第27話
ミモレは熱が下がって、元気になった。
今日は学校に行けそうだ。
「姉さん、食事」
そう言って、トーストと目玉焼きをスカーレットの前に置いた。
「ありがとう、ミモレ。もう大丈夫なのか? 」
ミモレは頷いてから、自分の食事をテーブルに置いた。
「それにしても、風邪ってしんどいんですね」
「人間の病気にかかるなんて、サキュバス失格じゃないか? 」
スカーレットが笑いながらそう言うのを聞いて、ミモレは顔を赤くした。
「ちょっと悩み事が重なっただけです!」
ミモレが慌てて言うと、スカーレットは頷いた。
「ああ、一条と高田のことか。結局どっちにするんだ? 」
「そんな事聞かないで下さい。姉さんならどうするんですか? 」
スカーレットは目玉焼きをパクリと食べてから言った。
「決まってるだろ、両方と付き合う」
「姉さん・・・・・・」
ミモレは深いため息をついた。
「それより学校、時間大丈夫か? 」
スカーレットの言葉で、ミモレは時計を見た。
「いけない! 姉さん、食器は台所に出しておいて下さい!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
下着姿のスカーレットはおざなりに手を振った。
ミモレは大急ぎで制服に着替えると、家を出た。
学校へ走って行くと、なんとか時間内につくことが出来た。
「ミモレちゃん、おはよう。もう元気になったの? 」
「ちひろちゃん、昨日はありがとう! もう大丈夫だよ」
そう言ってミモレは微笑んだ。
「昨日は宿題も出なかったし、特別なことはなかったよ」
ちひろはそう言うと、一限目の国語の教科書とノートを机の上に出した。
「そっか。よかった」
ミモレも教科書とノートを出すと、前を向いた。
一日分の空白。
でも、授業にはなんとか追いつけた。
「ミモレちゃん、昨日のノート写す? 」
「助かるよ、ちひろちゃん」
ミモレとちひろは、帰りがけにノートをコピーすることにした。
とくに問題もなく、学校が終わった。
今日は調理部の活動を休みにして、ミモレの家の近所のコンビニに寄ることにした。
コンビニに入ると、一条と高田がいた。
「こんにちは」
ミモレが挨拶をすると一条と高田が返事をした。
「こんにちは、もう大丈夫?」
「はい、昨日はありがとうございました」
ミモレはそう言ってからコピー機の前に行った。
「この辺りだよ」
「うん」
ちひろが広げたノートのコピーを取る。
10分もかからずに作業は終わった。
「それじゃ、今日はこれで」
そう言ってちひろはノートを鞄にしまった。
「ありがとう、ちひろちゃん」
ミモレはお礼を言って、コンビニから出て行くちひろに手を振った。
「それじゃ、一条さん、高田さん、お仕事頑張って下さい」
ミモレはレジに立っていた二人に挨拶をして、コンビニを出た。
家に帰ると、鍵が閉まっていた。
鍵を開けて中に入ると、スカーレットの置き手紙があった。
<今日は遅くなる。夜ご飯はいらない>
「姉さん、どこいっちゃったんんだろう?」
そう言ってからミモレは、一人分の夕ご飯を作って食べた。
「なんか、一人は寂しいな」
テレビをつける。
バラエティ番組では芸人さん達が楽しそうに笑っていた。
ミモレはテレビを消して、静かな部屋で目をつむった。
「高田さんも一条さんもいい人なんだよね・・・・・・」
ため息が出た。
「贅沢な悩みだよね。 でも、どちらとも付き合えないなあ・・・・・・」
ミモレは呟いた。
「ずっと友達でいたいのに、無理なのかな」
そこまで言ってから、お風呂の準備をした。
一人だからゆっくりと湯船に浸かった。
目をつむると、一条の笑顔と、高田の真面目な顔が浮かんだ。
のぼせる前にお風呂をでた。
一人だと余計なことを考えてしまう。
「姉さんみたいに両方と付き合うなんて、想像もできないや」
ミモレはお風呂上がりに、炭酸水を飲むと明日の準備をしてから布団を敷いた。
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