討伐依頼の誘い

 一晩空けて、ジンキ達はいつものように依頼をこなし、最高評価を頂くとそのまま隣の酒場へと移動する事となった。

 もちろん、ジンキの強い希望にフラン達が根負けした形だ。

 しかし、居心地が悪いわけではないというのは彼女らも認める所だ。


「確かに楽しい雰囲気ではあるよね。料理も美味しい」

「だから言っただろ、フラン。ここはいい所だって」

「いや〜、問題なのはジンキさんのはっちゃけぶりなんじゃないかなぁ? アレは面白かった!」

「うぐっ……」

「そうだよ! でも面白いだけで済ませられないよ。私達は一応、目的を持ってここフェベレルに来てるんだから!」

「「名目上はね」」

「実態であり実情だよっ!!」

「最近調子いいんじゃない?」

「フランちゃん、キレが増してきたねっ」

「変な所褒めないで……っ!」


 なんとも言えない疲れた表情のフランの出来上がりである。

 休憩がてらに寄っただけなのに依頼より疲れるとはこれ如何に?

 フランは嘆くがそれはいつもの事なのか2人は特に気にせず会話を続行。


「そう言えば昨日、2人は何してたんだ? あの後、結局疲れて寝たからあまり話せなかったし」

「うーん、その前にジンキさんは何をしてたのかな?」

「街全体を散策して、後は2人が見た通りだな。……言わせんな恥ずかしい」

「「本当に恥ずかしい……」」

「……申し訳ない」


 お労しい、と2人が眼を覆いながら天を仰ぐ。

 無論、本気で言ってるわけではないがジンキをいじってるのは間違いなかった。

 気まずくなり、ジンキは何をしていたのか再び質問する。

 先に答えたのはメラニーだ。


「私は図書館で色々読んでたなぁ。その後はあみるんから電話があってずっと話してたよ。なんでも暇だーって言ってたけど」

「へー、どんな話してたんだ?」

「おや、気になります?」

「……そうでもない」


 メラニーの顔と態度に思うところがあったのかジンキは拒否した。

 しかし、メラニーはまたまた〜しょうがないなぁー、まったくっ! と無理矢理話を続けた。


「ジンキさんは神話には興味あります?」

「……興味ある。ちょっとだけ」

「その悔しそうな顔が見たかった」

「くっ!」

「メラニーは本当に性格が悪いよね」

「失敬な! TPOはちゃんと弁えてるよ!」

「「尚更タチ悪い……」」


 そう言われても笑顔を深めるメラニー。

 その後、アミルに話した内容をジンキに伝えると彼もそしてフランもまた面白そうに話を聞いていた。

 メラニーの話が終わるとジンキはフランに聞く。


「フランは昨日何してたんだ?」

「私はポイナちゃんのおすすめの店を巡った後はずっとセイリンさんと一緒だったかな」


 そうか、とジンキは頷きメラニーもほうほう、と耳を傾ける。

 フランは自分でセイリンの名前を出すと何かを思い出したように声を跳ね上げた。


「あ、それで訊こうと思ってすっかり忘れてた。その時に話してたんだけどジンキくんはやっぱりダンジョンには挑戦するのかな?」


 フランがそう口にした時、メラニーとジンキは見るからにテンションが上がるのがわかった。

 正直、失念していたとジンキは笑みを浮かべる。


「そうか、ダンジョン……。ぜひ挑戦してみたいな」

「テンション上がるねっ!」


 嬉しそうにはしゃぎだす2人をフランは落ち着かせる。


「その内、行くのもアリだよね」

「フランちゃん、どんなのがあるのかな?」

「私も詳しい事は知らないよ」

「そっかぁ。行く前にちょっと調べる必要があるかもね!」

「一応、ダンジョン都市って呼ばれる所もあるらしいけどね。近くにあるとお金にはなるみたいで発展はしやすいのかも」

「ふーん……ってジンキくんどしたの?」


 急に黙り込んだジンキを見てメラニーが問い掛ける。考え事をしていたのだろう。

 ジンキはああ、と生返事をすると1つの提案をした。


「ダンジョンに行くのはもちろんいいんだけど。……ダンジョンを創るってのはどう思う?」

「「…………」」


 ジンキのその提案は2人に一考させる時間を与えた。

 最初に声を発したのはフランだった。


「どう、なのかな……。労力も時間も馬鹿にならないと思う」


 少し否定的な意見だ。

 それもその筈だろう。人工的なダンジョンなど、まず馬鹿げているとしか言いようがないのだ。

 しかし、無理だとは言わない。

 少なくとも形にするぐらいならば間違いなくできる。


「おもしろいって思うんだけどさぁ。そこに回す人員いるかな?」


 メラニーの疑問もまたもっともである。

 ダンジョンを創ると言ってもやはりどのようなものにするかを決めなければならない。

 地下に繋げていくのならばどのくらい掘るのか、どのような空間にするのかなどと考えなければならないだろう。ただ掘ればいいというわけではない。

 それにそもそもアーカディア王国には国民の数が少ないのもある。

 しかし、ジンキはそんなメラニーにあっけらかんと答える。


「え、いるじゃん。暇な奴」

「え?」

「てか、メラニー自身が言ってたよな?」


 そう言って、フランに同意を求めるジンキ。

 フランは苦笑を浮かべて言う。


「い、言い方に悪意を感じる……」


 しかし、否定はしていない。

 フランの様子を視界に入れて、ふぅ、と軽く息を吐き出すとゆっくりと天を仰ぐ……。


「ごめんね、あみるん。擁護できないや……」


 アミルの運命が決定した瞬間である。


「なんだろう。確かにアミルの発言が元なんだけど……」

「うん……釈然としないよね」



「どうしたの、アミル? ボク、まだ何もしてないと思うんだけど……」


 両手をわきわきとしながら今にでも飛び掛かろうとしていたヒュール。

 しかし、ヒュールがアミルに気付かれる前から何やら不機嫌そうなのを見かけると、つい言葉を掛けてしまった次第だ。

 アミルは振り向き不機嫌そうな表情を更に不機嫌そうにする。


「さらりと、友達に……売ら、れた。そんな、気がする……」


 まだ、という言葉に気付きはしたがアミルはあえてツッコまなかった。

 というか今更感がすごい。

 そんなアミルの様子にヒュールは顔を傾げる。


「えっと……メラニーの事?」

「…………」


 ヒュールに言われ、熟考。

 バッと顔を上げ、


「やり、かねん……ッ!」


 その目には確信があった。

 ヒュールは肩を竦める他ない。


「ボクは君達の友情がイマイチわからないよ」

「持ちつ、持たれつ。自己犠牲、よりも、人身御供」

「……殴り合いの末の友情かな?」


 もっと業が深そうだな、とヒュールはこれ以上は踏み込まない事にしようとアミルを後ろから抱きしめた。

 無論、足下を埋められた。



 殺伐とした友情を見せつけられたジンキとフランだったが、アミルに頼む事はダンジョンの形だけでも作ってもらう事だ。

 ではその中身はどうするかという話になると、これは3人が話し合う事なく決定した。


「というか必要としてるよね、多分」

「だな。渡りに船って感じじゃないかな」

「じゃ、監視塔の皆さんにお任せっ、という事で!」


 既に魔物の図鑑についての仕事があるのだが、彼女らは主に魔物の進化や生態を主に調べている。

 必然的にその魔物を育てる場所が求められるのだ。

 監視塔のみでは流石に限界が早々にくるのだ。

 それならばダンジョンの環境などを彼女らに計画及び調整などをしてもらって、アミルに手伝わせるのが1番なのだ。

 それに図鑑に携わっているのは監視塔の人達だけではないので作業的に、そこまでオーバーワークになるという事もないだろう。

 アミルに関しては本当に暇らしいので特に気にする事はないだろう。本人的には少し不満かもしれないが……。

 さて、話もひと段落という所で彼らの元に1つの人影が近寄る。


「よお、色男。俺もご相伴に預かって良いか?」

「……一旦、持ち帰って検討しても?」

「そんな遠回しで見当違いな優しさじゃなくて素直に嫌って言ってくれよ、ジンキ……」

「冗談だよ。2人も良いよな?」

「問題なーし」

「うん」


 そこにいたのはカイルだ。

 3人の許可をもらった事で彼はテーブルに着く。

 前日、ジンキと共に酒を飲んでいた仲である。

 短く整えられた赤髪に、表情の豊かさと相まって熱血漢の様に見えなくもないが、意外にも彼の印象は熱苦しさよりも爽やかなイメージが強い。それは彼の表情にどこか柔らかさがあるからだろう。

 肌の色は色白だが、日焼けの為かほんの少しだが焼けていて健康的に見える。

 そして、その引き締まった質の良さそうな筋肉から実力のある冒険者だという事が窺える。

 フランは不思議そうに、メラニーは眼を少し細めて値踏みするようにカイルを眺めた。


「んじゃ、改めて。俺はカイルだ。まあ、なんだ。よろしくな?」

「あ、よろしく、私はフランで……」

「私がメラニーだよ!」


 自己紹介もそこそこにジンキは若干得意げにカイルへと話しかけていた。


「どうした、いきなり? やっぱ、この2人の可愛さに思わずってか?」

「馬鹿言え! 俺はセイリンちゃん一筋だ」

「一筋の男があのエロいお姉さんに夢中だったんだ?」

「ゔっ……」


 メラニーに痛い所を突かれたとカイルは呻く。

 しかし、振り払うように本題へと話を進めようとする。


「あー、んなこたぁ良いんだよ! それよりも本題だ!」

「「「え?」」」

「え、なんだよ? 俺が用事もなくただ話しかけに来ただけだと思ったのか?」

「「「うん」」」

「息ピッタリだなぁ。んなわけねぇだろ、どうなったらそうなる」

「「「友達いなそうだから……」」」

「ブッ飛ばすぞッ、お前ら!」


 カイルの額がピキリと苛立ちを表す。

 しかし、ジンキ達は止まらない。

 フランは慌てたようにガタリと椅子から少し腰を上げ、テーブルに手をつき。


「で、でもっ!」


 ジンキは恐る恐ると問い掛ける感じに。


「事実……」


 メラニーは逆に馬鹿にしてんのかと言いたくなるぐらいの真面目な顔で。


「だよね?」


 カイルは息を少し吐き出し、天井を見上げる。

 いや、まあ否定はしねぇよ?

 確かに少ないだろうさ。

 文句もいろいろ言いたい所だがコイツらを見ていると……。

 と、悶々と考えを巡らせるとチラリと3人覗く。


「「「…………(ジーー)」」」


 逆効果だろうなぁ……。

 カイルは少し賢くなった。


「なんか、お前らとの関わり方が少しわかったかもしれない……」

「一応、言っておくけどカイル」

「なんだ?」

「お前にボケは多分無理だ」

「期待してねぇけどなんで?」


 その問いはジンキではなくフランが答えた。


「才能、かな……」

「……俺は結構面白いと自負している!」

「そうなんだー。でも私達が全力でシラけさせるっ!」


 あまりにもあんまりなメラニーの発言にカイルはふっとクールに笑った。さながら俺は落ち着いている、至ってクールだ、と言いたげな様子だ。


「オーケー、わかった。喧嘩を御所望のようだなゴルァッ!?」

「やんのかっ、アァンッ!?」


 しかし、自然な流れでメラニーとバチバチメンチを切りあう。

 とはいえ、いつまでもそうしているのもなんなのでフランはメラニーの襟首を掴む事で手綱を取る。

 フシューッと威嚇をやめないまでもとりあえず話は聞こえるだろうと判断してジンキはカイルの用件を尋ねる。


「んで、結局本題ってのはなんだ?」

「散々話を逸らしといてそれはなんだか釈然としねぇな!」


 まあいい、とカイルはとりあえず話を進める事にした。


「つっても対した話じゃないけどな。お前らまだD級だったよな?」

「んまぁ、昨日言った通りな。後は魔物の討伐依頼を達成すればC級は目の前かな……多分」

「とはいえ昇格の条件は達成するよ」


 フランがそう付け足すとカイルは膝を叩き笑みを深める。


「そう、そこでだ。明日、俺と一緒に討伐依頼を受けねぇか?」


 ジンキは楽しそうだとは思った。

 しかし、自分だけでは決められない、と視線を残りの2人へと送る。

 フランはそれに気付くと自分の意見を述べた。


「私は良いけどカイルくんは他に仲間はいないの?」

「仲間、かぁ。俺は基本ソロなんだがよ。一応、合わせたい奴らも居るんだ。明日はそいつらもいる」


 フランは少し考えると構わないよ、と頷く。

 そして、ようやく解放されたメラニーは少々真面目な顔持ちでカイルに問い掛ける。


「答える前にカイルさん。少し確認したい事があるから手を出してくれないかな?」

「ん? ああ、良いけどよ……」


 そうして怪訝な表情でカイルが手を差し出すとメラニーはその手を取り、何やら指をするするとその手の上を動かしていく。


「あ、見つけた……えいっ!」


 右掌の親指と人差し指の間の部分。

 いわゆる母指球の上の方だろうか。

 そこを可愛らしい掛け声と共に指をつん、と軽く触れる程度に突いた。


「ッッっだああぁぁっ!? おっまえ、流したな!?」


 瞬間、カイルから悲鳴が上がる。

 涙目でメラニーに抗議するが彼女は何処吹く風とばかりに口笛をピューピュー吹いている。


「……流したって?」


 一連の様子を見ていたジンキだったが目の前で何が起きたのかよくわからなかった。

 そこでカイルが口にした言葉を借りて疑問を口にする。


「魔力だと思うよ、ジンキくん」

「いやでも魔力流したぐらいでああなるか?」


 フランが答えるもやはりジンキは納得できないでいた。

 するとまだ悶絶している状態から回復しきれていないカイルが呻きながら答える。


「魔孔に、だ。クソッ」

「えっへへ〜。て言っても流しただけじゃこうはならないんだよね〜、コレが」


 普通に流しただけではそうはならない。

 つまり、とジンキはスーワイアから教わった事を思い出す。


「想像力……イメージって奴か」

「そうなんだけど、それは少し回りくどいかな」


 それはあくまでスーワイアがわかりやすく言ってくれたものだ。その前に魔力に想像力を影響させる為にはもう1つの工程があるだろう。

 要は、だ。

 思考を行動に移すのには必ず自分の意思または意志が伴っているという事だ。


「つまり、魔力に攻撃の意志を込めればこうなるし、癒そうと思えばリラックスするけどね」

「こっちは明確なイメージじゃなくて漠然としてても問題がないから割と簡単にできるの」

「なるほどなぁ〜……」


 感心するしているジンキの横でカイルは机から顔を上げる。


「人が悶絶してる横で勉強会を開くんじゃねぇよ! てか、どうやって魔孔の位置がわかったんだよ……」

「えっと、たまたま?」

「うっそだろ!?」

「というより掌にあっても珍しくはないでしょ」


 いくら人によって魔孔の数と場所が違うからと言ってもやはり数打てば当たるという事だ。

 後はその魔孔から漏れる魔力、謂わば魔力の呼吸、とも呼べるその息遣いに気付くことができれば後は簡単だという。


「ちなみにジンキさんの魔力って制御してないから割とダダ漏れで魔孔の位置が結構わかりやすいんだよね」

「その指をやめてください、メラニーさん」

「制御、頑張ってねっ!」

「はい……」


 ちなみに、魔孔を突かれるとしばらくそこから魔力を通し辛くなったりする。

 もちろん、その攻撃の度合いにもよる訳だが……。

 それはそれとして、とメラニーはカイルへと向き直る。


「依頼の件だよね。私も良いよっ、参加する! でもこれだけは言っておくね」

「……なんだよ」


 少しウンザリとしたようにカイルが答える。

 メラニーは変わらぬ笑顔で彼に言うのだ。


「今のでハッキリした。私、あんたの事、嫌い」


 カイルは虚をつかれたように目を見開き、何事かを察した。


「……構わねぇよ」

「どうしたんだよ、メラニー?」

「なんでもないよ」


 いきなりの出来事にジンキはなんだか置いてけぼりをくらったかのような心境だ。

 しかし、メラニーはそれを適当にはぐらかす。

 フランはそんな彼女を心配そうに見つめていた。

 どうしようもない雰囲気のままその日はお開きとなった。


「勘のいいこったな」

「安心してよ。しばらくは秘密にしてあげるんだから」


 最後、小さく言葉を交わし、メラニーは背を向けた。


「お前さんは、きっといい奴なんだろうさ……」


 小さく呟かれたカイルの声は誰の耳にも届きはしなかった。



 五玄星それぞれには役割というものがある。

 絶対的なものではないし、なんなら他の仲間にだって取って代わる事ができるものだ。

 共通してジンキの為、国の為に動くというのは変わらない。

 だが、サポートの仕方は変わるものだ。

 冷静な分析や執務などの作業はダイナ・ミルナイルが得意としているし、柔軟な発想や対応なんかはヒュール・リンネールに任せれば右に出るものはそうそういないだろう。

 なので、役割という程大層なものでもないのだが、それぞれの考え方、感じ方というのが紛れもない彼女ら自身の存在意義なのだとも言える。

 常に今後の事を考え行動する。

 当たり前だが異質で確たる自己で訝しい自信がないといけない。疑わしく不安定だが、確かな自信だ。

 誰であれそうなのだろうが、彼女らの場合は半ば義務に近い。

 では、とフランは思う。


(アミルは諦観視点の考えなんだとすればメラニーはきっと公平、なんだよね)


 もちろんそれだけではないのは重々承知している。本人達からすれば別の事を思っていると言うことも当然、あるだろう。

 だがあくまでその実態を捉えるための仮定だ。

 だから、そうとフランは考える。

 メラニーは公平だ。

 そこに偏見は介在しない。

 メラニーは平等だ。

 それはきっと優しさにも似ているだろう。

 彼女はなんでも受け入れる器を持っているし、我慢強い人だ。

 だが、冷徹で残酷でもある。

 メラニーが今、何を思っているのかはフランにはわからない。

 何かしらの目的があるようにも思える。まあ、それも思い過ごしなのかもしれないが……。

 とりあえず彼女の事はいいだろう。

 では自分は何ができるだろうか?

 フランはそう自分に問い掛け続けている。

 フランはダイナのように冷静にはなれない。いつも取り乱しているように思う。

 ヒュールはどうだろうか?

 ……やはり厳しいものがある。あんな飄々とのらりくらりやっていける気がしない。

 アミルみたいに達観していられないしメラニーのように手段を選ばない人にもなれない。

 本当に自分には何ができるのだろうか。

 みんなの様にあんな個性が自分にある様には思えない。

 こんなふうに悩むのもフランには間違いなような気もするのだ。


(こういう所がみんなにめんどくさいって言われるのかな?)


 少し自嘲気味に笑う。

 でも、そうだ。

 自分にはこんな風に考える事しかできないのだ。みんなの事を思いながら何が1番なのか……。

 そこまで考え、フランは答えらしい答えを導き出せたような気がした。


(……そう、だよね。きっとコレでいいんだと思う)


 バラバラな個性なのだ。そこにはきっと何かしらそれらを繋ぎ止めるものも必要なはずだ。

 或いはうまく噛み合わす緩衝材が。

 ならばきっとフランは調和という役割がきっと性に合っている。

 フランはなんとなくそう思える気がした。

 眠れずにいたフランはそんな事を思いながら満足げに意識を暗転させた。

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