第21話

年が明けた。


ミモレとスカーレットは冷蔵庫を見た。

「空っぽです・・・・・・」

ミモレがそう言うと、スカーレットが言った。


「また、コンビニ行くか? 」

スカーレットが立ち上がると、ミモレはそれを制した。

「コンビニばかりじゃ体に毒です 」

ミモレは覚悟を決めた表情で、言った。


「今日は一人でスーパーに行ってきます」

ミモレはウニクロのパーカーにジーンズをはくと、マイバックを持って立ち上がった。

「一人で? 」

スカーレットが訊ねる。

「はい、姉さんの格好じゃスーパーは行けません」

ミモレはため息交じりに言った。

「そうか? 」

スカーレットはまた短パンにブラと言った格好だ。


「それじゃ、変な人来ても入れちゃだめですよ」

ミモレがそう言うとスカーレットは笑って答えた。

「はい、はい」

「じゃ、行ってきます」


スーパーは家から10分くらいの場所にある。

ミモレは早足でスーパーに向かう。

「えっと、献立は何にしようかな」

歩いていると、知らないおじさんにぶつかられた。


「痛い! 」

「おう、前見て歩いてるのか、お嬢ちゃん」

おじさんはそう言ってミモレの胸をつついた。

「やめて下さい」

ミモレは泣きそうになりながら、胸を守った。


「いい加減にするのは貴方のほうです」

うしろから、どこかで聞いたことのある声がする。

ミモレが振り返ると、身長180cm位の大柄の男性がいた。

「なんだ、男連れか」

そう言い捨てると痴漢は去って行った。


「あの、ありがとうございました」

ミモレはおずおずと、どこかで見覚えがある男の人にお礼を言った。

「僕のこと覚えてない? 」

「えっと、あの、ごめんなさい」

男の人は笑って言った。

「お姉さんとよくバイトしてるコンビニにくるでしょう?」


ミモレは思い出した。高田がバイトしているコンビニの店員の一人だ。

「ああ、思い出しました」

「良かった、僕は一条(いちじょう)篤志(あつし)。大学一年生だ」

そう言うと一条はミモレを道路の壁側に移動させた。


「今日は買い物? 」

一条はミモレのマイバックを見ていった。

「はい、スーパーまで」

ミモレはそう答えるとお辞儀をした。

「本当にありがとうございました」

「変なやつには気をつけるんだよ」

一条はそう言うと腕時計を見て、慌てた。


「もう、バイト行かないと行けないから。またね」

「はい、行ってらっしゃい」

ミモレが笑うと、ほんのり一条の顔が赤くなった気がした。

一条は手を振ってから、走り出した。


「一条さん、いい人だな」

ミモレはスーパーに向かって歩き出した。


買い物は特に問題なく終わった。

ミモレはパンパンになったマイバックを抱えて家に帰った。

「ただいま、姉さん」

「お帰り」

スカーレットはTVを見ながら答えた。


「今日、痴漢にあっちゃいました。でも、コンビニの一条さんが助けてくれたんです」

ミモレは買ってきた物を冷蔵庫に移しながら言った。

「痴漢くらい退治できないのか? ミモレ? 」

スカーレットが言った。

「私は姉さんとはちがうんです」

ミモレはため息交じりに言った。


「まだ、サキュバスの修行が足りないな」

「修行なんてしたくありません」

ミモレは口を尖らせる。

「まあ、そう言うけど、一条だっけ?」

スカーレットはミモレの方を向いて話し続けた。

「高田以外にもミモレに興味を持ってる奴が増えて良かったじゃ無いか」

「高田さんも一条さんもそんなんじゃありません」

ミモレはしょくざいをしまい終えると、お茶を入れた。


「姉さんも飲みます? 」

「ああ、ありがとう」

二人はお茶を飲みながらTVを見始めた。

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