第196話 雨率高い8

 夕食などを購入した俺は部屋へと戻って来た。ちなみにまあ何とかずぶ濡れは回避だな。何とかである。全く濡れなかったではない。短い距離なのに、馬鹿みたいに雨が降っていてね。マジで大丈夫だろうか?というレベルで雨がまだ降っていたのだった。


「——ただいま」


 鍵を開けて室内へと俺が入る、狭い部屋なのでドアを開ければすぐに海夜の姿は見えた。


「あっ先輩、時間かかりましたね」

「めっちゃ混んでる。あと冷たい」

「雨まだ降ってますからね。窓から見ていてもすごいです。遠くでは光ってますよ」

「マジか。まあ帰らなくて正解か。帰ったら帰ったで雷の中駅から歩くだったかもだしな」

「ですね。ナイス判断です」


 俺が帰って来ると、海夜がちょうどベッド。窓際に居た。風呂上がりでホテルの部屋着?というのか。浴衣みたいなものがあったらしく。海夜はそれを着ていた。先ほど俺が買ってやったやつとき制服は壁にかけてあった。


「で、先輩。何になりましたか?」

「焼き鳥まつりだな」

「居酒屋オープンですか?」


 俺の言葉に海夜が目を輝かせていた。なんか楽しそう。と顔に書いてあった。


「ここが1番空いてたからなんだがな」


 俺はそう言いながらベッドの上を四つん這いで移動して来た海夜に焼き鳥の入った袋をまず渡した。


「あっ、美味しそうです。たくさんありますね」

「焼き鳥しかないからな。まあ今晩はこれで」

「良いじゃないですか。いろいろあって美味しそうです」


 俺が海夜に焼き鳥を渡すとさっそく中身チェックがはいったが……良かった。問題ないらしい。焼き鳥買う時に、海夜に何か苦手なものがあるかとか聞かなかったからな。まあでもよくあるやつを買ったから――うん。大丈夫だったらしい。


「あと、飲み物な」

「はい。ありがと――って、紙コップ?」


 焼き鳥の袋を窓際に置いてきた海夜に今度は飲み物を2種類渡す。ペットボトルが数本と――もう1つビニール袋内に入っている紙コップ1つである。ちゃんと蓋つきであるのでこぼれてはないだろう。ちなみに1つだが2つ分?のカップホルダーというのか。商品が傾かないようにちゃんとなっている。まあなかなかのお値段ですからね。ちゃんと入っているである。


「要らなかったら俺が飲むが?」


 俺がそんなことを言っていると海夜は紙コップを袋からだして――さらに目を輝かしていた。何かに気が付いたらしい。ちなみに紙コップにはお店の名前?しか書かれていないので商品名はわからないはずだが――。


「先輩?これお高いお店の!ココアですか?ココアですよね?違ったら怒りますよ?」


 あぶねー。隣にあったチョコの飲み物とかだったら。怒られていたらしい。あれはあれで美味しそうだったがな。あちらも良い値段していたが――。


「ココアだ。ってか。お店知ってたか」

「もちろんです。めっちゃ高いチョコとかあるお店って……本当にそこのなんですか?ってかなんで?」


 何で買ってきてくれた?的な感じで海夜が聞いてくる。まあたまたま目に付いただけなんだよな……ということで俺は素直に話した。


「いや、焼き鳥には合わないだろうが――今日はなんか。巻き込んだ感じだし。急の雨とかで身体冷やされてもだからな。で、ホットココアの文字がたまたま目に付いたから買ってきてやったんだよ」

「……先輩。何か私を怒らすことしました?先輩がいきなりこんなものを買ってくるってなにかありますよね?」


 素直に言ったのになぜか怪しまれる俺だった。何でだよ。何で怪しまれるんだよ。


「……要らないなら俺がもらうだけだ」

「ダメです。これ600円くらいしますよね?」


 海夜、ちゃんと値段を知っていた。つまり……飲んだことがあるか。調べていたということだな。


「頼んでびっくりしたよ」

「ですよね。なかなか自分では買いませんし。そもそもお店が近くに無かったですから。うんうん。ここはあるんですね。覚えておかないとです」

「で、飲むんだな?」

「当たり前じゃないですか」


即答。もう返さないという雰囲気の海夜だった。取らないよ。睨まなくても。


「……まあじゃ、ちょっと俺パパッとシャワー浴びてくるあいだ飲んでろ」

「はーい。いただきます」


 するとちびちびと海夜がベッドに腰掛けてココアを飲みだした。そしてかなり美味しいのか一口飲んだら……顔が即溶けていた。海夜の周りに花が咲いたような状況になっていた。こやつ。ちょろいというか。ホント好きらしい。


「うまいか?」

「とっても」

「なら大人しくしてろよ。まあ焼き鳥食ってもいいが」

「ココアをまず楽しみます。先輩も早くシャワー浴びてきてください」

「はいよ。あっ、ペットボトル。とりあえず冷蔵庫に頼むわ」

「はーい」


 とりあえず海夜にココアを与えて巻き込んだはチャラにした俺は、パパッとシャワー浴びて着替えて出てくると――まだ海夜はココアを味わっていた。

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