第15話 少女マンガのようなサプライズ
「〈俺〉君、今日のデートはどこに行くの?」
「それは行ってみてのお楽しみ」
心陽と随分スムーズに会話できるようになった……つもりだった。ちょっと恋人っぽくもあり自然な会話ができている。
だけれど、画面の向こうの心陽はまた手をバッテンにして、だめ出しをする。
「はい、それはダメー。女の子とのデートの答えとして不適切」
何がダメなのか分からない。
小学校の頃とか少女マンガでこんなやりとりを見た気がするのだが……、
「女子ってサプライズが好きなんじゃないの?」
俺が反論のために言うと、心陽はダメだこりゃと首をふる。
「もちろん、サプライズは大事だよ。でもね、時と場合によるの」
「時と場合?」
「そう、たとえばね。今回はワタシたちにとって初めてのデートでしょ?」
そういって、画面の向こうの心陽は俺のことをじいっと見つめる。綺麗な瞳がいつもよりはっきりと見えてドキドキしてしまう。
そんな俺のどきどきに気づいているのかどうか分からないけれど、心陽は言葉を続ける。
「はじめてのデートだとね、ワタシもドキドキしてるの」
そういって、自分の胸の前で両手を組んで、頬を赤らめる。
可愛い。
本物じゃないとわかっていても心陽のその姿はとてもリアルで可愛かった。
「それは、こっちだって同じだが?」
「はい、それが間違いの元です!」
心陽はさっきまでの頬をピンクに染めた初々しい表情から打って変わって溌剌とした美少女にもどる。
「女の子はね、デートのために前の晩から洋服とか考えるの。だけど、行き先が分からないとどんな服にするか決められないでしょ?」
あっ、確かに。そういえば、読んだマンガの女の子は思ったよりあるいたせいか新品のミュールを履いたせいか、その両方が原因かは分からないけれど、靴擦れを起こしていた。
もちろん、それがきっかけにデート相手の男の子におんぶしてもらって距離が近くなるってエピソードがあったけれど。
女の子としては、足がいたくてもいいだせないし。たとえ、おんぶしてもらってその場がなんとかなったとしても翌日からだって靴擦れの傷は残って痛いはずだ。
ふーむ。
俺が理解したと思ったのか、画面の向こうの心陽はにっこりという。
「それに、そもそもデート先のチョイスがまともかもしりたいからね」
そういって、ウインクする。ああ、幼稚園のころ、心陽はアニメのキャラクターの真似をしてウインクの練習をしていたっけ。さすがに今はできるようになったのか。
だけれど、心陽。それうざいぞ。ちょっと生意気なことを言った後のウインク。俺以外の前では絶対やるなよ。
っと、目の前のはあくまで心陽のデータをもとに作った偽物何だった。こうして会話をしていると、ついつい、そのことを忘れてしまう。
「水族館はどうでしょうか」
俺は明日のデート先を白状させられたのだった。
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