第10話 メイド服とバニーガール

『心陽さんから、画像が送付されました』


 家に帰っても宿題だのなんだの適当に理由をつけながら、メッセージを開けないでいると新たな通知が来た。

 画像ってどういうことだろう。

 俺はとうとう、誘惑に勝てなくてその通知をタップした。


 そもそも、メッセージも見たくて仕方が無かったのだ。

 画像なんて来たらもう我慢ができない。

 すると、出てきたのは想像の斜め上をゆく、画像だった。


 メイド姿の心陽の画像。

 メイド服って言っても文化祭のコスプレ用のぺらぺらツルツルのやつじゃなくて、なんかもっとしっかりとした本物っぽい生地だ。画像なのに、なぜだか生地の重さを感じることができた。


 スカート丈も短すぎない。膝丈の黒のスカートがふわりと膝にかかるくらいの場所で広がっていてとても上品。ぱりっとした白い襟と袖。エプロンも余計な皺ひとつなく見事にそのメイド服全部の調和を完璧なものに仕上げている。


 レベルが高い。そして可愛い。

 こんなヒロインがでてくる小説を書きたい。でも、まったくそんな上手い状況は思い浮かばない。事実は小説より奇なりって本当だ。


 でも、一体どういうことだと画面をスクロールして、その前に送られて来たメッセージを読む。

 すると、「この前はありがとう」という文面と、「好きなタイプの洋服教えて」という旨が書かれていた。


 そして、俺がそのメッセージを読んでいる間に、新しいメッセージが送られてくる。

「気に入りましたか? お返事こないので勝手に着て見ちゃいました」と書かれている。


 どういうことなんだ?


 可愛いけど、これがお礼って心陽はなんでこんなことをしているんだ。俺が混乱していると、また別なメッセージと画像が送られてくる。


「もし気に入らなかったのなら……これはどう?」


 添付されていたのは、バニーガール姿の心陽だった。

 こちらのバニーガールも本格派。前にNetflixでみたヒューへフナーの生涯(ヒューへフナーはあのプレイボーイという雑誌を創刊した人ね)でみたままの本物のバニーガールの格好だった。


 白いカフスに白い襟はさっきと変わらず白く輝いているのに、ふわふわのウサギのしっぽが飾られたきゅっと上がったお尻や、悪戯っぽい微笑み。網タイツから透ける、心陽の太ももにある三つのホクロ。

 どれもが男子の劣情を煽ること間違いなしのエロさだった。


 はあ?


 おかしい。どう考えてもおかしい。

 いくら最近、疎遠になったといっても心陽が知らない人間にこんな画像を送るようなタイプじゃないことを俺は知っている。

 いったい心陽はどうなってしまったんだ?


 すると、またメッセージが送られてくる。


「続きが見たい? ここをクリック♡」


 下になにかにリンクされたボタンがでている。

 これじゃ、まるで詐欺メールみたいじゃないか。


 だけれど、送られてきた画像は確かに心陽のものだった。

 太ももにある三つのホクロ。たしかに、子どものころ家の庭でビニールプールをだしたときに心陽の太ももにはちょうどあの位置、あの形にホクロがあったのだ。


 俺は迷いながらも、そのメッセージが示す続きを見るためにクリックした。

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