第193話 雨率高い5

 突然の大雨で電車も止まり帰れなくなっている俺と海夜。


「何か言いたいことあるか?」

 

 俺はなんか期待している表情の海夜にそんなことを聞いてみると――。


「こういう時はホテルでのんびりじゃないですかね?この辺りたくさんありますから」


 そんなことを言ってきたのだった。普段も2人っきりというのが多いが――まあいつもと違うところ。そういうところで2人と言うのがこのお方お好き見たいですからね。ほらであった。俺の予想当たるである。


「……そういう変態だったな」

「ちょ。ビジネスですからね!いかがわしいところは言ってません」

「あっ、そうだったか」

「先輩捕まりますよ!」


 ちなみに――周りには高校生カップルがまだ居るのだが――うん。聞こえてるかな?一応海夜も小さな声――って。ちらりと周りを見るふりで見てみると。なかなか向こうのイチャイチャしていたので――こちらは気にしてないと見た。


「でも海夜が言い出したよな」

「私は普通のビジネスで言いました!」

「暴れるよなぁー」

 

 いつもと違う場所で――だと。この甘えん坊大変だろうな。ぴょんぴょんしていそうである。


「ちょっと!先輩!勝手に話進めないでください」

「変態相手は大変なんだよ。普段でもなのに」

「先輩。怒りましたからね。お巡りさん呼びます」


 そう言いながら海夜は手に持っていたスマホを操作しだしたが。俺はすぐに海夜の手から抜き去る。


「あっ――」

「はいはい。ビジネスね。まあ許可してやろう。いつ帰れるかわからないならくつろいでる方がいいわ」


 俺はそう言ってから海夜にスマホを返す。うん。表情は笑顔になったから――大丈夫だろう。


「やったーです」


ほら。ちょろかった。


「コロッと変わるなあ……じゃ。海夜ホテル探ししてくれ」

「任せてください。支払いは全額先輩ですね。はい。じゃ先輩のスマホ貸してください」


 そう言いながら俺が返したスマホはしまって――こちらへと手を伸ばしてきた海夜だった。あれか。俺のスマホでご予約ね。まあそうなるか。


「だな。はいよ。海夜。高いのはなしな?」


 俺がスマホを渡すと、海夜は俺に持たれながら慣れた手つきで検索を開始して――どうやら俺にも一応画面を見せるためらしいが。こやつ。自分のスマホじゃなくても操作早いというね。人のスマホっていろいろ違ったりして大変というか。戸惑うとかないのかね?こやつ――相当俺のスマホもいじってるな。


「先輩」


するとすぐに海夜は検索が出来たらしく。俺の方を見て声をかけてきた。ちなみにスマホの画面には――たくさんの検索結果が出ている。


「うん?」

「超安いホテルありますがいかがですか?」

「安すぎて怖いのは嫌だな」

「レビューによりますと……部屋狭っ!でも風呂とトイレ別。室内は綺麗!らしいです」


 そう言いながら俺の目の前にスマホを持ってきた。うん。海夜が言ったようなことが書かれている。


「部屋狭いの問題あるか?甘えん坊相手なのにむしろ狭い方が目が行き届く」

「ですよねー。って、誰が甘えん坊だ!後なんか迷子になるみたいな感じ言いましたよね?おかしいですよね?何で室内で迷子みたいな話が出てくるんですかー」


 マジでこいつテンション高いというか。帰れなくなったことを喜んでいるのが漏れまくりだった。


「海夜。お静かに」

「あっ――はい」


 俺が声をかけると海夜は口に手を当てて――周りを見たが。うん。先ほどと周りの光景は変わっていない。少し離れたところで、高校生カップルが濃厚な……触れないでおこう。あちらも全く周りが見えてないようだ。俺がそんなことを思っていると。その間に海夜はスマホに視線を戻して――。


「あっ、この1人19000円」


 唐突に意味の分からない値段をつぶやきだしたため。俺は慌てて海夜の操作するスマホを確認する。


「やめろ絶対ダメだ。パソコン資金がなくなる」

「嘘です。先輩激狭の部屋。ここでよくないですか?場所は……百貨店の近くですね。百貨店ってどこにあるんですかね?」

「百貨店なんてそうそう行かないから場所はわからん」


 それから俺と海夜はホテルの目印。百貨店を検索すると――ちょっと駅から離れたところというのがわかった。地図アプリで確認すると――あれ?なんか俺達すごく近くに居るような――確か俺達駅からそこそこ離れていたから……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る