第19話

ミモレが家に帰ってくつろいでいると、ピンポーンとインターホンが鳴った。

「こんばんは、高田たかだです」

インターホンには高田の姿が映っている。

「こんばんは」

ミモレはドアを開けた。

「あの、これ人参なんだけど、実家からたくさん送られてきたからお裾分けに来ました」

「ありがとうございます。助かります」

ミモレは礼を言って、高田を部屋にあげようとしたが、これからバイトだと断られた。

「アルバイト、頑張ってください」

ミモレはそう言って、高田から人参を受け取った。15本はありそうだ。

高田がミモレの家を後にすると、ミモレは玄関を閉めた。


その瞬間、ガチャリ、とドアが開いた。

スカーレットが帰ってきたのだ。

「あれ? 人参、またもらったのか? 」

「はい、姉さん。今日は人参たっぷりのカレーにしようと思います」

「良いな」

スカーレットはそう言うと、ミニスカートのワンピースを脱ごうとした。

「姉さん、すぐ裸になるのはやめてください! 」


「そう怒るなよ。窮屈なんだけどなぁ」

そう言ってスカーレットはパンツが見えるのも気にせずにあぐらをかいた。

「もう、姉さんは少しは恥じらいをもってください」

ミモレはプンプンと怒りながら、人参の下ごしらえを始めた。


「学校はどうだ? ミモレ」

「楽しいです、姉さん」

「そっか、よかったな」

「はい」


ミモレは鼻歌交じりにカレーを作り出した。

カレーといってもドライカレーだ。

人参をみじん切りにして、タマネギのみじん切りと一緒に炒める。

今回も、高田に届けるつもりで沢山作っている。


「おお、いっぱい作るんだな」

「はい、高田さんにお返しする分もあるので」

「そうか」

スカーレットはそう言うと、ノンアルコールビールを冷蔵庫から取り出した。


「姉さん、いつの間にそんな物を買ってきたんですか? 」

「いや、いつものコンビニのアルバイトがへこんだ商品だからってくれたんだ」

「それならいいですけど、無駄遣いするほどお金はありませんよ」

「だったら、割のいいバイトでも探すさ」

スカーレットは美味しそうにノンアルコールビールを飲み干した。


「姉さん、まだ18歳なんですから、夜のお仕事とかやめてくださいよ」

「SNSでお金くれるって書き込み沢山あるんだけどな」

「姉さん! 真面目なバイト以外は私が許さないですよ」

「ちえっ、ミモレは人間界に来て強くなっちゃったな」


ミモレはそう言われて顔を赤くした。

「そろそろドライカレーできますよ」

「はーい」

スカーレットは自分用に盛り付けられたドライカレーを一口食べると、タバスコを大量にかけ始めた。

「姉さんの激辛好きは変わりませんね」

「うまいぞ、デスソース」

そう言って、スカーレットはミモレの作ったドライカレーをあっという間に完食した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る