第一章第26話 詰んだ?
「教皇様、ありがとうございました」
私は薬師の職業を授かったことに対するお礼をする。
「いえいえ。貴女のお力になれたなら幸いです。どうですか? 【薬草鑑定】と【調合】はスキルに入っていますかな?」
「あ、見てみます。ステータス・オープン」
────
名前:フィーネ・アルジェンタータ
種族:吸血鬼(笑)
性別:女性
職業:治癒師、薬師
レベル:1
HP:33
MP:25
STR:29
INT:24
AGI:23
DEX:26
VIT:27
MND:25
LUC:25
Exp: 119
ユニークスキル(13):
吸血:1
霧化:1
蝙蝠化:1
影操術:1
眷属支配:1
血操術:1
魅了:1
雷撃:1
成長限界突破
次元収納:1
精霊召喚
容姿端麗
幸運
スキル(21):
言語能力:10
魔力操作:1
闇属性魔法:1
聖属性魔法:10
回復魔法:10
火属性魔法:1
水属性魔法:1
風属性魔法:1
土属性魔法:1
状態異常耐性:10
火属性耐性:1
水属性耐性:1
風属性耐性:1
土属性耐性:1
闇属性耐性:10
聖属性吸収
呪い耐性:10
日照吸収
魅了耐性:10
調合:1
薬草鑑定:1
────
「あっ、生えてます。【調合】と【薬草鑑定】が生えてきてます」
「生える、というのは斬新な表現ですな。とはいえ、無事に使えるようになって良かったですな。職業を授かった時点でスキルが使えるようになるというのは、貴女が手を抜かずしっかりと勉強してきたという証明です」
「ありがとうございます」
なるほど。職業を貰ったらすぐに使えるようになるかは、元々の知識や経験に応じてっていうことか。何もせずにスキルが使えるようになるなら努力しなくてもいろんなことができるようになっちゃうしな。
まあ、ゲームのくせに中の人に知識を要求するのはどうか、とは思うがね。
「スキルレベルのあげ方はご存じですか?」
「いえ」
「スキルレベルは、スキルの経験値が一定の基準を越えた状態でレベルアップすることで、スキルレベルも上昇します。そして、スキルの経験値を得る方法は二つあります」
「二つ?」
「そうです。一つは、そのスキルを使うことです。これは分かりやすいでしょう」
たしかに。私は頷いて納得の意を示す。
「はい。そして、もう一つはスキルポイントを割り振るというものです。スキルポイントを割り振る事でスキルレベルが上昇する条件を満たした場合、そのスキルレベルは上昇します。そして、このスキルポイントというのは、レベルアップの際に得られるものですが、人によって、種族によっても得られる量が異なるようです」
なるほど?
「人間ですと 1 ~ 4 ポイントくらいと言われていますが、吸血鬼やハイエルフのような別の種族ではどうなのかわかりません。成長速度の遅い種族は多くのスキルポイントを貰えている、という説もあれば、人間と変わらない、という説もあります」
「どうして真逆の説があるんですか?」
「彼らは人間よりも多くのスキルを使うからです。ただ、それが長命であることが理由なのか、種族特性としてスキルポイントを多く貰えているのか、それは誰にも分からないからです」
そういうことか。きっとこれはレベルアップした時に分かるだろう。
「わかりました。とにかく、このまま頑張ってレベルを上げると同時にスキルも沢山使えば良いんですね?」
「そういうことです。ただ、今の職業と適合しているスキル以外はスキルレベルは上がらないので注意してください。例えば、【聖属性魔法】は治癒師に適合していないので、経験値を入れることはできますが、スキルレベルが上がるのは司祭にクラスアップしてからとなります」
「え?」
「もし、ユニークスキルをお持ちでしたら、そちらは職業と関係なくあげることができますよ。ただ、いくつかのユニークスキルにはスキルレベルを上げるための条件のあるものもありますから、よく確認してみてください」
「はい?」
「ああ、その様子ですとそのようなユニークスキルはお持ちではないのですな。そもそも、持っている人自体が稀ですから、気にする必要はありませんよ」
「はぁ。わかりました」
どうやら、レベルを上げるための条件があるスキルというのもあるらしい。後で見てみることにしよう。
****
「それでは、教皇様、何から何までありがとうございました。また浄化の依頼がありましたらよろしくお願いします」
「こちらこそ。フィーネ嬢に神のご加護のあらんこと。聖騎士クリスティーナ、また後ほどお会いしましょう」
「はっ。報告書を持ってお伺いいたします」
私たちは神殿を後に、クリスさんの見つけてきてくれた宿へと向かう。もちろん、職業をもらったので金貨 20 枚を寄付をしてきた。今回の依頼の報酬が 20 枚なので差引 0 だ。ちなみに前回は 30 枚だったので、こうして考えると所持金ががっつり減っていることがよくわかる。
さて、クリスさんが選んできた宿は、高いけれどあの高級ホテルよりは遥かにマシだった。そこそこの高級ホテルではあるが、一泊金貨 3 枚、朝食付き。
護衛の待機室のあるスイートルームだと、最低限この値段を払わないとまともなホテルとは呼べないらしい。個人的にはスイートルームじゃなくて良いし、二部屋取れば良いとは思うのだが、警備上最低限これが必要だと言って譲ってくれない。
さて、クリスさんが神殿に報告書を持って行ったので私はスキルを良く調べてみることにしよう。
「ステータス・オープン」
私は応接室のふかふかのソファーに座ると自分のステータスを開く。そして、スキルを一つずつタップして詳細を見ていくと、そこには経験値やレベルアップ条件が書いてあった。例えば、【回復魔法】はこんな感じになっていた。
────
回復魔法
レベル:10
経験値:3,621
────
なんで説明文がないんだろうね? こういうのって、詳しい説明文が書いてあるものじゃないの?
で、だ。レベルアップ条件があるスキルがいくつかあった。これが大問題だ。
────
吸血
レベル:1
経験値:0
条件:闇属性魔法のレベルが本スキルのレベルより高いこと
────
これは他の吸血鬼のユニークスキルと思われる【霧化】【蝙蝠化】【影操術】【眷属支配】【血操術】【魅了】も同じだった。つまり、吸血鬼らしいユニークスキルのレベルをあげるためには【闇属性魔法】のレベルをあげる必要があるのだ。
そして、【闇属性魔法】のレベルを治癒師ではあげることができない。
詰んだ。そう、完全に詰んだのだ。
というか、この状況だと吸血鬼を選んだメリットがどこにもない。ああ、こんなことならせめて【闇属性魔法】を MAX にしておくんだった。
だが、嘆いても仕方ない。ログアウトできない以上はこれでやっていくしかないのだ。次善の策を考える必要があるだろう。
まず、吸血鬼を選んだのだから、ユニークスキルを使いこなせるようにならないともったいない。これは第一だ。
だから、まずは意識して【闇属性魔法】を使っておこう。これはいつか【闇属性魔法】を使える職業につけた時に一気にレベルアップするためにも必要なことだ。それと同時に、他のユニークスキルも使えるときに使っておこう。そうすれば【闇属性魔法】のレベル上昇が解放されることで、一気にレベルが上がるはずだ。
次に、だ。街中での活動ではレベルアップできないので何かの攻撃手段が欲しいところだ。
手持ちのスキルを見てみると、候補は二つだ。
一つは【聖属性魔法】だ。これはレベルが MAX まで上がっているので、アンデッド以外に対する攻撃手段があればそれが手っ取り早い。
もう一つは余ったポイントで取得した【雷撃】だ。名前の通り、雷で攻撃するスキルっぽい。そしてこれはユニークスキル扱いになっているので職業に関係なく上げられるはずだ。だが、そもそもどう使うのかすら分からない。試しに外で「雷落ちろ」と念じてみたが何も起こらなかった。このスキルについてはとにかく情報不足だ。一度図書館で調べさせてもらって、それからどこに割り振るのかを決めよう。
おっと、そうそう。忘れていた。あとお金の問題もあるな。さっさとポーション作れるようにならないと破産するまであるんだった。それにしても、やることと考えることが多すぎる。まずは明日、クリスさんと一緒に図書館へ手配しに行こう。
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