第198話 雨率高い10
「すぐ甘えん坊」
俺の上でコアラみたいにしがみついている海夜に声をかける。距離が近くなったからか。ホテルのシャンプーの香りがしてくる。ってか。海夜の耳に息かけて見ても面白そう。まあ今はしないがね。
「雨で帰れなかったから仕方ないです。そうです。先輩の責任ですから甘えるはOKです」
「ココアあげたんだが――」
「忘れました」
「……ちなみに、海夜このポーズの意味は?」
現状は、抱きついている海夜を支えている。うん。それだけといえばそれだけ。何してるんだろうね。俺達。まあよくよくある光景なのだが……。
「……たまたまです。落ち着きますし。することがないからとりあえず先輩に乗ったんです」
することがないからで人に乗るなだが――。
「一応だが。寒いのか?」
「いえ、ちょうどですね。先輩暖かいですし」
「まあ俺は少し前だが、風呂上がりになるからな」
「いい気持ちですよ?ベストな感じです。暑くも寒くもないですからね」
「ちなみに海夜からはココアの香りだな」
あと、焼き鳥もちょっとする……などと俺が思っていると海夜が何かに気がついたらしく。
「あ……せ、先輩。ちょっとタイムです」
何故か急に慌てて、口を押えていた。
「なんだ?」
「一度——離してください」
すると海夜が立ち上がろうとしたが……まあ意地悪発動である。俺は力を緩めない。まあ海夜がどうしたのかわかるしな。
「ちょ、先輩」
「だから、どうした?」
ちょっと楽しいな。
「な、なんで、ニヤニヤなんですか」
「なんで急に移動したがるかなーと。せっかく甘えたのに海夜にしては珍しい行動だからな」
「この先輩は――その、お手洗いとかもあるんですよ。そんなときにこの意地悪したら本当に口聞きませんからね」
「つまり今は違うと。ほかに何がある?」
「ちょ――先輩。絶対気がついてますね?」
「歯磨きしたいと?」
「ほらー。そうですよ。ヘタレの先輩だからもし。は無いですが。近いと……ですから。ほら、離すんです」
ぺちぺちと海夜が俺の背中を叩いてくる。ってか、恥ずかしがっている海夜可愛いというね。ってか――。
「さらっとヘタレ言われたよ」
「ヘタレヘタレ」
「よし。海夜。さようなら」
「ちょ、なんですか。その怖い雰囲気」
「くすぐり地獄が決定した」
「やめなさいです。って、先輩。とりあえず――歯磨きしたいです」
「大丈夫だろ。寝る前にしたら」
「今から寝ますよね?」
「寝ないだろ?甘える言ってたし。まだ時間的に早いだろ?いつもからしたら」
「先輩がアホです。馬鹿です、ヘタレです!」
「なんかいろいろ言ってるが――結局一緒に居るって事は、甘えてから寝るんだろ?」
「なんで今日はグイグイなんですか」
「照れてる海夜は面白い」
周りの視線を気にしなくていいっていいな。まあ家でもそうだが――このホテル周りの音が聞こえないということは多分家よりも防音はしっかりしていると思うから――うん。それがわかると楽しいというね。まあ海夜が騒いでいるように見えるかもだが。一応海夜。通常バージョンの音量で話しているからな。
「もう。先輩。ホント――もし、で、焼き鳥の味とか……嫌ですよね?」
「あー、海夜キス希望だったの?」
「なんか今日の先輩積極的ってかおかしいです!」
「大丈夫だろ。それくらい」
「そ――そりゃヘタレ先輩ですから。ないでしょうけど――でも気になったら気になるんで――!?」
海夜がそう言いながらこちらを見た瞬間……ちょうどいい高さだったので――接触してみた。焼き鳥の味がするのかね。ちなみに……柔らかく。あと、超びっくりの海夜を見ることができた。焼き鳥の味は――いやココアの方が強くない?って、ココアと焼き鳥って――マジで合うの?うーん。まあいいか。とりあえず、ココアの香りと――焼き鳥の味がしましたとさ。
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