第4話 うみいろ
夏は好きだ。
夏が好きだ。
夏しか勝たん!
夏に恋した。
君に恋した。
......君が好きだ。
~あかいろ~
「佳奈、久しぶり」
私の目の前に、彼は突然現れた。
彼との再会は、私の心の奥に眠る何かを揺るがせた。
その日から彼を見ると、急に鼓動が早くなるし、顔の周りが熱くなっている感じがする。
その"もやもや”がぎこちなくて、それをどうにかしようと、彼に体当たりをする。
「猪突猛進!!!」
ぐきっ♡
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「私の愛の告白はどうだ! 隼人!」
隼人は背中を抑えたまま倒れている。......なんか。
「かわいいいいい!!」
「お前の脳みそお宝鑑定団にでも出荷させたるわ!」
「それって......」
「なんだよ」
「私のこと心配してくれてるの?!」
隼人は静まり返る。
機嫌でも悪くしたのかと心配になる。
心の中で少し思い始めている《私の隼人から見た存在》を。
「隼人......」
「ごめん佳奈」
聞きたくない。
「俺にもう」
分かってる。なんて言われるか。でも......。
「かかわらないでくれ」
隼人とずっと、そばにいたい。
そんなの叶うはずもないんだ。
隼人は私に二回目のチャンスをくれた。
隼人は私の目の前に現れた。
現れてくれたんだ。
なのに......どうして。
私は、こうもして隼人に嫌われる素振りをするの。
心の奥にあるもやもやを消すため? なにそれ。
そんなの私の自己満にしかならない。
そういうのは他人とは長く続かない。
それを私は《一回目》で知った。
はずだった。
なのに......どうして。
「私は隼人から、自分から、逃げるの」
「佳奈、久しぶり」
「......え、なんで」
「なんでじゃないだろ、お前お願いしてたろ」
私の視界がだんだんと涙で濁ってくる。
そのおかげで隼人を、少しは直視できるようになる。
「佳奈、目そらさないで」
私は無意識に、隼人から目をそらしていた。
やっぱ、今の私に、隼人を見る資格なんて。
「隼人、私の願い、なんで、分かったの? あれ、七夕のやつだよね、イオソにあった。あれに私、『隼人と仲直りがしたいです』ってしか書かなかったよ」
隼人はふと笑う素振りをし、私の涙をぬぐいながらこたえる。
「佳奈、気づいてなかったの? 佳奈いつもさ、文字とか書いた後にさ、自分の名前書くよな。幼馴染なめんなよ」
「うぅはやとぉ」
ただ泣いているだけじゃいられなくて、隼人にしがみつく。
隼人は私の太陽だ。
隼人は私よりも偉くて、今なんて大学に向かって猛勉強している。
そんな隼人からしたら、私なんて、太陽の熱に蒸発しちゃう、海なんだろうか。
私は忘れない。
あの日、隼人と一緒に見た、あの海を。
夕日に染まる、うみのいろを。
佳奈はある日突然、姿を消した。
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