第11話 ワタシとの恋をはじめよう♡
「来てくれたんだ。ありがとう♡」
目の前にはバニーガール姿の心陽がいた。
もちろん、目の前というのは手元の画面だ。
こちらに向かって、微笑みながら手を振っている。
てっきり、いかがわしいサイトか何かの登録画面に飛ばされると思っていたので拍子抜けする。
というか、これテレビ電話?
よく分からない。
画面の向こうでは、心陽が普通に喋っている。
この前、助けたよりリラックスして親しげだ。
バニーガールなんて普通なら恥ずかしい格好をしているのに、そんなことは気にする様子はない。
こっちの方が目のやり場に困る。
「さて、はじめようか♡」
バニーガール姿の心陽はそんな俺に構わずに、話し始める。
「はじめるって何を?」
「ワタシとの恋」
「はあ?」
意味が分からない。助けたときは俺のことを忘れたフリをして、後日こうやってわざわざバニーガール姿で誘惑してくるなんて聞いたことがない。
心陽はそんな人間じゃない。
違和感が冷たい塊になって俺の頭の中に降り積もる。
「お前さ、俺のこと知らないんじゃなかったの」
俺が冷たく言い放つと、心陽は「はて?」と小首を傾げる。
サラサラの真っ黒な髪が肩の上からさらりと流れている。人差し指を口の横にもっていって、考え込むそぶりをしている。
「でも、ワタシたち幼馴染みでしょ。それに昨夜たくさん教えてくれたじゃない」
そういって、無邪気に笑う。
「はあ?」
俺はもう何て言ったらいいか分からない。
そんな様子の俺をみて、画面の中の心陽はため息をつく。
そして、さっきまでの甘い感じと違って至って事務的な口調でこう続けた。
「あなたは幼馴染のことが好きなんですよね。子どものころからずっと。そう、初恋の相手も幼馴染。だけれど、隣に住んでいるのにもかかわらず、いつの間にか疎遠になってしまって。だけど、ずっと気持ちが変わらない。幼馴染と両思いになりたいってことで間違いないですよね?」
俺は幼馴染み本人の口から直接そんな言葉がでてきて驚く。
というか、自分のことをそんな風に話せるのか。意味が分からない。
「心陽、お前どうしたんだ。そんなこというタイプじゃなかったじゃないか」
俺はビッチと割り切るのも違う、幼馴染みの少女の変化に困惑する。
すると画面の向こうにいる、俺の幼馴染みはあっさりとこういった。
「あの、なにか誤解してませんか? ワタシはあなたの本物の幼馴染みではありませんよ」
どこからどう見ても、俺の幼馴染みの画面の向こうの心陽はそういった。
ただ似ているだけじゃない。画面の向こうの心陽は太もものホクロまで俺の記憶とそっくり同じなのに。
俺が困っていると、画面の向こうの心陽は「はあ~」とため息をついたあと、
「どうやら今の状況を分かってない見たいですね。説明するのでちゃんと聞いて下さいね♡」
といって、俺の今のこの奇妙な状況についてゆっくりと子どもを諭すように話し始めた。
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