。あなたは……」
「おい、しっかりしてくれよおじさん……」
「誓います!」
「おい!」
「なんで? 誓わないの? 誓うよね?」
「く……。ち、誓います。」
「声が小さい! もう1回!」
「誓います!」
「よろしい!」
何だこの結婚式は。
まぁそれも俺ららしくていいかもな。
なんて言ってみる。
「それではー、誓のぉ、き、き、キスを……/// してくださぁい」
「なんでお前が緊張してるんだよ」
「隼人」
「どうした」
「こっち、見て」
「お、おう……って!」
誓いのキスは終わり……のはずだった。
「おぎゃー! おぎゃー!」
頭の血が一気に引くのを感じる。
「佳奈、お前……」
「どうしよう隼人、産まれちゃったよ!」
「誓のぉ、きすをぉ……」
「どうしよう隼人!」
「どうするって、こんな話聞いた事ねーよ! 結婚式で子供出産するなよ!」
「そうじゃなくて!」
「なんだよ!」
「この子の……名前は?! どうするの?!」
「いまはそんなばぁいじゃあ、ねぇだろぉ!」
「おぎゃー! おぎゃー! おぎゃー!」
「ねぇ隼士」
「なんだよ!」
「この子さっきから、おぎゃーおぎゃー言ってるわよ」
「当たり前だろが! まだ産まれたて出来たてホヤホヤゼロ歳児生後1分のミラクルボーイだぞ!」
ってまさか、佳奈。
「その子の名前、まさかだよな」
「おぎゃー。おぎー。おぎ……。」
あぁ、だめだ。
ここはもう、佳奈に任せよう。
「芽菜! めいななんてどうかな!」
「どっからそうきたのぉぉぉぉ??!!?!!」
あ、もう、だめ、頭が……。
バタッ
こうして僕は救急車に搬送され、芽菜も無事、体に異常はないだとか。
こんなに疲れる話をお風呂場で作ってくれた作者にも感謝だな(自画自賛の極まり)
その後も芽菜はすくすく育っていき、今では立派な高校一年生です。
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