第30話
<ミモレさん、キャベツは好きですか?>
高田からラインが届いた。
ミモレは返事をした。
<はい、大好きです>
スマホが鳴った。
<それじゃ、今から届けに行きます>
ミモレは慌ててウニクロのワンピースに着替えた。
しばらくして、玄関のチャイムが鳴った。
高田が段ボールを抱えてやって来た。
「こんにちは、高田さん」
「こんにちは、ミモレさん」
高田は段ボールを玄関に置いて言った。
「あの、田舎からキャベツが10個届いたので、半分お裾分けしようかと思って」
「え、5個もですか!? ありがとうございます」
ミモレは上機嫌で、お礼を言った。
「ところで一条さんとは上手くいってるんですか?」
高田はもじもじとしながら、ミモレに聞いた。
ミモレは真っ赤になった。
「あの、上手くかは分かりませんが、仲良くしてます」
「そうですか、良かった」
高田はそう言って笑った。
「はい、ありがとうございます」
ミモレは、ちょっと困った顔で微笑んだ。
「それじゃ、またアルバイトがあるので」
「はい、頑張って下さい」
ミモレは高田が出て行くと、ドアの鍵を閉めた。
「ちょっと、図々しかったかな・・・・・・」
ミモレは5個のキャベツを見つめながら言った。
「これ、どうしよう」
そう言いながら、キャベツを台所に運んだ。
「ただいま! ミモレ!」
「姉さん、お帰りなさい」
スカーレットが帰ってきた。
台所に山積みになっているキャベツを見て、スカーレットはふうん、と言った。
「高田が来たのか?」
「はい」
「一条と付き合ってるのに、もらっちゃってかまわないのか?」
「えっと、食べ物に罪はないので」
スカーレットはミモレをじっと見て、ため息をついた。
「男心がわかってないねえ」
「姉さん・・・・・・」
「あ、キャベツ、ウマ塩ドレッシングで大盛りサラダにして」
スカーレットがそう言うと、ミモレは頷いた。
「はい、分かりました」
「後は、ポトフにしようと思います」
「そうだな、美味しそうだな」
ミモレはエプロンをすると、台所に立ってキャベツを刻み始めた。
「そういや、一条とはどうなってるんだ」
「どうって?」
「一条とは、もうヤッたのか?」
「姉さん! 言葉を選んで下さい!!」
ミモレは赤面して声を荒げた。
「でも、キスくらいしてるんだろ?」
スカーレットがニヤニヤとしながら聞いた。
「・・・・・・おでこにされました」
ミモレは素直に答えた。
「一条、手が早いな。 いや、そうでもないか?」
スカーレットは何か考えているようだった。
「私、どうなっちゃうんでしょう」
ミモレはキャベツを千切りにしながら言った。
「まあ、高田に差し入れするのは、一条が可哀想だから止めといた方が良いな」
スカーレットは刻んだばかりのキャベツを一口つまんだ。
「でも、お礼をしないと高田さんに申し訳ないです」
ミモレはため息をついて、ひとり悩んでいた。
「ま、好きにすればいいさ」
スカーレットに突き放されて、ミモレは泣きそうな顔をした。
ミモレは気を取り直して料理に集中した。
結局、ポトフは半分、高田の所に持って行くことにした。
「えっと、今はバイト中だから玄関にかけておこう」
ミモレはラインで高田に<ポトフを作ったので玄関に置いておきます>と送った。
すぐに返信が来た。
<ありがとう>
その後、一条からラインが来た。
<今日は学校どうだった? こちらは特に変わったことなかったよ>
ミモレは、一条に返信した。
<こちらも変わったことはありませんでした>
一条から返信が届く。
<ミモレちゃんに会えないと、ちょっと寂しいかな>
ミモレは真っ赤になった。
一条は結構さみしがりなのかも知れないと、ミモレは思った。
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