第182話 こっちの実家も大変6

俺が部屋の片付けを終えると、ちょうど海夜がやって来た。


「——ココアにつられた奴が来たよ」

「な。何ですか。出してもらったので――3杯ほどもらって。お話していただけです」

「……3杯ね。また腹壊すぞ。アイスとか言ってただろ」


こいつ俺が片付け中に3杯もココアを飲んでいたらしい。やっぱりこいつ――普段飲まないのは飲みすぎるから。だろう。うん。でもこういう時は飲んでしまうらしい。うんうん。こりゃ、家にココアは置く必要ないな。消費量が半端ないだろうし。マイかい腹壊される気がするし。


「なんですか。大丈夫です。お腹とは相談してます」

「腹壊さないかなー」

「なっ。なんでですかー。って――あれ?先輩ここ――地下じゃなかったですか?先輩のお父さんが。先輩がいつでも現実世界に嫌気がさして、引きこもってもいいように地下室を準備したって、話している時に言ってましたけど――」

「……何という親父ってか。俺の予想当たっていたのか――って、海夜も余計な事話してないだろうな?」

「先輩は変態です。ってことまでは話しました。さすがに――猫にされたのは言いませんでしたが」


うん。話の後半だけとっても小声で海夜が言ったが――。


「ほぼ全部じゃないか!」


うん。ココアは海夜をダメにする。これからは制限がマジで必要らしい。


「ってか。先輩。先輩のお父さんからですが。夜のお店は営業するから。落ち着くまで、しばらくゆっくりしているように。との事でした。準備があるみたいです」

「こんな山奥で夜営業するのか」


人来るの?と俺が思っていると。既に俺より親父と話した海夜の方が詳しくなっていた。


「なんでも、ここなら騒音。うるさくしても何も言われないみたいなので、楽器の演奏とかしてるみたいですよ。あと今日は山の下の地区の音楽サークル?の方々が来るとか――それと、ここ常連の人も来ているみたいで、結構遠くから来てくれる人もいるみたいですよ。愚痴をこぼしに来る人も居るとか」

「俺の知らない間にそんなことがか――って、それだとゆっくりしてろと言われても――だろ。この上でなんかしてるんだろ?お客さん来たら騒がしくなるだろ?」

「それなら問題ないぞー!」


俺が絶対賑やかじゃん。と思っていると。海夜の後ろから親父が登場したのだった。


「「ビックリした……(しました)」」


突然の親父の登場にビックリする俺達。そんなことには触れず、親父はというと――。


「おお、仁悠。片付けたんだな。やるな」

「やるな。って。埃まみれだったんだが……」

「まあだろうなー」

「はぁ……で、なんだ?」

「いや、海夜ちゃんいい子だな。俺が欲しい」

「——へっ」


さすがに海夜がサッと俺の方に寄って来た。うん。だから海夜言っただろ?仲良くなるなって。ってか。変な事されてないな?大丈夫だな?なんかあったらすぐ言えよ?警察呼ぶから。


「冗談だよ。そんなことしたら。やっとの思いでこんなかわいい嫁見つけた仁悠に刺されるからな」

「黙らすために刺した方がいい気がしてきた」

「はははっ。あっ、仁悠。今から来るサークルの人らな。かわい子ばかりだから。浮気するなよ。覗いてもいいが海夜ちゃんに怒られても知らないぞ?まあ男の人もいるがな」

「——そんなこと言いに来たのかよ」

「違う違う。この部屋な。防音だからってことを言っておこうとな。経験なしの仁悠だと何もできないだろうがな。一応言っておくかとな」

「出ていけ。だな」


うん。何を言いに来たんだよ。この親父である。ってかそんな無駄な設備がこの部屋にはあるのか――ってだからドアが無駄にしっかりしていたのか。


「あっ。晩ご飯な、19時くらいになったら上のリビングに作るからよ。海夜ちゃんと食べてくれ」

「いやいや、親父。俺達泊まる予定無いんだが?あまり遅いと――なんだけど」

「何言ってるんだ?仁悠もう最終のバス出たぞ?」


親父はそう言いながら自分の腕時計を刺しながら俺に言う。


「なんだと――」

「16時が最終だからな」

「今何時だ?」


俺がスマホを確認してみると――16時56分だった。片付けをしていて時間を忘れていたらしいってか。外がまだ明るいから時間を忘れていた。


「海夜ちゃん悪いな。仁悠が時間気にしてなくて」

「いえいえ、大丈夫です。明日も何もありませんから。それに着替え持って来ていて正解でした」

「——海夜の荷物の多さはそれか。って何で泊まる予定だったんだよ」

「もしも――がありますからね。そこそこ先輩距離があると昨日言ってましたから」

「準備のいい事で……」


うん。無駄に準備の良い海夜。まあそれは正しかったらしい。


「ってことで、仁悠。男になるのはいいが。海夜ちゃん泣かすなよ?泣かせたらすぐ俺が――」

「そこ、うるさい」

「まあ仁悠じゃ無理だな。俺の息子なのにな」

「——何を言っているんだが」

「そうそう、海夜ちゃん。1階リビングの先に露天風呂。ヒノキ風呂あるから使ってくれ」

「えっ。そんなのあるんですか?」


海夜が驚いている――って、いや、マジかよ。そんなものまでここ作ってあるのかよ。親父。俺が知らない間にめっちゃ良い暮らししてないか?


「あるある。大丈夫。外からは見えないからな」

「あ、ありがとうございます」

「まあ狭いところで、男とは思えない奴がいるが、ゆっくりしていってくれ」

「あ。はい。ありがとうございます」

「ちょくちょくムカつかせてくるな」

「はははっ」


親父はそれだけ言うと上へと戻っていった。ということで、俺達は本日ここに泊まることが決定したらしい。

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