スーちゃん先生の有難い授業・後編

 不平不満を溢す生徒達は無視するに限る。

 ともかく授業である。

 ホワイトボードを消しながら今日の内容について考える。

 若干、長いのである。

 五族やら魂魄やらと話が盛り上がってしまった。時間こそ押してはいないが、無駄話、脱線した話だったとしても今のは授業の内容とも言える。

 いつかはやるものではあるのだ。

 全てを詰め込めるとも思えない。

 少し譲歩をしようとスーワイアは考えた。消し終えると生徒達に向き直る。


「さて、授業を始める前に。内容を今日と明日に分けようと思う。今日は全体の触りだけだな」

「「「やったー!」」」

「ちなみにテスト範囲だからな〜。魂魄も五族の部分も出すからな〜」

「横暴だぁ!」

「……狭量だ!」

「薄情だー!」

「戦争だ〜!」


 会議室でデモ隊が結成された。ミネアレまで、悪ふざけで参加していた。

 フム、とスーワイアがシラけた顔でそれを眺め、片眼鏡の位置を直すような仕草をすると口にする。


「テスト範囲を増やす。赤点は決して許さない。ログレイ君、今週の夜は電話しない」


 全員の顔が危機迫った焦りの表情になった。


「先生の優しさにいつも救われております!」

「お陰で勉学に励む喜びを感じる事ができております!」

「学べる事をしっかりと吸収し、自分のものにする事で必ずや恩師に報いる事を誓いましょう!」

「ひゅ、ひゅー……お、恩情をぉ〜! かひゅっ」

「せ、先生! みーちゃん先生が呼吸困難にっ!!」

「そんな決死の覚悟みたいな表情で言わないで欲しいが、まあうん、わかればいいんだ。……ログレイ君にもたまには痛い目にあってもらわないとな。電話はしない!」


 珍しいミネアレの姿に生徒達にが困惑する。それでもスーワイアは尚も放置する。しかし、彼女の言葉に一部おかしな部分があった。


「「「……痛い目?」」」


 え、今のが痛い目? みたいな視線が注がれる。なんという甘々な判断だろうか、と思わないでもない。


「何か問題でも?」


 しかし、スーワイアにひと睨みされた3人は深く追求しない事にした。

 マリーは2人に視線を送る。ここは否定してはいけない。全力で同意しよう! コレは間違いなく酷い仕打ちであるのだとっ!

 力強く頷く2人。


「なんたる非道な行いか! それでも先生は人間の心をお持ちなのかっ!?」

「なんと、むごい……うぅ」

「おいたわしい……。まさに鬼畜の所業じゃないか!」

「お前らなぁ……」


 もはや呆れて何も言えないスーワイアである。

 いちいち構ってもいられないので今回の悪口は不問にするらしい。

 ……最近ボケれてないなぁ、などと思わないでもない。いじられるかツッコミばかりである。少し泣きたい。

 授業がようやく始まった。


「今回は項目が多いからな。【陣界じんかい】【境結きょうけつ】【擬転ぎてん】【絆楔ばんせつ】【儀模ぎぼ】【縫錬ほうれん】【吸斂きゅうれん】【吐散とさん】【阻畜そちく】【誓鎖せいさ】 【鑑顧かんこ】【供換きょうかん】【繋媒けいばい】の計13項目をやる!」


 ホワイトボードに全て書き込み、振り向くと引きつった笑みを浮かべた3人の生徒が視界に入る。いい気味だと多少溜飲が下がる。

 文句を言った所で何も変わらないのだと判断し、とりあえずマリーは疑問に思った事を口にする。


「項目が多いのはともかく、陣界は前にやらなかった?」

「やったな。ただあれは一部だ。説明を別にしたい理由もあったからな。ついでにウナ君、陣界はどういう風に使われている?」

「たしか、威力は高いけど戦闘では使い勝手が悪い、なので主に罠として使われてる」

「その通り、正解だ。主に罠として使われている。さて、汎用性のあるこの陣界という技術が最も本領を発揮する事象はなんだい、エウ君」


 エウが「来たなっ!」という顔をする。

 いつものように無鉄砲に答えてもいいのだが、たまには正解したいのが実情のエウ。

 彼女の表情から笑顔が消失し悩ましげなものに変わる。


「……くっ、先生。ヒントを、くださいっ……!!」


 苦肉の策、苦渋の決断、断腸の思い。

 ともかく屈辱を堪えるような表情で声を絞り出した。みんなドン引きしていた。


「初めてヒントを求めてきたな……いつも聞けばいいのに」

「ヒントは自分で探すべきだって師匠が……」

「あぁ……」


 納得の声を上げるスーワイア。

 彼女らには師匠がいる。生きる術と戦闘技術を教えている。そして師匠とは1人ではない。が、そんな事を言いそうな人達ではある。遊び半分で……。

 この国の暗部の人達だ。


「まったく、状況を考えろ。私の授業で探り合いなんぞしないし、ヒントはもっとわかりやすく散りばめる。なければ聞けばいい。それに私にヒントを聞くのも自分で探す事になるだろう?」

「むぅ……それは……たしかに」

「わからないものはわかる人に聞けばいい。それも1つの探し方だ」

「……では正解はなんでしょうか!」

「……自分で考える力を身に付けろと言っているんだ。材料を探して調理しろって話だ。店で注文をするな」

「……ヒントを、ください……怒られた……」


 小さくションボリするエウ。

 それを見つめるスーワイアは少し、複雑な心境である。

 いつも一緒にいるミネアレがギリギリわかる程度の瞳の揺れだ。

 ミネアレは仕方がない、と肩を竦める。


「私が〜、一肌脱ぐ番、だね〜」


 ミネアレはいそいそと何やら準備を始める。

 それでも授業は進む。


「さて、ヒントだったな。陣界は私も含めて監視塔の管理者が2番目に重要視する技術だ。外出時にはなにかと便利なんでな。……少し、ヒントを与え過ぎたかな?」

「ふむぅ……」


 ヒントを与えられたエウは考える。

 管理者達が1番に重要視するのならなんだろうか? やはり魔物を従わせる何かではないだろうか。ではそれ以外とするならばなにか。


「……便利……?」


 外出時に便利と言っていた。

 管理者は魔物を従わせてこそだろう。それならば魔物に関連した何かのはず、外出時に便利と言うのならば……。

 ……首輪?


「……あれ、でも街」


 街に魔物を連れていたら大騒ぎではないだろうか? 魔物の種類もまた多種多様だ。

 それにこの国にいる魔物は小さいのばかりではない。それなら外出時に魔物を連れて行ける手段になるのではないだろうか?

 必要な時にその魔物を連れて行く手段。そして、別にずっと側に居なくてもいいのならどうだろう。

 という事は……。


「お、わかったかい?」

「おそらくは……」

「では答えてもらおうか。陣界が最も本領を発揮する事象はなんだ?」

「……し、召喚です」


 その答えにスーワイアは優しい表情でエウを見つめた。


「正解だ。やればできるじゃないか」

「うぅ……なんか、なんかこの優しい対応慣れない!!」

「なんだエウ。フランみたいな奴だな」

「面識はないけど可哀想ってニュアンスは伝わったからね!」


 今頃彼女は涙目でくしゃみでもしているのではないだろうか?

 そんなエウの様子を見ながらウナはこっそりとマリーに聞いてみる。


「んで、実際はどうなの? そのフランって人」

「……短い間だったけど1番の印象は可哀想な子……かな」

「……ねぇ、マリー。最近ね、ウナの妹が不憫な子になってきてるの。どうすればいいかな?」

「この場合フランさんの方が余程不憫だと思うけど……そうね。受け入れるのが優しさかなって」

「……お母さん、ごめんね。エウは必ずウナが守るから……っ!」


 何やら茶番が繰り広げられていたが、エウはその2人をジト目で見つめる。


「聞こえてるんだよ! その優しさが余計エウを惨めにさせるの! 2人が余計エウを陥れてるの! 気付いて!」

「気付いてるだろ。むしろ率先してやってるだろ」

「スーちゃん先生が元凶なんだよ! エウは泣くよっ!?」

「ああ元は、双子をどう見分けようかと思ってな。可哀想な方と覚えれば楽だろう?」

「「あぁ……」」

「なんでみんなで泣かしに来るの……?」


 ちなみにやっとボケれたとスーワイアは上機嫌である。

 閑話休題。

 陣界の一般的な用途としては罠であるが、本領を発揮するのはエウが答えた通り召喚である。

 とはいえ召喚にもいろいろある。

 その中で比較的簡易なものは監視塔管理者達が扱うものである。

 それはあらかじめ魔物達に印をつけて呼び出すものだ。

 単純であるが物を移動させるのとはわけが違う。

 そして、一方通行である。呼び出す事はできても送り出す事はできない。それでも十分なメリットはある。

 安易に何度も召喚する事はできないが連れてくる数に制限はなく、他所で楽に軍隊を作ることができる。


「次は境結。これは結界を作るのに適しているな」


 境結で作られる結界は強力だ。

 結界の作る壁は正しく空間を隔てており、簡単に破れはしない。

 しかし、強力である代償に必ず条件付けがされている。必ず出る方法があるということだ。

 結界の壁は1つの境目としよう。形は問わない。ドーム状の壁だろうがそれは1つの境目である。

 通るべき道はホースの中の空間であり、その途中に境目がある。その境目は固結びで塞き止められており、先には進む事ができないのだ。

 先に通るにはその結び目を解く必要がある。それが条件である。

 その結び目は結界の数だけ種類がある。結び方もいろいろある。

 しかし、共通して結び目はどうしても見えてしまう為、隠したり或いはその守りを強固にする必要がある。

 例を挙げれば、己の中に隠し命と引き換えにするものや、迷わせるタイプなどは探すのも面倒だ。

 己の中に隠す方法は単純で乱暴でも使えない手ではないだろう。結界の壁はそれほどまでに頑強で有効な手だという事だ。


「じゃあ先生。境結って戦闘にはあまり役に立たないって事?」

「直接的にはな。他の魔創と組み合わせればいろいろと役立つだろう。主に強化や弱体化に。ただ境結は境目を結ぶという技術だ」

「というと?」


 結界というのは結び目自体を境にしているものだ。1本のホースの通り道を邪魔するように。

 しかし、ホースの入り口と別のホースの出口を結合させるとどうだろうか。

 妨げる目的ではなく迷わせる目的でもなく、繋げる目的で境結を使用するのだ。


「いわゆる転移ができる。ゲートでもいいかもな、使い方は人それぞれだ」

「でもスーちゃん先生。それなら魔物の移動もそれでいいんじゃないの?」

「いい質問だ。だがそれはできない」


 まず、その移動する為の境目を長く維持できないのだ。大きさもそう大きくはない。自分1人、あるいは数人が精々である。

 結界と違って空間同士を結合する作業に手間がかかる故だ。

 そして、移動できる先が知覚できる範囲と限られている。

 1人で使用する分には便利だが人が増えれば身動きが取りづらいのだ。


「とまあ、陣界の方が魔力の消費や手間が楽なのさ」


 忘れてはいけないのが魔創とは何かという話だ。魔創は魔力を用いた技術の総称である。

 どのような方法が1番楽に使いたい手段を実行できるかという事。

 得手不得手も鑑みた中での選択だ。

 魔法や魔術などで結界は作れない事はないのだ。強度を考えれば境結だが、ブラフや足止めなどでは活躍する筈だ。


「では次、擬転。これもまた応用がかなり利く魔創だな」


 擬転は感覚を騙すのに特化していると言える。隠蔽や偽装などだろうか。

 気配を消すのにも役立つだろう。

 だまし絵のような魔創であり、構築、装填、起因が様々な形で行われているものでもある。

 それと魔力の燃費もまた非常に良いのも特徴と言えるだろう。


「ある意味万能とも言えるかもしれないな例えば『エウがアホになっちゃったよぉ……』」

「ウナにそっくりだ!」

「……? ウナってこんな声なの?」

「ね、ねぇ! エウが、大事な妹が傷ついていますよ!」

「自分の声は認識しにくいだろうな。擬転は他にもコピーや転写、今みたいに真似る事も得意としてる」


 しかし、擬転が万能で魔力の燃費が良くともその技術の扱いは困難である。擬転を扱える者は相当な技巧者と言える。


「次は絆楔ばんせつだな。これは私達管理者が最も使う魔創だ」

「魔物達と仲良くなれるってこと?」

「少し違うな。もちろん仲良くなれるのならそれに越した事はないがな。だが、これは別だ。現にマリーはレイヴとの間に魔創は使っていないだろう?」

「うん、レイヴとは特にやってない」


 レイヴとはマリーと共にいた魔族の狼である。非常に稀有な事例だがマリー達のように自然と友情が育まれる場合もある。故にそこに魔創で結ばれた縁はない。

 しかし、大半の場合は大前提として絆楔を使用して、そこから初めて友好関係を築くのだ。


「だからユレンもレイヴとは絆楔で結ばれている」

「レイヴも修行中だからしょうがないと思うけど、ちょっと複雑だね。私もやろうかな?」

「それはご自由に、だな。2人の関係ならある意味互いに誓いを立てるようなものでもいいかもな」

「誓い……?」


 どういう事だろうか? とマリーは首を傾げる。しかし、わからなくて当然である。彼女はまだその魔創を少し勘違いしている。


「スーちゃん先生! 結局、絆楔ってなんなの?」


 エウが話が脱線する前に話を戻した。


「絆楔というのは、いわゆる契約だ。約束であり、誓約であり、盟約であり、協約である。誰かと誰かの取り決めの魔創だ」


 つまり、スーワイア達は魔物と取引して共にいるという事である。親しくなるのが後なのも納得だ。

 もちろん契約するまでに魔物を納得させなければならない。方法もまた相手が納得さえすれば良い。


「ちなみにユレンとレイヴの契約の内容はユレン側は強くするからこちらに強力して欲しいというもの。レイヴ側の主張はマリーを守ってくれ、守らせてくれというものだな」

「レイヴ……」


 マリーが困ったような、けれど嬉しそうな顔で自分のパートナーの名を口にする。


「だから誓いなのね」

「そういう事だ」

「じゃあ、絆楔って約束を現実的にするものなんだね」

「それだけではないぞ。これが実に厄介でな。約束にもその重さがある。書面に残すもの、どこかしらに刻むもの、口約束でいいもの。この中で1番軽いのは口約束だが、守らなければ罰則を与える事もできる」

「……どういう事?」


 エウが少し考え、首を傾げた。

 そんなエウにスーワイアは近づきながら言う。


「例えば、そうだなぁ。エウ、そこから動かないでくれよ」

「え、うん」


 了承するエウにスーワイアは更に近づき手が触れるぐらいの距離に近づく。

 デコピンの姿勢に入ったのを見てエウは少し後ろに下がった。


「せ、先生あんまりそういうのは、良くな——ぁ゛ッ! 頭がぁぁ〜……」

「と、このように約束を破れば罰を与えられる」


 痛がるエウをよそにスーワイアは説明を続ける。

 これにはウナが黙っていなかった。


「先生! これ以上エウをアホな子にしないでっ!」

「ウナ、その発言はエウに悪いよ……」


 エウはいろんな意味で滲んできた涙を瞳に携えてスーワイアを見つめる。それは懇願の視線だ。


「こら、エウ。動くなと言っているだろう?」

「わ、わかったけど先生。その手を一回下ろしてよぉ」

「仕方がないな。まだ痛むか?」

「……もう大丈夫。…………なんでまたデコピンの姿勢を?」

「一回手を下ろしただろう? その代わり君は動かないと言った」

「に、逃げ——っ!? あ、足が動かないっ!?」

「と、このように相手の行動を少し制限する事もできる」


 そう言って、スーワイアはコツン、とエウの額に拳を当てて見せる。

 エウは涙目でちょっとよろめいた。足が動く事に気が付きホッと一安心である。


「しかし、所詮は口約束。その全ての罰や制限は一時的であったり条件付けがされる場合がある。最後にやった交換条件での取引はただの口約束より強力だがな」

「ほとんど詐欺なんじゃ……」

「だから言っただろう? 厄介だ、と。人によっては身動きすらできなくなるぞ」


 その瞬間を想像して3人はぶるりと震える。


「でも、何も答えなければなんとかなるよね?」

「無言を肯定や了承としてとられたらどうするんだ? もちろんその分、罰や了承は軽くなるが、拮抗した戦闘中はキツいぞ」

「……社会が怖い」

「……人が怖い」

「……先生が憎い」

「なんか1人混じってるなぁ。とはいえこれもかなり技術のいる魔創だ。魔力も擬転で隠し難いから注意していれば不意を突かれることはそうないさ」

「なんで隠し難いの?」

「どうしても互いを結びつけるものだからだ。承認があって初めて効果を発揮する。それを感知させないのはかなり骨が折れるよ」


 とはいえ言葉巧みに翻弄されてしまえば気付いていても騙されてしまいかねないだろう。故に厄介なのだ。


「では次、儀模ぎぼ。これは構築の段階がとにかく形に拘るものだ。例えば大人数で儀式などを行なっていたり、或いはわかりやすいのだとダンスか」


 儀式などだと大掛かりなものになりやすい傾向にある。例えば災い、恵み、捉え方はその集団の意志次第だろうが、中には雨を降らすものもあると言う。

 ダンスなどは、自分や周りにプラスの効果をもたらすものが多い。高揚感が異様に高まったり、勇敢さを植えつけたり、動きのキレが増したりと。その逆に敵対する者の動きを鈍らす効果もまた見込める。


「ダンスになった場合効果が詠唱と似るんだね」

「マリー君は良く勉強していて嬉しいよ。だが効果範囲も違っていれば使い勝手も違う」


 例えば、儀模は戦闘技術に組み込めばかなり有用なものになるだろう。実際、踊るように戦う型というものはある。

 ゲームにおけるコマンドの並びのように決められた型を順番に出す事で強力な魔創を繰り出したりする人もいる。パターン化されやすいので多用は避けられるが……。

 対して詠唱を戦闘技術に用いるよりは相手をより翻弄できる絆楔の方が役に立つ。

 故に後方支援に特化しているし、より大人数を巻き込む事ができるのが詠唱だ。


「詠唱による大人数を巻き込んだ時の熱狂は凄まじいぞ。アイドルなどの偶像崇拝に近い」

「……カリスマは力なのね」

「ウナ君の言う通りだな。そう思うと冒険者の信用制度も良くできているものだ」


 力が強い弱いの世界ではないという事だろう。

 いかんいかんとスーワイアは頭を横に振る。こういう時、つい別の話に脱線してしまいそうになる。

 次の魔創へと移る。


「次はみんな大好き、モノづくりの縫錬ほうれん!」

「「「わかりません!」」」

「素晴らしい反応だ。そうだなぁ、どう説明したものか」


 少し考え、見せた方が早いかと思い至る。


「君達のペンを少し借りるぞ」


 そう言ってスーワイアは少し目を細めた。


「え、わっ……」

「……この魔力って……」

「浮いちゃったよ……」


 それぞれの手元からペンを浮き上がらせて見せる。


「まあ、すごく端的に説明するならこういう技術だ」

「「わかりません!」」

「魔力がちょっと違、う?」

「……流石ウナ君、優秀だな。縫錬の使い道は割とたくさんあるからこれはその一例だ。構築、装填、起因の工程が全て一緒くたに行われているのが特徴と言えるな」


 3本のペンの内、2本のペンからカチッと言う音がした。


「「やばっ!」」


 何やら察したマリーとエウ。


「えーっと、あー、わかりません!」

「何本もの魔力の糸が捻れてるのがそれでしょうかっ!」


 エウのペンからカチッと音が鳴る。


「その通りだ、エウ君。縫錬を上手く使うにはかなり器用でなければならない。ただ束ねようとすれば魔力の糸が一本にまとまってしまう。ログレイ君が特に扱うのが上手かったかな」


 ペンの先端がマリーに狙いを定め、キラリと光を反射した。

 口の端を痙攣けいれんさせながらなおも考えを巡らす。


「言い残すことは?」

「……では1つだけ」


 コホン、と咳払いをしてスーワイアにキリリとした眼差しを向ける。


「わからない事をわからないと言ったこの潔さを評価して頂きたい。この悔しさを理解して頂きたい。故に罰は免除されるべきだと——」

「長い」

「無慈悲!」


 ペンが差し迫る。思わず目を閉じ、痛みに備えたその刹那な事。彼女の脳内は激しくスパークした。それは一瞬の閃き、原点に立ち返った疑問。


「魔創なのでしょうかっ!?」


 ピタリとペンが額の数ミリ先で止まる。


「そ、それは魔創と呼べるのでしょうか。魔力の線を束ねて捻るだけで魔創になるのでしょうか? それだとただの魔力操作にならないでしょうか?」

「素晴らしい疑問だ。先程省いたがコレはただの前提条件だ。精密な魔力操作ができて始めて扱えるのが縫錬だ」


 全員のペンが手元に戻る。


「ちっ!」

「なにかな、エウ」

「べつに〜?」


 期待が外れたエウは下手な口笛と共にマリーからそっぽを向いた。

 スーワイアは説明を続ける。


「マリー君が言ったようにこれだけではただの精密な魔力操作でしかない。では縫錬とは何か。それは感覚を結びつけるものだ」


 感覚を付与したり、共有したり、連動させることができる。

 幾数もの魔力の糸を伸ばし、リンクさせる事でその効果をもたらす。魔力の神経と言った所だろうか。


「まあ、早い話、操り人形のようなものだ。使い方次第では呪いや身代わりの藁人形にもなるのかね」


 しかし、痛みを共有するよう藁人形に施すには別の魔創も関わってくるので多少手間だがダメージを肩代わりさせるぐらいならば縫錬単体でできる為、簡単ではある。

 尤も、藁人形程度の強度では然程効果も見込めないのが現実だ。それ故に結局手間を掛ける必要があるだろう。


「さて、次はまとめて吸斂きゅうれん吐散とさん阻畜そちくの3つだ」

「「「…………」」」

「そう身構えるな。まとめた方が楽なのさ」


 疑いの視線を浴びながらもスーワイアは続ける。


「簡単に簡潔に明瞭に説明すると吸斂は吸う使い方と纏める使い方がある。吐散は吐き出す使い方と散らす使い方。阻畜は阻害と蓄積って感じだな」


 そう言うと3人は今回の魔創について考えを出し合う。


「…………阻畜はともかく、他の魔創の使い道がわからない……」

「ウナも……全体的に用途がわからない」

「えーと、エウが想像するに他の魔創でもできるけど効率的にするには都合が良い、んだろうけど……」


 ああでもないこうでもないと頭を悩ます。タイミングを見計らいスーワイアは声を掛けた。


「困窮しているな。まあ、わかりにくいのは確かだ。この魔創は魔導で繋げて共に使う事が多い。組み合わせは様々で3つとも使い、組立て方を工夫したり、2つだけ用いたりな。無論、単体でも使えるがな」

「なにに使うんですか?」

「そう、だなぁ。あまりいい例が思い浮かばないが大雑把にまとめるのなら……エネルギーの運用、かな」

「「「エネルギー……」」」


 エネルギーと言ってもいろいろあるだろう。だが大雑把にまとめた、そのいろいろがまさしくそうなのだ。


「さっき用途がわからないと言っていた。吸斂と吐散だが、1つの用途の例として入力と出力だな」


 魔力をエウの額辺りに集めて、自分の手元にも魔力を集める。そこにデコピンをかます。


「イタっ!? なんでっ!?」


 涙目の訴えである。

 スーワイアは我関せずシラを切る。


「ああ、デコピンの力がそのままダイレクトにそちらに伝わったんだ」

「違うよっ! 仕組みじゃなくてなんで私なのって事っ!!」

「そして——」

「無視っ!?」

「吐散の方を少し工夫すると」


 魔力が3人の額に集まった。


「「エウッ!!」」

「エウは悪くないよ!? でもざまぁ!!」


 余計な事を言いやがってとエウに非難がましい視線が飛ばされる。

 エウは物怖じせず煽り返していた時。


 ——パチンッ!


「「「あ……優しい……」」って違うよ!? こんなんじゃなかったよ!?」

「と、このように1つの威力が3つに分散される。だが、組み方を吐散、吸斂と組み方を逆にすると3つに散った力を1つに収束させる事ができる」

「……実演しないんですか〜? エウは準備万端なんですが〜?」


 指を弾く為にギリギリと引き絞られた手を見せつけるエウ。若干凄みを感じられる。


「「エウ……」」

「2人ともさっきから表情豊かにエウの名前呼ばないでくれる!?」


 流石に憐憫れんびんのこもった視線には耐えかねたらしい。


「それもそうだな体験した方が早いだろう、ほれ」


 スーワイアは3人の前に魔創を展開する。

 彼女達は指を弾くが特に何かが起こる事はなかった。


「な、なんで……エウのこの恨みは一体どこに吐き出せばぁっ!?」

「「エウ……ぅッ゛……」」

「泣くなぁぁぁぁっ! もうツッコまないからね!?」


 何度も繰り返し弾けども手応えこそあるもののなにも起きなかった。

 スーワイアは目の前の茶番を呆れた表情で見ながら説明を続ける。


「と、このように更に阻畜を組み込む事でエネルギーを溜める為の構築ができる」


 充電器や蓄電器のような役割を担ってくれる。利用法や使い方によっては抵抗器にもなるのが阻畜という魔創である。


「「「………………」」」


 考えをまとめる為にたっぷりと時間を使う。マリーとウナが互いに視線を絡めるとうん、と頷く。意思の疎通は完璧である。


「「エウ…………ッ!」」

「い、祈るなぁ〜……」


 目を閉じて目の端に僅かに涙の雫を垂らし祈りを捧げるように手を組むマリーとウナ。エウは恐怖に震えながらも精一杯の虚勢を張った。


「ぜひ当てたいところではあるんだが……流石にコレは強すぎるな」


 溜まった力を壁へと放出すると指のサイズ程の凹みが出来上がっていた。

 エウはプルプルと震えながらスーワイアに常識があった事にこれ以上ないくらい感謝した。


「ちなみに単体でのわかりやすい魔創の活用だと吸斂が——」


 スーワイアは雨を確認するように手を差し出し、3人にわかるかと視線で問い掛けた。

 魔力が手の上でどんどん集まっていくのだ。それは魔力操作とはまた違うものだ。

 魔力操作ではこのように起点を作って集める事はできない。吸斂は手元以外でもその芸当ができるのだ。


「このように魔力を集めたり纏めたりする事ができる。また、魔力でなくても風や炎、魔力を結構使うが重力を利用すれば物や人なんかもな。まぁ、活用法はいろいろある。吐散はその逆だな」


 そう言うと魔力が一気に手の平から散った。それどころか会議室から殆どの魔力が散った。


「他にもエネルギーは分散するが多段で、つまりは二重、三重に攻撃などもできるな。方向もまたわけられるか。……例を挙げればキリがないかもな」


 そう言って肩を竦める。詳しい話はまた後日なのだろう。今回はあくまで簡単な説明に留めると言っていた。


「阻畜も単純だな。簡単な障壁が作れたり、他人に魔力を扱わせる為の魔力溜まりを作る事ができる。まあ、障壁の強度はまちまちでその人次第だし、魔力溜まりも結局は使用者の持つ魔力以上は込められないけどな」


 一泊置くとスーワイアはだからこそと続ける。


「これらの魔創は他と組み合わせる事で初めて化ける事ができる。他の魔創も化けるは化けるがこの3つ程相性と伸び代はないかもな」


 一旦説明を締めると3人の様子を窺う。妙に静かだと思ったのだ。

 3人は真面目な表情でスーワイアを見つめていた。

 ……いや、真面目は真面目だがなんというか額や頬に冷や汗を垂れ流し、どこか深刻なシリアスな表情というか。

 マリーは両手の指をくっつけて親指に顎顎を乗せ、人差し指で眉間を押さえたポーズで2人へと話しかけた。


「ねえ、エウナちゃんず。ちょっと聞いて欲しいんだけど……」


 さらりと2人の名前を略したが2人はツッコまない。場にそぐわないと判断した。

 ウナは両手を組んで口元を隠したまま返事を返す。相変わらず雰囲気だけはシリアスである。


「なにかな、マリー。言いたい事はだいたいわかるけど……」


 エウもまたウナに追随する形で返事をする。

 ちなみに手は組んでいるが親指はそれぞれこめかみを押さえる形で目は隠されており、下を向いている。

 3人とも本当に雰囲気だけは一丁前である。


「まぁ、エウもわかるよ。でも口にするのが怖いなぁ。現実を口にしないで欲しいとも思う。この重責はやっぱりマリーにしかできないのかもね……」


 相変わらずのポーズでマリーは目を瞑り、フゥーと息を吐き出す。


「……あと4項目もある……ッ!」

「頭の痛い話だよ……」

「視界が暗くなるね」

「こんな難しい話を一気にするって事は期待の裏返しだと思う?」

「期待じゃない。殺しに掛かってるよ。恥晒しにする気だよ!」

「死体の掘り返し? ちょっとなに言ってるかわかんなくなってきたよ……」


 ふむ、とスーワイアは生徒達の様子を眺めていた。

 どうも疲れているらしい。オーバーヒートした頭が混乱を招いている。

 コホン、と咳払いを1つ。


「別に今日に関しては覚える必要ないぞ。次の授業の時により頭に入りやすくする為の授業だからな。言ってしまえば予習だ、予習。気軽にやってくれ」

「予習って事はつまり帰って良し」

「寝て良し」

「遊んで良し」


 3人の表情がパァッと華やいだ。


「「「つまり解散して良し!」」」

「勿論だとも。補習にならない自信があるならな。今回は気合い入れてテストを作るからな」

「じょ、冗談じゃないですか〜」

「はい、次は誓鎖せいさな」

「「…………」」

「今のはみんな悪いと思う。そんな目で私を見るのは筋違いだよ」

「「…………」」


 ごもっともである。2人はなにも口にはしなかった。3人は再び先程のポーズで授業を聞く態勢に入った。一応、彼女らの状況が本当に深刻化したらしい。


「さて、誓鎖は一種の祝福であり呪詛だ。それと等価交換を求められる魔創だ」


 別の言い方をすれば恩恵と害悪と言ったところか。

 損得、つまりメリットとデメリットが伴う魔創だ。

 自分に制限を設けてその代償により強力な力を手に入れる、といった使い方。

 或いは何かを得る代わりに何かを失う。もしくはその逆、何かを失い、何かを得る使い方。

 己を縛る鎖であり、己を奮い立たす誓いでもある。


「縫錬と合わせればさっき言ってた呪いの藁人形で相手にダメージを負わせる事もできるな。相手の体の一部がそれなりに必要になるがな」


 正直、マリー達は誓鎖の説明にイマイチ着いてこれていない様子だ。

 スーワイアもどう要点をまとめればいいのか少しわからないでいた。

 複雑なものを簡単に説明するのはかなり労力がいる。


「そうだなぁ。人を殴った時、自分の拳もまた痛むだろう? それも強ければ強い程。そんな感じだ。呪術に近いものだと思えばそれでいいさ」


 基本的にハイリスクハイリターンな使われ方をする魔創として有名だ。

 戦闘に時間制限を設ける事で凄まじい力を発揮させるが、それを過ぎれば一切動けなくなる、といった具合に。


「まあ、長くなるから詳しい事は別の機会だな。次は鑑顧かんこだ」


 どの魔創にも言える事ではあるが鑑顧もまた応用の幅が広い類のものだ。

 誓鎖が呪術と表現するならば鑑顧は妖術の類いに近い。

 そう言われても違いは依然としてわかりにくいだろう。

 ともかく精神面に強い影響を及ぼす魔創である。それは催眠であったり、誘惑であったり、洗脳もまたその1つだろう。

 相手のトラウマを刺激する事も可能だ。

 他の魔創と組み込めば精神世界なるものを作り出す事も出来る。


「こんな物騒な使い方以外にも別の使い方もある」


 それは擬転などに囚われない看破の力や鑑定、占いなどと多岐にわたる。


「この魔創ら目を媒体にして使うものだ。当然目に負担がかかる。そして、相手と目を合わせたらこの魔創にかかりやすいんだ」


 しかし、心が強い者にはかなり効きにくいという側面も持つ。


「次は供換きょうかんだ。これは装填の方法が珍しいものだな」

「えっ、魔力を使わないって事?」

「使うが魔力の取り入れ方が珍しい奴だ。君達はロウナ君とは戦った事はあるな?」


 まあ、と頷く3人。良く模擬戦をしているのだ。

 ちなみに勝ち星はまだない。


「彼女は魔創は使えないがその魄技がこれに近い。要は貢物だな」


 言葉を変えるならば犠牲、生贄、供物、代償と言ったところか。何かを引き換えにして魔力を捻出しているのだ。


「ああ、あのスライムみたいなのかぁ〜……」

「あれって一応、自分の身体の一部なんだよね……」

「エウ、あれ苦手……」


 苦い思い出がたくさんあるようだ。

 あの種属だからこそできる芸当である。


「はは、まあ、戦いにくい相手だろうな、アイツらは。さて、ラストだ」


 スーワイアはホワイトボードに顔を向けペンを手に取ろうとして——。


「…………」


 やめた。

 途中までしか書かれていないホワイトボードをそっと消した。

 生徒達に向き直る。


「さて、最後は繋媒けいばいだ!」


 何事もなかったかのように授業を続行した。

 しかし、スーワイアはプルプルと羞恥に震えている。

 ここで困るのはマリー達である。

 なんとしてもイジりたい気持ちが心中で渦巻く。

 だがそれをすると課題などがこちらに降りかかってくる。

 かと言って黙っているのもとても気不味い。

 マリーはウナとエウに視線を向ける。

 2人もまたアイコンタクトを交わしている。

 

「「「…………」」」


 そのどうするという雰囲気で相談している3人はスーワイアの目の前である。

 それを察せられない彼女ではない。気を遣われている、と。


「や、やめてくれ…………」

「「「…………っ!?」」」


 3人自分達の失態に気が付いた。しまったという表情を晒した。


「や、やった!! ようやく最後だよ!!」

「繋媒ってなんだろうねっ!! ウナには想像もつかないなぁ!!」

「教えて先生!! エウは今すごく泣きそ……気になっちゃってるんだよ!」


 勢いに任せる事にしたらしい。

 だがある意味そのフォローは追い討ちであった。

 しかし、授業を止めるわけにもいかないので続けた。


「け、繋媒は、だな。魔導と似た魔創だ」


 魔導で魔創同士を合わせる事ができるのは知っているだろう。

 繋媒もまたそれができる。

 では同じ魔創なのかと言われれば違うものだとハッキリと言える。

 ではどこに明確な違いがあるのか、それは。


「魔創が既に発動しているかどうかの違いだ」


 魔導は魔創同士を合わせてから発動するのに対して繋媒は発動後の魔創に干渉する技術である。

 そこに手を加えるのか支配するのかは技量とセンス、そして知識次第である。

 無論、攻撃として展開された魔創にそれができるのは、そこに確たる実力差が存在している証明でもある。少なくともその分野ではの話だが……。


「とりあえず今日の授業はここまでだな……」

「「「ありがとうございましたぁっ!」」」

「そう言えば竜を見に行くんだったな。行こうか……おや?」


 早速移動を始めようとした彼女らの動きを止めたのは会議室の背後から聞こえてきたガチャ、という扉の開閉音である。

 何やら途中から部屋から居なくなっていたミネアレがようやく戻ってきたようだ。


「どうした、ミーネ?」

「実は〜、みんなの親睦を〜深めようかなって」


 そう言って近くの机の上に脇に抱えていたプロジェクターを置き、諸々の準備を手早く終えると部屋を暗くした。


「いくよ〜」


 その後、映し出されたのはまるで映画のようなスーワイアの教師としての苦難の日々である。ミネアレの編集の腕が光った逸品だ。

 生徒達との距離感、どうすれば授業の内容を理解してもらえるのか。

 時には弱音を吐露した事もあった。

 教師に向いていないのだと。

 しかし、知識は宝なのだと誰よりも知っているからこそ、不器用なりに臨むスーワイアの姿が約30分もの間映し出されていた。

 見事な出来栄えであった。


「…………」


 今日は厄日である。

 スーワイアは顔を真っ赤に染め上げながらもそう確信した。

 全身が小刻みに震えている。

 マリーは落涙した。


「私は、そんな先生が大好きです!!」


 感極まったようにスーワイアへとヒシッと抱きついた。

 ウナは歓喜した。


「ここまでウナ達の事を考えていてくれてたなんて……」


 喜びを噛みしめるようにヒシリッとスーワイアを抱きしめた。

 エウは感謝した。


「ありがとう、先生。エウ、もっと頑張るからっ!」


 抑えきれぬ興奮を形にする為にスーワイアへとガバッと飛びついた。

 ちなみに『いつか自分を誇れるように生きて欲しいもんだよな』を始めとした数々の名言を残した故の現状である。

 ミネアレはいい仕事をしたと満足げに頷いている。


「……しばらく授業を休みにする」


 蚊の鳴くような、まるで今にでも消え入りそうな声でスーワイアはそう通達した。


「そんなっ! 私達もっと先生と勉強したいよ!」

「まだまだ学べるよ、先生。先生の厳しさは優しさの裏返しなんだってわかったから……っ!」

「いつか先生が自信をもって自慢の生徒だって言わせたいんだよ!」


 まさに青春である。

 生徒達は熱い青春の一幕にいた!


「う、うるさい! 私が授業できる状態じゃないんだっ!!」


 涙を流して逃げ出すスーワイア。


「「「せ、先生っ!!」」」


 感動の涙だと信じて止まず、追いかける生徒達。


「これで〜、今夜は、電話してくれるよね?」


 ほんわかと優しく皆を見守るミネアレ。

 強かさというのはやはり処世術に必要不可欠なスキルなのだと強く思わされる。

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