第179話 こっちの実家も大変3
「うわー、一気に山ですね」
再度乗車中のバスの車窓を見つつ海夜が言う。
「緑しかないぞ。どうなってるんだよ」
俺は――車窓を見つつ困惑中である。
現在俺と海夜は、俺の実家に向かっているはずなのだが――うん。まさかの実家消滅。ということを1時間ほど前に経験し――次こそ。実家へ。ということで山に居た。
先ほどまでは、中途半端な田舎というか。畑と家が半々くらいだったのだが――今は木しかない。木オンパレードである。っか道狭っ!バスの運転手さんすごっ!と、思っていると終点のバス停へと到着した。
ちなみに終点のバス停もホント折り返すだけ。という感じで山道に突如回転場みたいな感じで広い土地が――というところが終点だった。バス停がポツンと立っているだけだった。まあ今はバスが止まっているからちょっと――だが。俺達がバスから降りると、ここまで運転してきてくれた運転手さんが背伸びをしつつちょっとバスの横で体操をしていた。どうやら――折り返しの時間待ち?らしい。まあこんなところじゃそれくらいしかすることないよな。
「すごいところですね。これ登るんですか?」
「だろうな――マジかよ」
一応アスファルトで舗装はされているが――そこそこ急な上り坂。海夜も俺もそんなことは全く思ってなかったので、地味に大変。ってか。海夜には、いらない。と言ったのだが。一応お菓子などを持っていくと海夜が言いましてね。電車に乗る前に買った紙袋や――自分の荷物。なんかちゃんとリュックみたいな感じでそこそこの量を持っているので――大変そう。何を持ってきたのだろうか……まあ聞いてないからわからないが。でもまあとりあえず大変そうなので。
「海夜」
「はい?」
「荷物貸せ。持ってやるから」
「おお、先輩が優しい。雨降らさないでくださいね?さすがに晴れって言っていたので雨具は持って来てないですから」
「自分で持ってけ」
「あー、ごめんなさい。持ってくださいよ」
「こいつもなかなかだ」
それから数分だったが。俺と海夜はちょっとした山登り――すると。準備中。という看板が見えてきた。そして急にポツンと1軒のお店が現れたのだった。
平屋建てで、建物の前にパラソルというのか。椅子と机などが置いてある。飲食店?みたいだった。
「あれ?先輩。こんなところにお店がありますよ?」
「マジだ。親父と一緒で変わり者が居るんだな。こんなところでお店とか――あーでも登山客とかが来るのか」
「隠れ家みたいな家ですね。ってか。新しい感じですね」
「そういえばそうだな」
海夜に言われてちゃんと店を少し離れたところからだが見てみると、ずっとあるというより。最近できた感じだった。駐車場も数台分あるが。アスファルトが綺麗な感じだからな。するとお店のドアが開いた。どうやらオーナーさん?が片付けでもしているのか。いや営業前の準備中か。とりあえず手を振りながらこちらを――って、待て待て。頭が痛くなってきたぞ?すらっとしていて背が高めで、白髪交じりの髪。ちょっと日焼けしてるのは――何故かは知らんが。あと腰にエプロンってのは――まあ見たことないことはなかったが……うん。なんで今。ってか――ふと俺は思い出した。とある違和感を――。
そういえば昨日の親父のメッセージを見ている時。海夜が隣に居たこともあり。途中で考えるのをやめてしまったが……俺はパパっとスマホを確認した。そして昨日のメッセージを再確認する。
『仁悠ー。久しぶりー!父さん嬉しいぞ!便りの無いのはなんとやらで、我慢していたが。ついに頼ることが出来たんだな。いつでも帰ってこい。今すぐでもいいぞ。即準備するからな。お店も休業だー。帰って来るならすぐ帰って来るんだぞー……』
ほら、変な言葉交じっていただった。つまりあの手を振りながらこちらを見ているのは――って、あっ。なんか驚いた顔になったぞ?どうした?あっ。実はお客さんを待っていて、こんな山中に来る人は限られているから俺達とお客さんを間違えたか。なるほどなるほど。それもあるな――1%くらい……いや、手を振っていた人。親父だし。もう今更無理か。ってか、なんで驚いてい……そうだ――俺の横には海夜が居るのだった。
「——先輩なんか私たち見られていますが……」
俺がいろいろ気が付いた時。海夜も親父には気が付いてしまったらしい。
「はぁ……そういえば海夜の事言ってなかったんだよな」
「……えー!?先輩のお父さん!?」
「仁悠が女の子連れてきた!?」
「――同じタイミングで騒ぐなよ。っか親父離れているのに、なんでそんなに声がはっきり聞こええるんだよ!」
うん。距離にして約50メートルあるかないか。海夜の声が聞こえるのはまあ隣だからわかるが――なんで離れている親父の声もちゃんと聞こえるのか。周りに民家とかないからか?ってか。親父――何故か叫んだあと室内に飛び込んで行ったぞ?何で?と、俺が思いつつ。まあいろいろ諦めて歩き出すと……またドアが開いて……身なりを整えた親父が無駄にポーズをして立っていたのだった。うん、帰っていいかな。Uターンしたい。マジで。
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