迅速な信用の得方 窮地でおどせば問題ないよね! 編
王都で幅を利かせている大本と呼ばれる商会はいくつかあるが今回はその内の3つの商会がターゲットに選ばれた。
まずは、安さが売りのグリルバレル商会。
品質にも問題はなく、安く仕入れができるので利用する者が必然と増えたのも頷ける話だ。
次に、高品質な素材が売りのヘイナン商会。
加工技術も優れており、安心のできる物を常に提供してくれる。それも安定供給できている事は素晴らしいの一言だ。
そして最後に、先に紹介した2つの商会をいいとこ取りしたかのようなアルドメル商会。
客の要望にしっかりと対応してくれる丁寧な商会だと評判だ。
ホムリが目を付けたのはグリルバレル商会である。
グリルバレル商会は確かに評判が良い。
しかし、それはあくまで消費者側からしたらの話である。
彼らは基本的に冒険者から素材を直接買取る事で素材を手に入れている。
つまり何が行われているのかは火を見るよりも明らかである。
冒険者から買い叩けるだけ買い叩き利用している。
状況としてはこれしかあるまい。
実際にホムリが調べた限りその通りであった。
だが、冒険者も馬鹿ではないためそうなんども同じ事を繰り返す事はない。別の所に売るなりすれば良い。なんならギルドが1番安牌と言えるだろう。
グリルバレル商会のターゲットはあくまで新人冒険者や消費者側の評判につられた何も知らない一般人である。
悪事と言える程の事ではないが冒険者らは通過儀礼の様な物だと割り切ってもいる。
「悪事にしてはしょぼいし、その程度じゃ築いたものも揺らがない、よね」
だが、それでいいだろう。やる事は変わらないのだから。
彼女達の目的は金稼ぎであり、どこかを貶める事ではない。
ガチャリとグリルバレル商会の素材の買取をする店へと入る。
受付に居た男はピクリと眉を動かし、客を認識する。
なかなか清潔な場所であり、商売をする場所としては文句の付け所はないだろう。
「なんだ、嬢ちゃん。買取か? 迷子ではないよな?」
ホムリはここを訪れる前から分析していた。どういう手が1番良いのか。
自分の容姿を最大限に活かす方法も考えはしたが若干人を選ぶような気がしないでもない。目の前の男の反応を見ればなかなかに際どい所だったに違いないだろう。
そこは十分に理解している。彼女に少しの苛立ちはあれど怒りはない。
ならば仕方がない。
バッチリとそれらしい表情と態度を示すほかないのだろう。
屈辱だが仕方があるまい。
「こ、これでもぼくは冒険者だよっ!
ホムリは田舎者出身の子供のような振る舞いで絶好のカモとなる事にした。
ふんっとわざとらしくそっぽを向く。
少し面食らった男だったがすぐに気を取り直す。
「ああ、すまないな。んで買取で良いんだよな?」
「そうそう! ぼくが取ってきたものを売りたいだよ!」
そうして出されたのは新鮮な野菜や薬草、丁寧に剥ぎ取られた魔物の毛皮などだ。
質の良いものから悪いものと並んでいる。薬草に関しては珍しい類の物もある。
並べられた品に男は声を上げる。
「お、やるな嬢ちゃん。いろいろ持ってきてるじゃないか」
「だらだら〜? ぼく、ばぁか頑張っただよ〜」
男に褒められ顔を綻ばせるホムリ。
しかし、男はそれらをよく見て顔を顰めた。
「あぁ〜、嬢ちゃん。申し訳ないが王都は初めてか?」
「そうだよ、なんかダメなもんでもあった?」
「いや、品質が悪いものもあるが概ね普通だな。ただここ王都じゃ品質が良いのが普通なんだ。ウチも安く売る側ではあるがどれもこれも品質には拘ってる。会長もそこには気を付けてるからな」
「ほえぇ〜、都会は進んでるね〜」
「ははは、まあ、そんな訳で今回はこのくらいが妥当だな。売るか?」
そう言って机の上に差し出されたのは鉄貨と銅貨が5枚ずつと銀貨が1枚の155イルだ。
ホムリの見立てでは銀貨2枚程度の価値があったはずである。
ただ、質が本当に悪ければなるほど、確かにその程度にはなるのだろう。
相手の理屈を認めればそういう事にもなる訳だ。
法外と言うほどでもない。地味だが積み重ねればそれなりにはなるだろう。なかなかに狡いやり方だ。
そこまで考えホムリはパァッと顔を綻ばせる。
「こ、こんなに貰って悪くないかな? ぼくもっと頑張るよっ! だもんでこれからもよろしくね、おっちゃん!!」
「おう、また来てくれよ、嬢ちゃん」
ホムリは別れを告げ、その店を離れる。
これで間違いなくホムリは与し易い田舎者と思われただろう。
今日の所は宿に戻り、次の日もまた素材を持っていく必要がある。
「んー、イメージは湧くんだけどなぁ。……どうしよっかなぁ」
彼女自身の応対が柔らかだったというのもあるが、相手は高圧的ではないし多少交渉すれば値上げの余地はあったように思う。
だが、それでは道が逸れる。
油断させたまま裏を掛ける方法はないだろうか?
歩きながらホムリは考えを巡らす。
「んー、だけんまだ急ぐような事でもないし2人の話も聞いておくかな」
改めて作戦を練るのはそこからだ、と彼女は切り替え、宿へと真っ直ぐ向かうのだった。
★
素材の安定した質と供給を持続させるのは骨の折れるものである。
人口という観点から見れば確実に勿体ない人の使い方となる。作業を分担し更にそれの確認作業を行う。それは人材の無駄遣いと言ってもいいだろう。
ならば技術を用いる必要があるがそれには人と時間が更に必要となる。技術の発展に労力が掛かるのは当然だ。
世の中そう上手く回らないものだ。
人を育て、一人前にして、数を増やし、と全員が同じ目標ならばそれもまたできるのだろうが……こんな自由な世の中である。
必要のない技術をわざわざ覚えたいと思う者もそうはいない。やりたい事、やるべき事に時間を費やしたいのは世の常である。
ならばどうするべきか。
単純明快な答えが1つある。
できる人に頼めば良い。
同じことが出来る人間は条件を緩めれば緩める程にそこら中にゴロゴロといるものである。
商会はそんな人達に見返りを与え、冒険者と契約をしている。
ある程度の見返りがあるならばそれに見合った労力ぐらいは冒険者もまた担ってくれるのだ。
どこの商会もやっている事ではあるし、中には複数の商会と契約する冒険者もいる。そこは商会の契約の緩さにも寄るのでなんとも言えない。
そんな中、王都では最も冒険者と契約を結んでいるのがヘイナン商会である。
ミヤナはそのヘイナン商会について調べていた。
ヘイナン商会と契約している冒険者が多いのは何故か、その秘密を知る必要があった。
「んにゃ、これはあまりにも杜撰だにゃ。秘密もにゃにもにゃい」
知る必要があり、簡単に知ることができてしまったミヤナは少し拍子抜けしていた。
商会の窓口を覗ける場所に少し張り込み、ホットミルクを流し込んで呆れた声を溢す。
まあ、確かに考えてみれば当然と言えば当然の事だ。
冒険者の数はピラミッドの形をとっている。
S級が少なくE級が圧倒的に多い。
ヘイナン商会が契約している冒険者は階級の低い冒険者が大多数を占めている。
これではあまり利益にはならないだろう。
ならばそれを続けられるなんらかの要因が存在するという事だ。
そして、階級の低い冒険者達により、1番持ち込まれていた薬草類が目に入る。
遠目からでは質の良し悪しなど分かりやしないが、手の付け所はある程度、定められるというものだ。
「……これは売られてる薬の類を調べた方が良さげだにゃ」
やるべき事は決まったとミヤナはホットミルクを空にして会計を済ませる。
「店員さん」
「はい! 10イルです」
「コクもあり濃厚、滑らかな舌触り、喉から鼻腔へ抜ける芳醇な香りにふくよかな甘味。適温で火傷の心配はなし。ホッと一息つけるこの優しい時間は幸せな一時そのもの」
「え、えっと……」
真剣な顔付きで語るミヤナに女性店員さんは戸惑い気味である。しかしそんな事は気にも留めず銀貨を1枚渡した。
「素晴らしいホットミルクだった。残りはチップで」
そう言って立ち去るミヤナはこれ以上ないぐらいに凛々しくカッコ良かった。
口元についた白い髭があったってその事実は変わらない。口調もつい素に戻る程の出会いを彼女は果たしてしまったのである。
店員さんはそんな彼女の背中を見送り、胸の内に何故か火がついてしまった。尚一層ミルクを中心に力を入れていこうと店長に進言する事を誓った。
「お前、急にどうしたんだ!?」
「私は見てしまったんです。こんなにも些細な事で幸せになれる人間を! その幸せを、私は護りたいんです!!」
「だから喫茶店に何を求めているんだ!」
「暖かく幸福に満ちた献身を!」
「質問じゃねぇよ! お前、職間違えてるよ絶対!」
後にそんな一幕があったとかなかったとか。
さて、そんな事よりもミヤナの調べ物である。
彼女の調査は順調とは言い難かった。
まず、冒険者が持ち込んでいた薬草だが、ミヤナにはどのような種類かはわからなかった。
いや、わからなかったでは少し誤解を招くだろう。あまりにも種類が不揃いだった為に特定できなかったが正しい。
無論、薬草にもいろいろ種類があるだろう。それも数え切れない程に。
たとえ同じ薬であったとしても、同じ効能があったとしても、使われる薬草や薬草の活用法が異なる事などザラによくある事ではある。
しかしだ。
「んー、にゃ〜んだか利益に繋がるルートに結びつかにゃいんだよにゃぁ〜……。流石に範囲が広かったかにゃ?」
歩きながら呟き、むむ〜と唸る。
にゃんだかなにゃー、と首を捻り、2本の尻尾を揺らす。
「範囲が広い……んー? んにゃ、視野が狭いのか……植物だものにゃ。植物植物、植物というと……毒、薬、食、鑑賞」
それなら確かに利益にもなりそうだ、とミヤナも納得はしたが、どうにも腑に落ちない。
しかし、別に薬草が利益の主力ということもないのだろうという事は頭の片隅に入れつつ、では何故わざわざ買い取るのかというのもある。
「研究、かにゃ? まあ、ある程度の執着はあると見て良いかもにゃ」
ともかく何故買い取るのか。いまだに疑問ではあるが必要だからである、と。今はそれだけわかれば良いとミヤナは頷く。
急ぐ時間ではない、と考えを巡らせながら宿への帰り道を歩く。
目的を見失ってはいけない。それの優先順位も大事だ。
わざわざ要らぬ秘密を探る必要もないだろう。
「にゃるようににゃる!」
★
どんな世界にも闇は存在するものだ。
スポーツの世界、売買の世界、情報の世界、人の世界、常識の世界、異界に異世界。
どんなところにだって存在する。その界隈に深く潜り込めば潜り込む程にそれは色濃く現れるし、馴染んでしまうものである。
光があれば闇がある。そう言うものだ。
我々は光に当たり影を創り出す。
影差すところに入れば闇は深まる。
故意であれ、過失であれ、自覚があろうがなかろうが何も変わりやしない。
「いやはや、えらいけったいな集団がおるもんやんなぁ」
コヅミは王都の近くにある東に位置する森の中でとある集団を木の上に腰掛けながら眺めていた。
鈴を転がすような声で頑張り屋さんが
クスクスと笑いながらいつものように口元を隠している。しかし、目の前の集団を見つめるその目はまるで笑っていない。
彼女はアルドメル商会を調べていた。アルドメル商会は冒険者からの買取に頼らない商会である。自分達で素材を取り、自分達で加工もする。
そして、それを安く尚且つ高品質に提供する。
素晴らしい心掛けではないだろうか。
言ってしまえばお客様第一とも言えるだろう。
小さかった商会が大きくなり、王都でも有数の商会に上り詰めたのもそれを続けてきたからだろう。
続けてこれてしまったのだろう。
「……優秀なんでっしゃろなぁ〜、ほんに」
次第に大きくなりだんだんと無理に無理を続けてきたのだろう。
「おい、今日のノルマ間に合いそうか?」
「……ちょっと厳しそうだなぁ」
「帰れなそうだ」
「ああ、でなきゃ明日の作業が間に合わん」
「仕分けに乾燥させる分にそれから……いろいろ」
「やめろ数えるな、気が遠くなるだろうが」
「明後日は魔物も仕留めないといけないんだぞ。なんでこうもギリギリなんだ」
無論、効率化を図る為に人も数多く雇ったはずだ。
商会が大きくなっていくにつれてその中で上下関係もできただろう。
ある程度採取された物が集められた場所に1人それを見ている人がいた。
「おい! これじゃ間に合わないぞ! 何をやってる!」
おそらく上司なのだろう薬草を探す彼らの表情が少し強張る。
その上司はなにか指示を出すでもなく、ただその日の成果を見るばかりである。
とはいえそんな事を今更気にする彼らではない。
溜息が出てしまうのは仕方がないが。
「にしてもよ、最近いくらなんでも薬草の類いが少なくないか? これじゃ魔物のノルマの方がまだ楽ができる」
「まぁ、値上がりしてるのも頷けるな。原因は有名だが、知らないのか?」
「いや、聞いてないな。最近家に帰ったらすぐ寝てるからな」
「はは、マジでお疲れだな。実は最近、冒険者がこの森に集中してるんだ」
「いや、だからなんでだよ」
無意味に勿体ぶる話し方に少し苛立ちを含ませて男は問い詰める。
「せっかちだなぁ。まあ、あれだ俺らもなんだが北の森の方に行けなくなってんだよ」
「ああ、通行が規制されたのか……。王都の近くで盗賊でも出たのか?」
「ははは、そんなアホな盗賊がいたら見てみたいもんだけどな。それが実はな竜族の群れが抗争を始めたらしい。それも3つもな」
「なるほどなぁ。それじゃあしばらくはこの調子か……。せめて給料上がらねぇかな」
「無理な話だな」
力なく笑い、上司に見つかる前に手を動かし薬草を探す。
昔と違い、今やブラックな職場と化してしまったアルドメル商会。
コヅミはいろいろ見聞きし、ただ面白くなさそうに「ふーん」と溢す。
彼等の境遇には特に同情はないがやはり面白くないとも思ってしまう。自業自得だとしてもコヅミやはりそう思う。
ならば自分で面白くしてみよう。利用できそうではあるのだし、と彼女は判断した。
「ホムリはんらの報告やと……まぁ、無理やない、か」
アルドメル商会の情報も必要なものを手に入れ、ゆったりと考えを巡らせる。
木に寄りかかり、尻尾を揺らし、日が暮れ始める頃には帰路に就く。
彼女の考えがある程度固まってきた時、ふと彼女の口からこんな言葉が漏れ出ていた。
「あとは、いつまで抗争が続くか、やろなぁ」
★
さて、3人が王都に訪れ調査を始めて1週間程が過ぎた辺りで彼女らの計画は固まり次の段階に移った。そうしてそのまま計画を順調に進めていき、ひと月と少しが経とうとしていた。
ここまで収穫らしい収穫もなく、お金も大した稼ぎもなく、かと言って冒険者ギルドで依頼を受けることもなかった。
しかし、彼女らの表情に憂いはなかった。
彼女らの計画の影響は実際の所、そんな大きなものではない。
しかし、その計画の進行に伴って少しだが困る人と得する人が出てくるのは確かだ。
そんな影響にいち早く気付いたのはとあるしがない商会の女性店員さんであるユマ・サエナだ。
よく世話になるお婆さんに薬を売り、そのついでにちょっとした世間話の際に違和感を覚えたのである。
曰く、ここの薬は安くて、効き目も良く安心である。
そういう話があったのである。
確かにここ最近は主に薬やなど薬草の使われる商品が良く売れている。
それも爆発的にと言ってもいい。
それらを作っているのは上司である会長ではあるし、どれも自慢の一品ではある。
近隣住民の信頼を勝ち得ているのは確かに喜ばしい事だが、いくらなんでも急過ぎる。
彼女は自分の上司に話を聞いてみる事にした。
アルフレッド・バライ。
バライ商会の会長である。
現在は、彼と彼女の2人で小さな店を切り盛りしているがいずれは大きくしていきたいと良く話をしていた。
ユマはコンコン、とドアをノックした。
「アルフ、入るよ」
「どうぞ」
椅子に腰掛け書類に目を通しながらアルフレッドはユマに視線を向けると笑みを浮かべた。
「どうしたの、ユマ?」
「最近、売れ行きがいいでしょ? 評判も良いみたいだしアルフがなにかしたのかなって」
「自分はなにもしてないと思うけど」
「でも何かは知ってるんじゃない?」
ユマにそう問われ、アルフレッドはそういえばと、心当たりがないわけではないと言う。
「最近、薬草が不足して値上がり気味でしょ?」
「うん、私達はあまり値段を弄らずに売ってるけど……あれはあれでいいの?」
「大丈夫だよ。最近妙にたくさん売り込んでくる子たちがいてね。前よりもたくさんあるんだよ」
「それはよかった、けど」
「それに、薬が買えなくなったら困るじゃないか。それでその子達がここを宣伝してくれてるらしいんだよね、何故か。多分そのおかげ」
「……その人達大丈夫なの?」
ユマは不安になった。それだけで人がこんなに増えるだろうか。
その人達がまともなのかもわからない。
「良い人達だよ、みんな可愛いし」
「…………うん、そっか。ありがとね」
ユマは静かに退室した。
アルフレッドは絶対に騙されているという確信めいたものを胸に。
彼女は使命感に駆られ徹底的に調べる事にした。これで多額の借金でも背負わされたらたまったものではない。
しかし、最近の店は本当に忙しい。
人を増やさないと回らないだろう。
これでは調べる時間を作ることもできない。
ユマはそう考えていると背後からドアが開けられる音がした。
「あ、ユマ! 忘れてた、最近忙しいでしょ。人を増やす当てが出来たから、楽できるよ」
「……えっと、どっから湧いたの、その人達?」
「ほら、さっき言った子達の紹介だよ」
「そ、そっか〜あはは」
ユマの決意はより強固になった。
店を乗っ取られる可能性まで浮上し始めたと顔を青くして。
そんな訳でユマは容易く休日を取ることができた。新しく入ってきた人達が予想以上に優秀で、覚えが良かったのもあるだろう。
尚一層不安になるが、そこは割り切り行動する。
調べる必要があるのは3人のE級冒険者である。
「アルフはE級って知ってるのかな? 信用もへったくれもないよ!」
しかし、今騒いだ所で遅いのだ。迅速に調査を始めるべきであった。
とはいえこそこそするのは彼女の性分ではない。堂々と本人に話を聞こうとユマは立ち上がった。
とはいえ事前に少し彼女らの事は調べた。
早速突撃である。
★
——1人目、ホムリ・ワイリスの場合。
彼女の評判はかなり良い。
人好きのする笑顔を浮かべ、いつの間にか彼女ののんびりとしたペースに巻き込まれてしまう。
およそE級冒険者とは思えない程の信頼を街の人から寄せられている。彼女の無害そうな態度や仕草がよりそうさせるのだろう。
しかし、私は絆されない。
というわけで、突撃です!
こんにちは!
すみませんねぇ、時間を取らせてしまって。
「あ、こんにちは〜。大丈夫だよ、えっとたしかユマさん、だよね? アルフレッドさんには世話になってるよ」
いえいえ、こちらこそ〜。
今回は私がホムリさんの事を知りたいなという事で少々お話しができればなと思いまして。
迷惑ではなかったですか?
「全然大丈夫だよ〜! でもなんでメモとペンを? なんだかジャーナリストみたいだねぇ」
ええ、ええ、そうですとも。私はこれでも
その名残のようなものです。
今はアルフと共に頑張っていきたいなと思っています。もちろん、副業でもあるわけですけどね?
「なるほどなぁ。しょんない! ぼくも雰囲気に合わせてなんでも答えちゃうよ!」
お、ノリがいいですね!
それでは早速。
ユマ・サエナの『インタビューは突然に刺激的にっ!』イェーイ!!
「あはは、みゃーちゃんの好きそうなノリだよ」
さて、ホムリさん。
聞いた話によるとなんでも王都に来られてそんなに日が経っていないとか?
「そうだね〜。そう言えば観光もしてなかったっけ」
慌ただしい日々だったんですね。
でも、そんなホムリさんですが何故か街の人からの信頼が厚いようです。
なにか特別な事でもしてるんですか?
「お、嬉しい情報じゃん! だけんなんもしてないだよ。みんなが良い人なだけだら」
またまた、ご謙遜を。
良く街の人の手伝いをしていると聞いてますよ?
それで冒険者達の依頼が減ってるとも聞いています。
何もしてないという事はないのでは?
「でも特別な事はしてないら?」
なるほど、それはたしかにそうですね。
良い媚の売り方です。
やらない善より、やる偽善とも言います。
善行は善行ですよね。
「あれ? 急に辛辣だね。まあ、ぼくも同意するけどさ」
それでは、ホムリさん。
有難い事にウチを宣伝してくれているようですね。
「そうだね〜。あそこは良い所だもんで当たり前の結果だよ」
ええ、ええたしかに良い所です。
でも急過ぎるんですよ!
普通に宣伝をした所でああはなりません。一体どんなカラクリを使ったんですか?
「あ、それ聞いちゃうんだ? まあ、いいよ。なんでも答えちゃう。まずぼくってさ、無害そうじゃんね?」
え、なんですか急に。
たしかに一見無害そうではありますけど。
少なくとも、悪い印象はないですね。
「そう、毒にも薬にもならない人畜無害そうな人ってさ、すごい便利でね? そんで悪意にも善意にも付け込める素敵立場な訳だよ」
そ、そんな常識みたいに言われても困りますよ。知りませんよそんな事。
「とにかくそうなんだって」
まあ、はい。
そうかもしれませんね。
「だもんでぼくは付け込める所に付け込んだだよ」
と言いますと?
「そうだな〜。例えばさ、ぼくが売った素材をより高く買ってくれる所があったらどうする?」
そりゃそこに売込みますね。
「だら? ぼくもそれをやっただけ。そんで仲良くなった街の人達にバライ商会に素材を売ったらグリルバレル商会よりも100イルも高く買ってもらえたんだ〜、って宣伝しただけ」
……でもそこまで効果ありますかね?
「いい?
は、はい。
「ぼくは
……あ、あれ……?
「善意って便利だよね。ちょっと悪い所を垣間見ると妙な反抗心とか嫌悪感を抱くんだよね」
……風評被害を加速させてい、る……っ!?
「直接宣伝するよりは効果的じゃんね?」
客を丸ごと強奪しにかかってるじゃないですか!?
え、バライ商会、敵視されてません?
敵愾心抱かれてません?
「大丈夫大丈夫、ライバル視、ライバル心♪」
いい笑顔で耳障りのいい事言わないでくださいよ!
なんて事してるんですか!?
直ぐにやめてくださいよ!
「ええ、宣伝料は貰ってるしキャンセルはちょっと……」
アルフはなんて事をしでかしたのよ!
「大丈夫だら。支店を1つ赤字にしたくらいで本気にはならないよ。ちょっと様子見するぐらいだよ」
でも、でも……。
「まあ、今回はこのぐらいでいいにしよっか。この後みゃーちゃんとコヅミちゃんの所にも行くら?」
はい……。そうですね。今日はありがとうございました。
「うん! このまま良い付き合いができるのを期待してるよ!」
あ、あれ、私は今……脅されている……?
★
——2人目、ミヤナ・デレンデの場合。
今回、彼女達にいろいろ聞く機会を作ったのは彼女達が怪しかったからであり、悪の手先からバライ商会を護ってやると息巻いていたからに他ならない。
しかし、ホムリさんとの対談を経てもう既に手遅れなのではないだろうか? 手の付けられない所まで足を踏み入れてしまったのではないか、と。
その気持ちがチラついて仕方がない。
いや、ホムリさん悪い人ではないんだけど……良い人でもないというか。心を許しちゃいけない気がする。
と、とにかく、次はミヤナ・デレンデだ!
彼女の評判は……意外な程目立ったものはない。良いとも悪いとも言えない程に行動していないのだ。
それにホムリさん以外の人の宣伝活動もよくわからないのよね。
とりあえずお気に入りの喫茶店にいると聞いたんだけど……。
「店長を呼んでもらえるかにゃ?」
……なんだか嫌なタイミングで見つけてしまったわね。
「このホットミルク、いつもと違うように感じたんだけど、別の人が入れたのかにゃ?」
ホットミルクで店長呼びつける人を初めて見ました……。
店長さんも困惑の表情を……あ、でもちょっと納得してるようにも感じられる。
「そっか、あの店員さん辞めちゃったんだ。……たしかにあの素晴らしい腕前はこんにゃ所では勿体にゃい……」
すごく近寄りがたい。
2本の尻尾もまただらんと力なく垂れ下がっています。
あ、あのー……ミヤナさんですよね?
大丈夫ですか?
「んにゃ? おお、待ってたよ、ユマっち!」
おお、ミヤナさん凄まじい距離の縮め方ですねぇ。一瞬、知り合いかと思っちゃいましたよ!
「にゃんだよぉ。そんにゃ他人行儀に接しにゃいでくれよ。みゃーの事は好きに呼んでよ!」
初対面で水臭いって言われるようなもんですね、これは。
でもまぁ、仕方ない。
ええ、仕方ないですとも……。
こほん。
今日はよろしくね、みゃーにゃんっ!
「お、おぉ……っ! みゃーは今、ユマっちの愛称を付けるセンスに感服してる。感動に打ち震えている……っ!」
はっはっはっ!
それほどでもあるかもですね!
「にゃっははは!」
おっと、こうして話すのもまた良いですけど私は自分の用事を済ませなければなりません。
早速、いいでしょうか?
「もちろん! ユマっちは任された仕事をキッチリやらにゃきゃ気が済まにゃいタイプと見た」
あはは、お恥ずかしい。
そう言われればそうなんだけど、ただ仕事を溜めたくないだけなんですよね。
「いやいや、気にしにゃいよ! それはこづみんと気が合いそうでにゃによりだよ」
ああ、コヅミさん仕事できそうな感じしますもんね!
それでは早速!
ユマ・サエナの『インタビューは突然に刺激的にっ!』イェーイ!!
「イェーイ!!」
さて、みゃーにゃん?
「はいはい」
ホムリさんがわかりやすくバライ商会の宣伝活動をしてくれている一方で、みゃーにゃんとコヅミさんの宣伝活動の実態がまるでわからないんです。
恥ずかしながら少し調べては見たのですが……。
「む、にゃるほど。ほむりんはわかりやすいのが好きだからにゃ。まあ、みゃーは特に宣伝らしい事はしてにゃいけども」
そうなんですね。
でも、そうですよね。宣伝って言っても街の人にちょっと声を掛けるだけで特別な何かなんてしないものね! 普通は!
「その通りだにゃ〜。みゃーはちょろっと調べ物ついでに宣伝した程度だし、そんにゃもんだにゃ」
ああ、ですよね! よかったです!
ちなみにどんな調べ物をしていたんですか?
「薬草についてだにゃ。にゃかにゃかに興味深いものだにゃ、あれは」
薬草、ですか。
アルフもたまに使いますね。
アルフはなんでもできますからね!
薬作りに大工、鉄の扱いもまたできる。まだまだな部分ももちろんありますが、その中で薬草の扱いはずば抜けています。
私もたまに教えてもらっているので話はできる方だと思いますよ? それなりに付いて行ける自信があります。
「そうにゃのか? にゃら薬の中で最も使われているものはにゃにかわかる?」
えっと、解熱鎮痛薬やポーションなどの類いじゃないですかね。私、店員ですし大体そんな傾向だったとおもいますけど。
「一般人と冒険者に利用されてる薬だにゃ。それにゃら、薬剤と魔創薬の違いも分かるにゃ?」
一般常識じゃないですか。店内に入れば値段の違いで一目瞭然ではあるけど、魔力の濃度ですね。魔力の有無と勘違いしがちですけどどんなものにも魔力はありますからね。
まぁ、人の魔力の有無というなら間違いではないですが……。
「そうだにゃ。そんにゃいろいろにゃ薬がある中でどの薬にも使われている薬草があるんだけど、どの薬草か分かるかにゃ?」
ああ、最近不足してるらしいリリホワですか?
根、茎、葉、花などで効能は違ってきますから汎用性が高いって言ってました。
調合には他の素材も混ぜなきゃですけど結構リリホワの量がいるんですよね。
「商会によっては調合の内訳は変わるけどリリホワは欠かせにゃい素材ってぐらい利用されてる。でも実際にはそうではにゃくてただの怠慢だった」
まあ、怠慢と言えば怠慢なんでしょうね。研究はあまり進められてはいないみたいです。それだけリリホワの汎用性とその扱いやすさが突出しているみたいです。
「だからリリホワが足りにゃくにゃって薬が値上がりする事態ににゃるんだ。でもそんにゃ
あ〜、だからあそこはあまり値上がりしてなかったんですね〜……。最近、少しずつ上がってますけど。というかみゃーにゃんヘイナン商会って普通に言った?
「名称を間違えるのは失礼じゃにゃいか!」
なんでしょう。正論ですけど説得力がイマイチ足りないですね……。
あれ、でもうちにかなりの量のリリホワがあったような……?
「にゃははは、当たり前だよ。みゃー達が採りまくった上にヘイナン商会と契約してる低級冒険者にバライ商会にリリホワを売るように宣伝しといたからにゃ!」
何故品薄を助長するんですかっ!?
あと騙すような事はしてないんですよね?
「売りたくにゃるようには言ったかにゃ? まあ、騙してはいにゃいと言えると思う。むしろ助けたぐらい」
不安になる言い方ですね!
一体なにしたんですか!?
「にゃははは、まだ秘密だよ。でも、低級冒険者はちょろいにゃ」
自分を棚に上げながら不安を煽らないでくださいよ……。
これでヘイナン商会にまで睨まれるようになってしまったんですね。なんで他の商会を敵に回すような行動を……。良い関係を築きたかったです。
「ゆまっちは心配性だにゃぁ〜。ライバル意識を植え付けて切磋琢磨してこその良いライバル関係じゃにゃいか!」
敵意を向けて切磋琢磨を宣うとか敵対関係の構築に他ならないと思うのですがそれは……。
というかライバルって言葉はそんな万能じゃないんですよ!
ライバルって言っとけばなんとかなると思ったら大間違いだから!
「ほむりんがライバルで通そうって」
っかぁ〜〜っ!!
これだから素性の知れないE級冒険者は困るんですよ!
読めましたよ。これ、コヅミさんもどっかの商会を敵に回してますね?
宣伝活動ってこんな物騒だったかなぁ!?
あれ? バライ商会詰んでませんか?
どこも頼るとこないじゃないですか!?
孤立無援じゃないですか!
「にゃにを言ってるのさ、ゆまっち。みゃー達は味方だぞ!」
あー、なるほど。
これは脅迫ですね。
チンピラの『オレ達友達だろぉ?』並の有無を言わせないタイプの奴。
拒否権ないじゃないですか!
「にゃんだかゆまっちがヒートアップしてるにゃ。頭を冷やしてからこづみんに会いに行こうね。ゆまっちは考えすぎにゃんだよ」
………………うん……。
「……可愛いにゃ……」
★
——3人目、コヅミ・ルロイズ
みゃーにゃんの優しさが何故か心に染みます。いつまでも甘えられないから別れてきました。
いろいろ考えた結果、これはあれね。
どうも私は『お前は知り過ぎた』って言われる立ち位置にいる気がする。
そして、きっとこの後会う予定のコヅミ・ルロイズことコヅミさんにも脅迫されるんじゃないかしら。
とりあえず会いに行くほかない。
こ、こんにちは〜……。
「……なんや、随分とまぁ、やつれとるなぁ〜」
そうですね。
未来に想いを馳せていたのですが、どうも四面楚歌な未来予想図を見せつけられてしまって……。
「みんな大変な時期なんでありんしょうねぇ」
ぐぅっ、しらを切る訳ですか。ええい! わ、私も覚悟を決めました!
という訳でしばらくは付き合ってもらいますよ!
ユマ・サエナの『インタビューは突然に刺激的にっ!』イェーイ!!!!!!
「やけっぱちになっとるなぁ。随分とやられたんとちゃう?」
うるさいですよ!
前の2人にペース握られっぱなしだったので今度は私が主導権を握ってやります!
覚悟してください!
「おー、おー怖い怖い。お手柔らかに頼んますなぁ」
その余裕の笑み、ぶち壊してやる!!
「余裕ない人が目の前にいはると相対的にどうしてもなぁ……」
ええい!
たったと始めますよ!
さて、コヅミさん、あなたはどこの商会を敵に回してきたんでしょうか?
「酷い言い掛かりやん。こん、いけず」
そんなわけないでしょう!?
他の2人と同じ…………ッ!?
決してライバルとかそういう話じゃないですからねっ!?
「そうでありんすねぇ。いわば好敵手、やんな?」
言い方の問題じゃないんですよ!
食う側と食われる側の関係なんですよ!
弱肉強食! 自然の摂理! 自然淘汰!
「随分と大きくでたやないの」
ちっがいますよ!?
なにを聞いてたんですか!?
「ああ、勝てば官軍負ければ賊軍、勝者の論理、優勝劣敗……みたいな感じやろか?」
類語とニュアンスの違いでこっち側を強い立場に置こうとしないでくださいよ!
わざとですか、わざとなんですね? 早速遊ばれてるんですね、私。
「ほな真面目な話、ほんまはわかっとるんやろ? 目を逸らさんと言ってくんなまし?」
…………アルドメル商会、ですよね……。
「ほんならウチの宣伝活動も察しが付きんすね?」
働いてる人に直接宣伝するバカがいるとは思いたくなかったんです!
そんなのただの引き抜きじゃないですか!?
あそこノルマが厳しいって聞いた事はありますけど、あなた達が薬草を刈り尽くしたからじゃないですか!?
マッチポンプで従業員増やされても……っ!
3つの大きい商会に睨まれるとかバライ商会はもう終わりなのでは?
「3つの大きい商会にライバル視されるなんて余程すごい商会なんやろなぁ……。そういう噂を流しとる」
そりゃお客さんも増える訳ですよね。
お陰でたしかに儲かりました。
でも、こっからどうするつもりなんですか……。
うちの商会を無理矢理押し上げた分、先がないんですよ。道無き道を押し進められていつの間にか崖っぷちなんですよ。
「橋を架ければええ」
そんなうまい話がある訳ないじゃないですか。
「それがあるんよ。耳を貸し」
まあ、聞くだけならただですし。
……ふむ、はぁ。……な、なるほど。
そ、そもそもそんな事できるんですか?
あなた達E級冒険者じゃないですか!
そんな博打のような真似できませんよ!
「後がないんやろ?」
……前の2人がちょいちょい脅迫してくるとは思いましたけど、商会ごと脅してたとは思いませんでした。
私達はそれに賭ける以外の道はないですけど私達にもちゃんと取り分はある訳ですよね?
「もちろんでありんす。ウチらとしてもバライ商会には躍進してもらわなあかんからなぁ〜。それによく考えおし……」
うちの躍進があなた達にとってのメリットで、こちらを裏切る意味がない、と。それに、よく考えれば……。
「ウチらが主導で動くさかい、これ以上のリスクはありんせん」
それは、たしかに……。
博打というよりは福引に近いそれ……。
失敗しても損はないし、得すれば儲け物。
つまり、ここまで追い込んだのは福引を引かせるため、と。あまりにも酷い発想ですけど目を瞑りましょう。
こうなったら
ふふふ、報酬はたっぷりともらいますからね……ッ!!
「構いんせん。ふふ、現金な人やなぁ。ホムリはんが気に入る訳や」
はっ、どうだか!
ともかく今日はありがとうございました。
アルフの説得は任せてください。きっちりと仔細は伏せますのでご安心ください。
「よろしゅうたのんます」
……ふぅ、今日は疲れたね。
とても濃い3人だった。
油断できないわね。それになんかちょいちょい彼女達から妙な視線を感じるんだよね……。
ともかく、バライ商会が潰れないためにもアルフを嵌めておこう。そもそもアルフの軽率な行動が招いた結果なんだから少しは痛い目にあってもらわないと私の気が済まないわよ!
★
ユマ・サエナが立ち去る瞬間。
奇しくも3人はそれぞれの時間、場所が違う中で彼女の背を眺めていた。
観察するように、考察するように、塾考を重ね思考を巡らせ、次第に視線は虎視眈々と据わるように。
世の中争奪である。情報が鍵を握る故に正しい取捨選択が迫られる。
世の中有限である。早い者勝ちである故に決断ある行動力がいる。
世の中損得である。優先されるべき感情と理屈は自覚し理解すべきである。
3人は小さく小さく、口にした。
「「「欲しいなぁ〜(にゃぁ〜)……」」」
人材とは希少価値なのだ。
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