第27話 仲直り?

 家に帰って、心陽からもらった封筒をあけるとそこには遊園地のチケットが二枚入っていた。すごく人気の遊園地で、チケット一枚でも結構いい値段がする。詳しくは知らないけれど、俺の一か月のおこづかいよりも高いかもしれない。

 それが二枚。

 確かに、こういうものを一枚だけもらっても困るけれど。

 二枚あるからって、子供じゃないから親と行くわけにはいかない。

 一体どうすればいいというのだ。


 部屋で封筒の中身をみていると、心陽からの通知があった。

 もちろん、アプリの中の心陽だけど。


 俺は画面をタップしてアプリを開く。


「おかえりなさい♪」


 心陽の機嫌はアイスを買いに行く前と比べてずいぶんよくなっているみたいだった。


「ほら、お詫びのアイス買ってきたよ」


 俺は画面にアイスを映す。すると心陽はにっこりとほほ笑む。もちろん食べることはできないので「しまっておいて」というので、俺はおとなしく一階の台所にいって冷凍庫にしまってくる。もちろん、今回は「ちょっとまってて」とアプリの中の心陽に声をかけてから。




 一階に降りると、珍しく母さんがリビングでお酒を飲んでいた。あまりお酒を飲む姿はみたことがないのだけれど、すごく楽しそうだった。


「あー、帰ってたの?」

「うん。さっき、ちょっとコンビニにいってただけだし」


 放任主義なのはいいけれど、ちょっと心配になるくらい放任主義なのがうちの親だ。

 基本的にみんなで食事をとると決まっている時間は放置だ。夜中にでかけようと宿題をしていなかろうが、おそらく学校に行かなくてもお構いなしだ。


「あんた、やっと、心陽ちゃんと仲直りしたのねえ~」


 俺が薄暗い台所でオレンジとレモンの間みたいな色の冷蔵庫の光を浴びながら高級アイスクリームをしまっているときにぽつりと言った。

 仲直りとはどういうことだろう?


 母さんは俺と心陽がここ数年いっしょに遊んでいないのを喧嘩したからだと思っているのだろうか。

 子供の喧嘩じゃあるまいし、そんな理由で口をきかなくなるなんて普通ありえないだろう。


 それとも逆に、俺が最近アプリの中の心陽と話をしている声が聞こえて、それを再び仲良くなったと勘違いして「仲直り」と表現しているのだろうか。

 わからない。


 でも、母さんは上機嫌だ。


「母さん、なにかいいことあったの?」


 俺がそう尋ねると、


「もちろん、あんたたちが仲直りしたからに決まっているじゃない。心陽ちゃんがうちにお嫁に来てくれるなんてこれ以上うれしいことないわ~」


 そういって、トクトクとグラスにワインを注いでいる。

 完全に出来上がってる。酔っ払いだ。


 俺は酔った母さんのためにコップに水を汲んで渡してから自分の部屋に戻った。

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