第9話 来る者拒まず、去る者追わず
透さんと次に会えるのは2週間後の水曜日になった
3時のおやつにチーズケーキを嗜む予定に
今回はしっかりとしたデート?
ということで少しおめかししていこうと思う。
髪も染め直して、ネイルも新しくしよう。
新しい服も買っちゃおうかな。
仕事帰り、会社近くにある百貨店に寄った。
透さんはどんな服が好みだろうか。
綺麗め?可愛い系?それとも個性的な感じ?
うーん、どうしよう…
でも、歩いて行くから靴はヒールじゃなくて、バレエシューズかスニーカーになりそうだから…
結局淡い赤紫のワンピースにした。
彼が好みそうな服よりも自分が着たい服の方がいいと思ったからだ。
肩のパフスリーブと袖の透け感がなんとも可愛い。
胸元には細めのリボンがあるけど色味的に甘すぎず着こなせると思う。
ちょうど私に合うサイズが在庫切れのようで、取り寄せてもらうことになった。
来週に届く予定。これなら間に合う。
ちょっと高かったけど、我ながらいい買い物をしたと思う……!
外に出ると夜も結構ふけていた。
夢中になって時間を忘れていたみたい。
足早に駅に向かう。
電車が来る音がして、慌てて階段を登る…
ふーっ。ぎりぎりセーフっ。
席もちょうど空いてるし、ラッキーだ。
遅くなってしまったから少し車内が空いている。
やった、座れる………!
座席に腰掛けようとしたその時、電車が動いて、私は転びそうになった………
あれ、痛くない。
大丈夫?
近くにいた方が私が転ばないように支えてくれたようだ。
こちらこそ、すみません…
あ、ありがとうございます。
…て、あれ?もしかして薫君?
やっぱり満だよね笑
久しぶり。
本当に、危なっかしいところは変わらないなぁ笑
久しぶりだね。
元気だった?
流れで隣に座ることに…
元気、元気。
満も元気そうだね。
うん、元気。
この後、もしよかったらうち来ない?
久しぶりにあったから、飲もうよ。2人で。
あー……行こうかな。
明日もあるから、そのまま泊めて。
了解。
そうと決まれば、コンビニでおつまみ買ってかなきゃだな!
薫君はいわゆる仲の良い友達兼元セフレだ。
大学時代に知り合った友達の友達で、家も近いし、お酒に酔った勢いで始めた関係だけどなかなか悪くない。ちなみに年は同じ。
お互いに彼氏彼女ができようとも、特に関係は途切れない。
だって、お互い、体の浮気は浮気じゃないと思ってるから。
浮気って、心が浮つくから浮気でしょ?
っていった時、
俺もそれすごいわかるって言ってたし。
仕事が忙しくなってから、久しく会ってなかったから、何か新鮮味を感じる。
薫君もスーツ姿だから、仕事帰りかな。
汗の匂いと、ほのかに香る香水がこれからの展開を示していた。
薫くんの家に着いた
満、お風呂先入ってて、俺片付けたり、買ってきたもの用意するから。
あー、服は……
はい、これ。
ダボっとしたスウェットの上下を手渡される。
ありがとう。
シャワーを浴びながら少しだけ透さんのことが頭をよぎる。
…でも、一瞬だった。
お風呂どーも。
大きすぎてズボンいらなかったから置いとくね。
いい眺め笑
おじくさいんだけど笑
俺もお風呂入るからちょっと待ってて。
少しの間1人の空間。考えを巡らす。
私ビッチかしら?
少なくとも、今まで付き合ってた人は本当に好きなわけじゃなかったし、かと言って普通にセックスはするけど、愛がないよねって冷められたらとか、浮気してるでしょって疑われたりとかなんかめんどくさかった。私から去るものは一切追わない。
薫くん以外にもセフレは数人いるし、一般的にはそう呼ばれてもおかしくないのか笑
けど、割り切った関係を楽しんでいるだけなのにどうして本当には楽しめないんだろうね。
ねぇ、満。また前みたいにあれやってよ。
私が一度やったプレイが大層お気に入りのようだ。
薫君がお風呂で呼んでる。
幸いにもまだ、出て少ししか経ってないから髪は濡れている。
仕方ないなぁ…と思いつつ、薫君の癖に付き合う。
ソファでスウェットと下着を脱いで洗面所へ行くと、やはり彼のシャツがあった。
それ、新しいやつだから笑
はいはい。
ボタンをしっかり止めて風呂場へ入る。
えっち。
薫君こそ笑
ど変態のくせに笑
シャワーをかけられて肌が露わになる。
私はもう濡れている。
彼は鎖骨にキスをする。
それが行為の始まり。
今はもう何もかもどうでもいい。
来るものを私は拒まない。
お風呂場は声が響いて、クラクラする。
聞こえるのはシャワーの音と私の吐息。
彼とは体の相性が最高だ。
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