第184話 こっちの実家も大変8
それから俺も露天風呂を楽しみ部屋に戻ると……。
ベッドにうつ伏せでスマホをいじってくつろぐ海夜が居たのだった。完全に自分の部屋だな。多分防音とか言っていたから。お店の騒ぎは海夜には聞こえてないらしい。
「あっ、先輩。おかえりです」
俺がドアを開けると、海夜が振り向きながらそんなことを言ってきたのだが――こやつ油断しすぎというか……慣れすぎというか。
「……今日はグレーのパンツね」
「うぎゃ!?」
俺がそういいながら部屋に入り。ドアを閉めると――。
「変態!」
叫ばれたのだった。だが防音なので多分外には全く漏れていない。ちなみに海夜は即ベッドの上で正座に早変わりだった。
「いや、足バタバタさせてたし」
うん。見せていた。であるな。だから俺悪くない。むしろ教えてあげたである。
「言わなくてもー、ですよ」
「なに?チラチラ見て欲しかったのか?変態」
「なっ、違います。そこはさりげなーく。私の姿勢を変えるんです」
「例えば?」
「えっ……えっと、星綺麗だから見よう。とか言って……窓際に移動。そして足の上に座らせてくれるとか?」
海夜がそんなことを言うのでちょっと窓の方を見てみる。うん。確かにここ星はきれいかと思われる。今日天気いしな。
「でも俺がそんなこと言ったら。それはそれでなにか狙ってるとか言いそう」
「言いますね。怪しすぎますもん」
「おい」
「ってか。先輩が最近ヘタレなくせに変態が多いです」
「また喧嘩売ってきたよ。っか、ココアがぶ飲み娘。腹大丈夫か?」
「大丈夫ですよ!なんでさっきから過去を掘り返すんですか!」
「なんとなく?っか。海夜。親父も居るんだからちょっとくらいは気を付けろよ。見られるぞ」
俺が言うと。海夜は小さくうなずいて――。
「——はい。ちょっと寛ぎすぎました」
「うん」
「まあ先輩が来たからもう大丈夫ですよね」
「何が?」
「寛いでも」
「はぁ……」
うん。こいつ――変わらんわである。めっちゃもう慣れた。馴染んでしまったらしい。
「ってか先輩先輩」
「拒否」
「ちょ、まだ何も言ってないです」
「嫌な予感しかしないからな」
「むー。いいです。拗ねます。拗ねました」
そう言いベッドの上でそっぽを向く海夜。
「了解」
「了解ってなんですか!」
はい。すぐにこちらを向きましたとさ。
「元気だな。って、なんだよ」
「もう――えっと、その星。本当に綺麗ですから見ましょうよ。部屋の電気消したらもっと綺麗ですよ」
「あー、なるほどな。まあそれはそうかもな」
「電気消します」
「行動が早いな」
すると、すぐに海夜が立ち上がり。俺の前を通過。入り口のところにあった電気を消して……暗くなった部屋の中で明るい窓際に俺を引っ張って行く。そして先ほど海夜が言ったように、俺が床に座り。その足の上に海夜がちょこんと座ったのだった。ぴったりおさまる海夜だった。ジャストフィットというのか――うん。こうやって大人しいと常にしてやるんだがな。俺も平和だし。まあこういう時しか大人しくない海夜だからな。仕方ない。などと思いながらもたれてくる海夜を支えつつ俺たちは窓の外を見てみた。
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