第197話 雨率高い9

 ホテル宿泊となり。買い出しに出て、その後帰宅後シャワーを浴びて着替えて俺が出てくると……驚きの光景だった。


「まだ半分残ってるだと……?」

「大事に飲むに決まっているじゃないですか。すごく美味しいですから。一気飲みなんてありえないですよ」


 何があったかというと、高級なものは貴重なのか。海夜がほんと大切そうにココアをまだ飲んでいた。うん。一口飲んで天国。の繰り返しって感じだな。ちなみにココアの入っているサイズはそんなに大きなものではなく。普通に考えても――小さめのカップなのだが――ってそんなに美味しいなら一口欲しくなるってことで。


「海夜。まだあるなら一口」

「嫌です」

「……即答かよ」


 一口もらうは即却下された。まあだろうとは思ったがな。すると海夜は何か気がついたみたいな表情をして……ニヤッとこちらを見てきた。


「あっ、先輩間接キス狙いました?」

「全く」


 いきなり意味の分からない事を聞いて来たのだった。まあだから俺も即答である。すると海夜の頬が膨らんで……タコだな。


「……むー、即答したから絶対にあげません」

「まあ、俺来るときに飲んだがな」

「なっ!?先輩が強制的に間接キスさせてきました」

「嘘だよ」

 

 ちゃんとお店でもらいそのまま運んできたよ。それに開けたらわかるだろうが。プラスチックの飲み口……って、あっ、蓋取ったらわからないか。こりゃ余計なことは言わない方がいいな。


「もう……びっくりさせないでくださいよ。まあ――いいんですけど」


 ちなみに海夜がぶつぶつ言っていたことにも触れなかった。


「ってか、焼き鳥つまんでいいか?」


 俺はこのまま言いあっていてもなので、窓際に置かれていた焼き鳥に近づきつつ言うと海夜も隣にやってきた。


「先輩、私も食べます」

「ココアと合うのか?」

「ココアは最強なのです」


 自慢するようにココアを窓際に置く海夜。ちなみに俺は買ってきた炭酸を……である。ちなみに海夜が冷蔵庫に入れておいてくれたため。冷えている。って、薄い冷蔵庫ちゃんと働いているんだな。ドアを開けるのはちょっと大変だが――まあちゃんと稼働はしているらしく。買った時と同じくらいだった。まあ今日の気温なら冷やさなくてもだが――でもね。炭酸は冷たい方がいいと思うので。


「ってか、まあ俺の親とこでもだったか。ガブガブ飲んでいろいろ食っていたな」

「です」

「よし。腹減ったし食うか」

「はーい。です。まずねぎま食べたいです」

「ねぎま、ねぎま……って俺が出すのかよ」

「もちろんです」


 それから、焼き鳥はあっという間に消えたのだった。結構買ったんだがな。消えるまでは早かった。まあ俺はちょうどいい量を買ったらしい。無駄なしだな。ってか、俺が食っていたら海夜が一口。みたいなことが多く。気がついたら海夜に食べさせていただな。よく食うやつだよ。


 そして海夜は今。俺にもたれながらまだココアを飲んでいた。まだ残っていのかよ。びっくりだわ。まあ焼き鳥食べてるときの海夜は俺が飲んでいた炭酸を一緒に飲んでいたからな。って、間接キスはしまくりだな。まあ今更全く気にはしてないが。にしてもココアまだあるとか。ホットでは確実にないと思われる。


「もう冷めただろ?」

「ホットとアイス両方楽しめますから問題ないです」

「……頼むからもう腹壊すなよ?」


 それ心配。馬鹿だからな。こいつ。最近がぶがぶ飲んで腹痛。という流れを何回か見たのでね。


「そんなやわじゃないです」

「わからんな」

「むー。冷えたら先輩が温めてくれればいいんです

 

 ぐいっとさらにこちらへとくっついてくる海夜。ってか、そういえば始めこそ冷房を入れていたが。今は消していた。でもくっついていても暑くない。マジで気温は下がったみたいだからな。窓を触ってみると――外はひんやり継続中みたいだし。雨は……弱くなったな。ってか何の話をしていたんだっけ?あー、そうか。


「羽交い締めで温めればいいのか?」

「なんでそんなことになるんですか!先輩最近意地悪が多いですよ」

「じゃ、海夜が飲み終わったら――甘やかすかね。どうせもう寝るしか今日はすることないし」

「なっ、珍しいですね。先輩が普通に甘やかすって、やっぱり何かありますね?先輩。今なら許してあげますから白状するんです。何をしたんですか?」


こちらを振り返りつつそんなことを聞いてくる海夜。だ・か・らである。


「ないよ。帰れなかったのはまあ俺が気にしなかったからだし、そこそこ歩かせたからな。それだけだよ」

「本当にですかね?」


 海夜がまだこちらの顔を見ながら聞いてくる。怪しい。と顔が言っているな。


「海夜はどんな解答希望なんだよ」

「いや、先輩が優しいとな。私の物を何か壊したとか。隠しごととか――」

「二度と甘やかす必要はないか」

「ちょ、だめです。甘やかす必要はあります」

「ないだろ」

「先輩も……いつも楽しんでるじゃないですか」


 まあね。海夜相手は楽しいし。癒しだからな。この甘えん坊かわいいし。壊すと面白いし。


「まあ、海夜泣かすのは楽しいな」

「ちょっと!」

「うそだよ。ってか、海夜。甘やかして欲しいならそろそろ飲み終えたらどうだ?」

「先輩が実は私にお触りしたい説」

「……」


 海夜絶好調。上機嫌らしい。俺はそんなことを思いつつそっと立ち上がると……。


「あっ、先輩ごめんなさい。ちょっと先輩」


 すぐに海夜に捕まった。いやまあ、本当は飽きれて――ゴミでも捨てに行くか。だったんだが。海夜は違うように解釈したらしい。


「はぁ、俺。大変」

「ちなみにココアはとっくに飲み終わってますがね」

「……」


 そう言いながら窓際にカップを置く海夜。マジで空みたいだ。つまり……こやつは最後の一滴まで楽しんでいただけだったか。しゃぶっていた?赤ちゃんじゃん。あっ甘えん坊だから赤ちゃんでいいのか。


「あっ、先輩が怒ってます」

「やばいな。今なら海夜を泣かせてもいい気がしてきた。うん。だよな。ココア与えたし。かなりご機嫌取りしたよな。おつりがくるレベルだもんな」

「せ、先輩。犯罪者みたいな目です。ココアだけでそんなにおつりきませんから」

「指導も必要だろ」

「いらないですよ――撫でればOKです」

「壊す準備か。何かないかねー」

「叫びますからね?」

「叫ばさなければいいんだよな」

「な、何する気ですか……」


 ちょっと後ろに後退する海夜。が。まあ逃げれるわけはない。そもそも海夜俺の腕掴んでいるしな。何で後退するのに掴んだままなのか。お馬鹿さんである。まあそのおかげで俺が座り直すとすぐに海夜を確保できたんだがな。


「さあ?」

「変態です。先輩が変態です」

「海夜が変態だろ」

「なんでですかー」

「甘えん坊変態」

「どんな名前ですかーもう」


 バシバシと海夜が俺の腕を叩いてくる。うん。元気だな。こいつである。


「まあ拗ねても撫でればOK」

「もうココア代は消えました」

「早っ」

「だから今から先輩が何か白状しても怒りますからね」

「……」


 ちなみに再度だが。何も無いである。何かこやつは言って欲しいのかね?あれか、怒りたいのか。なるほど、自分が上に――か。まあそんなことはさせないが。


「先輩。何で無言なんですかー」

「いや、かわいいなーと」


 うん。いろいろギャーギャー言っている海夜もそれはそれで――だな。顔ちょっと赤くして。


「なっ。なんですかいきなり……」


 ほら、また良い表情してる。


「照れた」

「むー」


 海夜はもじもじしながら……って、なんか俺の上に移動してきた。


「先輩。支えてください」

「嫌だよ」

「支えなさいです」


 すること海夜が俺の上でくるりと向きを変えてコアラみたいにしがみついてきた。なんでそうなるんだよ。ってか。このポーズ俺が支える必要あるか?あれか?後ろに倒れないようにってこと?って、甘えん坊海夜が始まったらしい。局イチャイチャになるというね。ビジネスホテルでも。っか。海夜座っている俺に乗るの好きだよな。うん。しがみついた海夜である。

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