語り屋は変化を尊ぶ
生とは力であり、死もまた力なのよ。
それは何かを変える力よ。
でも、全てが移り変わっていく諸行無常のこの世の中で、その力はとても無力に思えるのよねぇ。
この世界は生の濁流に揉まれているのだから当然かもしれないけれど、何かを変える力で本当に何かを変えるのは至難の技。
それは波打つ海に飛び込んだ所で自身の生んだ波紋が直ぐに呑み込まれるように。
だから必要なのはやっぱり力なのよ。
……ああ、いえ。言葉が足りないわねぇ。
強大な力、よね。
濁流を飲み込める程に大きな力なのよ。
でも、明確にその力ってなんなのかしらねぇ。
それはとても複雑で、単純な答え。
全て、よ。
その人、個人の持てる手段全てが力よ。
なんでもありなこの世でなんでもできるのは当然じゃないかしら?
何もかもがその人の武器なの。何を使おうが何を嫌ってようが関係ない。
行動、思想、願望、欲望、財力、武力、感情、理性、諦念、逃避、恐怖、度胸、物量、質量、美醜、人脈、言葉、理解、信用、経験……例を挙げればキリがないけれど、それが生き様。
その人の生き様が力よ。
所で生の力と死の力、どちらが正しいと思う? どう違うと思う?
いえね。生と死って同列に扱われるじゃない?
確かに同じなのだけれど、生が総合値なのだとするなら、死は単体値なのよねぇ。
考えてみたら当然ねぇ。
生きてる時の力の出力は複数あって選択型で選べる選択肢にも限りがある。当然最大出力も多少抑えられる。
対して死の力は全てが一気に振り撒かれる。爆弾のように広く、強くね。人生の最期に相応しい威力よねぇ。
たしか、〝灯滅せんとして光を増す〟だったかしら。
その人の生き様全てが集約されて爆発する。人生でたった1回だけ、この世に投擲できる集大成。
それが死に様よ。
だから生の力も死の力もどちらも正しく、違いはないわ。力はタイミングと使い方次第なの。
だからわかりやすいわよねぇ。
世界を、時代を変えるのに必要な事なんて、とても簡単な事だって。
貴方もそうは思わないかしら?
いつだって誰かの強い生き様がコツコツとこの世を変えてきたの。
いつだって誰かの強い死に様がガラリとこの世を変えてきたの。
その変化の善し悪しなんてわかりはしないけれど、過ぎてみればとてもわかりやすい変化。
わかりやすさって大事よぉ。
わかりやすいということは簡単に知る事ができるって事なの。
そして、人を惹きつけるのはいつだって自分の既知のものなのだから。
未知は深みに誘い込む為のもの。
変化はそれらを楽しむ為のものよ。いや、違うわねぇ。
多分、飽きない為のものねぇ、ふふっ。
さて、こんな森の奥深くで私の話を聞いてくれる貴方の生き様は一体どんなものなのかしらねぇ?
きっと、面白いモノに決まってるわよねぇ。
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