第6話 帰路で岐路

あなたね、近々いいことあるよ


友達に恋愛サイコ認定を受けた帰り道。

路上の占い師のおばさまにそう言われた。

意味深な笑みを浮かべながらおばさまは続ける。


今まで、あまり男運なかったって思ってるでしょ。


え、、、あ、はい。


それね、あなたの見る目がないんじゃなくて、ただ相性が悪かっただけなのよ。

さっきさ、向かいのお店で愚痴ってたでしょ、

友達に。

結構大きな声だったから私聞こえちゃったのよ。

あなたね、神様も仏様も恋愛のスペシャリスト様もいないのよ。

神は死んだし、仏だって俗世にはいないんだから。あと、自称恋愛のスペシャリストとかいう奴らは大抵嘘ウソ、信じちゃいけない。

もちろん、私のことも今、この人胡散臭いなぁ、って思ってるかもしれないけど、良いことがあるのはホントのことよ。


どれくらい、いいことなんですか?


うーん……

ちょっと待ってね…

えーっと、

今までよりもあなたが成長できるのが一つ、

相手に振り回されるのが一つ、

人生変わっちゃうくらいのが一つ、

あるって出てるわ。

元気だしなさい。過去なんてもう終わってしまったことにしがみつかないで、前を向きなさい。


このおばさま、私と友達の会話どこから聞いてたんだろう…

まぁ、そんなことはどうでも良いや。


…ありがとうございます

これって、占ったら料金発生しちゃうやつですよね?

お代とかっていいんですか?


あぁ、いらないわよ。

私が勝手に話しかけて、勝手に占っただけだから。

それに、あなた自分が思ってるより相当こたえてるわよ。

元彼さん?とのこと。

顔、ひどく暗いし。


お化粧とマスクで誤魔化したつもりだったのに…

お節介もいいところだと思いつつも感謝を述べた。


また、何かあったら来なさいな。

なんか、あなたみてると昔の自分思い出すの。

ここでやってるから、いつでもどーぞ。


世の中には変わった人もいるものだ


週末の山手線はかなり混み合っていた。

最寄駅から歩いて十数分。

一人暮らしに最適なワンルーム。私の城。

家に着き、浴槽を洗ってお湯を張る。

その間にメイクを落として部屋着に着替える。

お風呂が沸くまではベットに寝転んでネットサーフィン…


でも、今日はなぜだか占いのおばさまの言葉が頭から離れない。

あのおばさまどこかでみたような…

にしても

今までよりもあなたが成長できるのが一つ、

相手に振り回されるのが一つ、

人生変わっちゃうくらいのが一つ、

かぁ…………


これははたして良いのやら、悪いのやら。

でも良いことだってあのおばさま言ってたしなぁ。私自身、占いに全く興味がわかない性格だから、

簡単には信じられないことだし、普通の人からしても、信じ難いことだろう。

忘れるのが吉!


その日は、いつもより熱い湯船に浸かって、ちょっと高めのパックなんかしちゃって寝た。


次の日、

私は気づいたら一目惚れ、

いや、二目惚れをしていた。


ここで話は序盤に戻る。


そう、気づいたら落ちていたのだ。


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