第25話 コンビニで再会
コンビニにアイスクリームを買いに行く途中、マリ先輩からメッセージが届いた。
『今日は楽しかったよ。ありがとー!』
そのあとにすぐ、かわいいウサギのスタンプが押されている。
どことなくマリ先輩に似ているウサギでちょっと愛しくなる。
なにかマリ先輩が気に入るような気の利いたスタンプを送ろうと探していると、追加でもう一件メッセージが送られてきた。
『今度、水族館いかない?』
俺はびっくりして、思わず手元のスタンプが送信されてしまう。
奇しくもそれはイルカのスタンプだった。
『行きます!』
俺は慌てて本文を送る。
『じゃあ、明日また昼休みに』
今度はおやすみーと寝ているくまのスタンプが送られてくる。
なんかほのぼのしていて可愛らしい。大人っぽくて自分の世界をまっすぐみていると思っていたマリ先輩の意外な一面を知れてうれしかった。
そんなやり取りをしているとコンビニにあっという間についた。
俺は、目的のためにアイスの棚に向かう。
「一番高いやつ」ってどれなんだろう。俺たちが子供のころは決まっていたけれど、最近はなんかいろいろ高いものがあってよくわからない。
選ぶのに時間がかかってやっと一番高いアイスを見つけ出したとき、
「カフェラテお願いします」
と聞き覚えのある声が聞こえた。
心陽の声だった。
振り返ると、本物の心陽がレジの前にいた。
ちらりと見えた心陽は昼間みたときとは、違う服装だった。なんか白っぽくて、昼間より柔らかい印象だった。
俺はなぜだか、レジから死角になるように数歩下がる。
画面の向こうの心陽のことを思い出すとなんだか直接、顔を合わせるのが気まずかったのだ。
それに昼間の心陽はすごくかわいかった。学校で人気なのもわかっていたけれど、それ以外、心陽のことを全然しらない人でも振り向くくらいの美少女なのだ。どうせ、きっと俺のことなんて覚えていない。
目があったときどうすればいいかわからないし。ましてや今更はなしかけることなんてできない。
だけれど、心陽は一向に帰る様子がない。
このままでは俺の手元のアイスが溶けてしまう。このコンビニで一番高いアイスが。
しかも、これは俺が食べたいのではなく、心陽(アプリの中だけど)におねだりされたものだ。
アイスを買ってきてといわれて、溶けたものを持って帰ったらもったいないし子供のおつかいよりもひどい。
きっと失望されるだろう。そもそも、心陽へのお詫びのしるしとして買うわけだから。
でも、レジのあたりにはまだ心陽がいるかんじがする。
俺はいったいどうすればいいんだ……。
ええい、しかたない。
俺はさすがに、このコンビニで一番高いアイスをもっているので、急いでレジに向かった。
心陽はというとレジではなく、レジのよこのコーヒーサーバーの機械の前で何やら選んでいる様子だった。
会計をすませて俺は急いで家に帰ろうとした。
できるだけ心陽の方をみないようにして。
視線があったりしないように。
LEDライトで照らされるつるつるの磨かれた床だけを見つめる。
そういえば、昔このつるつるの床が怖かった。
氷みたいに滑って転んでしまうのじゃないかって思っていたから。
あと二歩で自動ドアが開く、そんな距離まで来たときだった。スマホの通知音が鳴ったのは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます