第17話 ジャスコに行こう
地元のショッピングセンター。
母さん曰く、『ジャスコ』に行く。紫っぽい看板のそのショッピングセンターのどこにも『ジャスコ』どころか『J』の文字もないのになぜだか母さんは『ジャスコ』と呼ぶ。
何を略したら『ジャスコ』になるのかさっぱり分からない。
ただ、最近その謎が解けたのは妹のおかげで何か分かった。どうやら昔は、そんな風に呼ばれていて、ショッピングモールというより衣料品が変える巨大なスーパーだったらしい。
スーパーでデートって、どこの中学生だよと心の中突っ込みつつ、俺は、スマホを片手に地元の紫色の看板のショッピングセンターにやってきた。
まあ、他人から見たらデートではなく俺が一人できているので、お一人様水族館より買い物という大義名分がある『ジャスコ』の方がずっと気楽だ。
『ジャスコ』にいってくると言ったら、母親からお遣いを頼まれたが交通費も浮いたのでまあ、ラッキーだった。
「さてと、どうしようか?」
心陽の声が耳元でしてくすぐったい。
今日は流石に人前なので、歩きスマホにならないように画面を見つつイヤホンを使って会話をする。
今日のために、わざわざ有線のイヤホンを選んだ。ちょっとガラが悪いかネクラに見えそうだけれど、そうでもしないと独り言をいっている危ない奴に見えてしまうのではないかと思ったから。
ぶらんと線が耳から垂れ下がるのは不格好だけれど、途中にあるマイク部分をもって何か話していればこの人は誰かと電話をしているんだなって思ってもらえる。
「心陽は何がしたい?」
「質問に、質問で返さないでよ。マイナス20点」
「でも、俺は心陽を楽しませたいから」
「ううん、なかなか良い返しね。さっきのマイナス20点はチャラにしてあげる」
いがいとチョロい。それとも俺の返しが上手くなったのだろうか。
とりあえず、心陽がちょっと喉が渇いたというので、フラペチーノでも飲もうかとチェーンのコーヒー屋に向かう。
フラペチーノっていっつも噛んだりして、変な意味の言葉にしてしまわないか不安だ。特に女の子の前では。
注文もやたらと長そうだし、可愛い店員さんの前で「フ〇ラペチーノ」っていってしまったらどうしようと思うと緊張してきた。
別にこの手の店に不慣れなわけではないけれど、大抵はコーヒーを注文する。だけれど、今日は心陽の希望を聞くとしたら、きっと俺が飲む結果になったとしてもフラペチーノを頼むべきなんだ。
そうだ、デートではフラペチーノ。
これが常識。デートのルール。
だけれど、コーヒー屋もといフラペチーノ販売店のその店には長蛇の列ができていた。
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