第一章第36話 レベルアップ
シャルロットさんたちを救出し、悪霊ジョセフを退治してアンジェリカさんの魂を救った私たちはタソード伯爵のところに戻ると大量の報酬を貰った。なんと金貨 100 枚! 久しぶりの大幅黒字案件に私はホクホク顔で帰途についた。
さて、唐突だが私はついにレベルアップした。あの悪霊ジョセフを昇天させた一件でなんと、154 という大量の経験値を手に入れたのだ。
と、いうわけで親方のところに戻る前に、クリスさんにステータスやスキルレベル上昇について教えてもらっている。今の私のステータスはこんな感じだ。
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名前:フィーネ・アルジェンタータ
種族:吸血鬼(笑)
性別:女性
職業:治癒師、薬師
レベル:1 → 2
HP:33 → 56
MP:25 → 45
STR:29 → 53
INT:24 → 43
AGI:23 → 41
DEX:26 → 47
VIT:27 → 49
MND:25 → 45
LUC:25 → 45
Exp:119 → 273
SP:10 New!
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ずいぶんとステータスがアップした。そして、驚くことにスキルポイントを 10 も貰ったのだ。
「フィーネ様、一度にこれほどステータスが上がるとはさすがです。やはりハイエ……じゃなかった、吸血鬼はレベルが上がりにくい分ステータス上昇も大きいのですね! そして、スキルポイントが一度に 10 というのもさすがですね」
この脳筋くっころお姉さん、いま絶対ハイエルフって言おうとしただろ。まったく。吸血鬼ですから!
それで、このスキルポイントの割り振りだが、最優先の【調合】と【薬草鑑定】は未だにレベル1のままだ。そしてそれぞれの経験値はこんな感じだ。
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調合:1 (経験値:541)
薬草鑑定:1(経験値:1,845)
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ちなみに、【薬草鑑定】の経験値が貯まっているのは、とりあえず目につく草という草を片っ端から鑑定した結果である。ただ、同じ草を二度鑑定しても経験値は入らないようなので、そろそろ伸びが鈍化しつつある。
「クリスさん、スキルレベルが上がるにはどれくらい経験値が必要なんですか?」
「スキルレベル 2 にするのに 1 万、レベル 3 にするには 10 万、レベル 4 には 100 万必要となります」
いやいや、きつすぎだろ。1 万から始まって次のレベルはその 10 倍とか。レベル 10 にするのには、ええと、 1 兆? どんだけだよ!
ともあれ、気を取り直してスキルポイントを割り振ろう。
「クリスさん、このスキルポイントはどうやって割り振れば良いのですか?」
「それでしたら、ステータスからスキルを開いて下さい」
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調合
レベル:1
経験値:541+
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「あ、プラスマークが経験値の隣に出ています」
「はい、そこからスキルポイントを割り振ることができます」
「ありがとうございます。やってみます」
わたしは早速、【調合】に 10 ポイント全てを割り振る。
────
調合
レベル:2
経験値: 10,541
────
「あ、ちゃんと【調合】のレベルが 2 になりました」
「フィーネ様、おめでとうございます!」
「ありがとうございます。クリスさん」
しかし、あと 9 万か。親方のところで稼げる経験値は 10 日で 200 ~ 250 くらいだから、スキルポイントなしだと大体 10 年くらいか。うーん、厳しい。やっぱりスキルポイントが肝のようだ。
「さて、親方に無事の帰宅を報告しに行きましょう」
「はい。そうしましょう」
そうして私たちは親方の元へと向かうのだった。
****
「親方、奥さん、ただいま戻りました」
「……ああ、無事だったか。良く戻ったな」
あれ? 何か機嫌が悪い?
「ああああ、フィーネちゃん。良く帰ってきたね。無事かい? 怪我はしてないか? 危ない目には合わなかったかい? ああ、もうずっと心配していたんだよ? ああ、良かった。本当に、心配したよぉ」
「えと、今回はちょっと大変でしたが、見ての通り無事です。結局私はダメージ受けませんでした」
他の人たちは人形にされたり壁にたたきつけられたり大変だったけどね。あ、私も人形に追い回されたか。うん、当面フランス人形は見たくないかもしれない。
「そうかいそうかい、それは良かった。ああ、クリスちゃんも。怪我しなかったのかい? まったくもう、嫁入り前の女の子なんだから、怪我には気を付けるんだよ。それからお肌の手入れもちゃんとするんだよ。それからね……」
奥さんのマシンガントークが止まらない。クリスさんに返事をするスキを一切与えずに延々と喋り続けている。寡黙な親方にマシンガントークの奥さんって、実は良いコンビなのかもしれない。
「って、聞いてるかい? フィーネちゃん」
「あ、すみません。ちょっと考えご――」
「それでね。うちの人ったら口を開くごとに、フィーネちゃんとクリスちゃんは無事かって聞いてくるんだよ。本当に、過保護だったらありゃしないよ。ねぇ、フィーネちゃん。あんたもそう思うだろ?」
「え、ええ。まぁ」
「それでさ。フィーネちゃんを目当てに行列を作ってた連中なんだけどね。あいつらフィーネちゃんがいない間の相談はあたしだって言ったら大慌てで逃げていったよ。これでも若いころは美人って言われていたのに、失礼しちゃうよ。ねぇ、フィーネちゃん。あんたもそう思うだろ?」
「え、ええ。まぁ」
奥さんのマシンガントークがいつまでも止まらない。私は無心で話を聞き続け「え、ええ。まぁ」というセリフを 10 回以上繰り返したのだった。
ちなみに、この後奥さんが喋り続けたことに満足してくれたため、私は親方に【調合】のスキルレベル 2 となったことを報告できた。親方は驚くとともにお祝いをしてくれ、翌日から調合業務の一部を任せてもらえることになったのだった。
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