第17話

「こんばんは、只野です」

「はい、ちょっと待ってください」

ミモレはタッパに入れた肉じゃがと、半分に切ったパウンドケーキをもって、高田さんの家に行った。

「こんばんは」

高田さんはTシャツにジーンズでミモレを迎えた。


「体調良くなりました?」

「おかげさまで、もう大丈夫です」

高田さんはにっこりと笑うと頭を下げた。

「只野さんにはすっかりお世話になってしまって」

「頭を上げてください」

ミモレはそう言ってから、持って来た肉じゃがとパウンドケーキを取り出した。

「今日は先日もらったジャガイモのお礼に、肉じゃがを持ってきました」

「あと、料理部にはいったので、パウンドケーキもよかったらもらってください」


「ありがとうございます。ウチ、田舎から段ボールでにんじん30本とか届くから、これからも持って行っていいですか? 一人じゃ食べきれないんで」

「嬉しいです。本当に助かります」

「今日は、お姉さんは一緒じゃないんですか?」

「はい、姉は実家に帰ってます」

嘘は言っていない。


「それじゃ今日はこの辺で」

「はい、遠慮なく頂きます」

高田さんはそう言ってまた頭を下げた。

ミモレは自分が作ったものを喜んでもらえて嬉しかった。


ミモレは自分の部屋に帰ると、スカーレットが居た。

「よう、やるな、ミモレ。胃袋掴む作戦か?」

「姉さん、そんなんじゃありません」

「でも、けっこううまく出来てるじゃないか、この肉じゃが」

「ありがとう、ってもう食べちゃったんですか?」

「味見しただけだよ」

スカーレットはパウンドケーキを見つけると興味津々と言った様子だ。

「それも一口くれるかい?」

「いいですよ、半分こしましょう」


ミモレはパウンドケーキを切り分けてお茶を入れた。

「うまいな」

スカーレットはそう言ってケーキをパクパク食べた。

「姉さん、私料理部に入ったんです」

「へー。サッキュバス界じゃ料理するってだけで変人扱いだもんな、よかったなミモレ」

「友達も出来ました」

「ミモレには人間界の方が合ってるのかもな」

スカーレットはパウンドケーキを食べ終えるとゴロンと横になった。

「高田だっけ? 隣の奴も良さそうだしな。あいつを落とすのか?」

「高田さんはいい人です。落とすなんて滅相もない」

ミモレは高田の笑顔を思い出してドギマギした。


「ま、一年間頑張れ」

そう言うとスカーレットは裸になって寝てしまった。

「姉さん、裸で寝る癖直ってないんだ・・・・・・」

ミモレはため息をついてバスタオルをスカーレットにかけると自分もパジャマに着替えてベッドに寝転がった。

「人間界、来て良かった」

ミモレはそう呟いて、すぐに眠ってしまった。

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