第3話 襲われていた美少女を助けちゃいました

「大丈夫か?」


 俺は原付世紀末金髪モヒカンが走り去って、Uターンしてこないことを確認したあと、俺は心陽に話しかけた。しかし、あの金髪どこかで見たことがある気がする。


「た、助けてくれてありがとう」


 こんなときでも、心陽はちゃんとお礼をいう。

 本当は怖かったはずなのに……その証拠に心陽の目は赤くもうすぐ涙がこぼれ落ちそうだ。

 だけれど、心陽は気丈に上を向く。


「一体、何があったんだ?」

「わからない……ただ、急に」


 そう言って、心陽は泣き出した。


 俺はそっと、心陽を家まで送り届けた。

 泣いている心陽は泣きながら、昔の思い出話なんかをしていた。


 ――笑っちゃうかもしれないんですけど、私こういうときは自分の幼馴染が助けてくれるって想像しちゃうんです。

 ――私の幼馴染はすごく優しかったんです。

 ――小さい頃は毎日あそんだなあ……。


 なんだか途切れ途切れだけれど、俺たちの思い出が確かにそこにあった。

 俺でも覚えていないようなことを心陽が覚えていてびっくりした。


 心陽の家の前、といっても俺の家のすぐとなりだけど、にたどり着くと心陽は再び頭を下げる。腰を九十度折った本当に相手のに感謝を示すお辞儀だった。


「あ、あの。ありがとうございました。助けていただかなかったら私……あの……お礼をしたいのですが。もし良かったら連絡先教えてもらえませんか?」


「えっ?」


 俺は固まった。

 俺は誰かと勘違いされている。いいや、俺が勘違いしている?

 目の前にいる美少女は心陽ではなく、まったく無関係の美少女?

 でも、ここは確かに心陽の家の前。つまり俺の家から数メートルの場所である。


 間違いない。


 なのに、この態度って……もしかして、心陽は俺が誰だか分かってない?

 俺との思い出をあんなに可愛い横顔で話して置いて、本物の俺のことは視界にない??

 はあ……???

 一体どういうことなんだ。


 モシカシテ、コレハ、ドッキリ?

 そう、きっとドッキリだ。

 ベスト・オブ・ドッキリチャンネル。


 ならば、下手に逆らわず、このまま流れに身を任せよう。

 ドッキリって怒ったりするのが一番感じが悪いから。

 好感度高い人間になりたい。

 だけれど、気の利いた立ち回りもできないので、一番無難なのは流れに身を任せることなのだ。


 俺はおとなしくスマホを出して心陽と連絡先を交換する。

 そういえば、俺が一度スマホをなくしてから、心陽に連絡先を教えて無かった。


 随分、話もしてないし、メールやSNSのやりとりもないので今更わざわざ知らせるのもなんとなくためらわれたのだった。

 俺はとうとう言い出すことはできなかった。俺が心陽の幼馴染で隣に住んでいることを。


 つらい。


 でも、久しぶりに連絡先に心陽の名前が入ったスマホは妙に愛しかった。

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