第12話

五分ほど歩く間に、5人の男の人に声をかけられた。

「ねぇ、どこいくの?」

「一緒にお茶しない?」

「君かわいいね」

どの言葉もスカーレットに投げかけられたものだった。

ミモレは声を聞くたびに体をこわばらせて、俯いた。


「ミモレ、前見なよ。怖くないって」

「怖いです、姉さんは慣れすぎなんです」

ミモレはスカーレットの手をつかんで震えていた。

「大丈夫だって。人間界じゃミモレをいじめるやつなんていないから」

スカーレットは手を強く握り返すと、その手を離した。

「さあ、コンビニについたぞ」

スカーレットが入り口にたつと、店内にいた5,6人のお客と二人の店員が振り向いた。


「何あの格好」

「格好良い」

「かわいい」

「脇の子も結構かわいいぞ」

スカーレットといるととにかく目立ってしまう。

ミモレはハンカチをだし、口を隠した。

「ミモレ、いろいろあるぞ」

「スカーレット姉さん、目立ちすぎです」


スカーレットは気にせずお弁当売り場にツカツカと歩いて行った。

お客はその様子を遠巻きに見ている。

ミモレはコソコソとスカーレットの後についていった。

スカーレットは買い物かごをとると、おにぎりやサンドイッチ、カップ麺をポイポイとその中に放り込んだ。ミモレも遠慮がちに冷やし中華とおにぎりを買い物かごに入れた。


「スカーレット姉さん、そんなに食べるんですか?」

「ミモレ、私だって人間の性的エネルギーを食べれば食事なんかいらないんだよ。」

「でも、ミモレが嫌がると思って人間の食事で我慢しようとしてるんじゃないか」


ミモレはスカーレットが自分のことを考えていてくれたことに驚いた。スカーレットはいつも自分の思い通りに事を運んでいるとばかり思っていたからだ。

「レジだぞ」

スカーレットはかごを二つ、レジに並べた。


「お会計は3050円です」

店員二人は手際よく商品をレジ袋に詰め込んだ。

スカーレットは胸元から一万円札を出した。

店員は顔を赤くしながら、言った。


「おつりは6950円です」

ミモレはおつりを受け取ると、がま口にしまった。

ミモレは荷物を持って、コンビニを出ようとすると、店員たちが話しているのが聞こえた。


「今日は高田とシフト変わってラッキーだったな」

(高田さんてここでバイトしてるんだ)とミモレは思った。

「あの、お二人は御姉妹ですか?」

「ああ、そうだけど?」


店を出ようとしていたスカーレットが振り向いた。

「また来てください」

店員の二人は深々と頭をと頭を下げた。

スカーレットは笑いながら手を振った。ミモレはその後を慌てて小走りについて行った。

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